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side瀬羽菫 7
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彼が仕事部屋から出てきて、ユミと二人で彼の目の前に立つ。ヨウイチさんは困ったように視線を彷徨わせ、私を見つめた。
正確には、私が着ている衣装に視線が向いている。頭につけたウサギの付け耳、白くフワフワとしたドレス、そしてドレスについたフワフワの尻尾。
メイド服を着た時はそれほど意識しなかったけど、この格好はとても恥ずかしい。
「撮るよ」
ヨウイチさんの前でポーズを取る。恥ずかしさと見つめられる快感で、もっと見てもらいたいと思ってしまう。ヨウイチさんが選んで購入してくれたプレゼント――それを身につけることで、全身が彼に包まれているような気持ちになる。
まるで彼のペットになったみたい。
「ヨウニイ、似合ってる?」
横で妖艶な笑みを浮かべるユミは、生き生きとした表情でヨウイチさんに見つめられることを望んでいる。
「すごく可愛いよ……。少しずつポーズを変えてみて」
ファインダー越しに見つめるヨウイチさんの瞳は次第に真剣なものに変わり、私が抱える恥ずかしさを少しずつ取り払っていく。
彼のプロの視線。
ヨウイチさんは何かに集中すると、凄まじい力を発揮する。彼に全身を見透かされるような不思議な感覚に包まれ、余すところなく見られている気がする。
「ヨウニイ」
ユミも、きっと知ることになるだろう。ヨウイチさんの魔性の力を。広いはずのリビングが、彼の視線で狭い空間に閉じ込められたような錯覚を覚える。
四つん這いになった私たちはヨウイチさんの顔を見上げる。その姿勢でコスプレ衣装の胸元が開き、スカートが少しめくれてストッキングと下着の間が見えてしまう。
あの視線に捕まると、私の体はおかしくなる。彼の視線に見つめられ、獣のように、ただ見られることを求めてしまう。
「ヨウニイ、もっと~!」
「……ああ、スミレさん。ユミさん、いいよ」
体が火照って、熱くなってくる。実を言えば、彼がいつでもこの体に触れてくれても構わないと思っている。ヨウイチさんが酔ったあの日、私を求めてくれたときから、私は気づいてしまった。
「スミレさん……」
「……はい」
「その格好、気に入ってるのかな?」
「えぇ。ヨウイチさんがくれたプレゼントですから」
服自体に特別な思いはない。でも、こんなにも私を見てくれるなら、心と体を熱くしてくれるなら、いくらでも好きになれる。
「ヨウイチさん、ご主人様とペットごっこをしてみませんか?」
「姉さん、それいいね!」
「なんですかそれ……?」
不思議そうな顔をするヨウイチさんが可愛い。ユミが賛同してくれたので、私は趣旨を説明する。ヨウイチさんがご主人様になり、私とユミがペットとして接する――それをヨウイチさんが撮影していくのだ。
「じゃあ、まずは髪でも撫でさせてもらおうかな?」
「はい」
「ゴロニャ~」
ウサギの鳴き声がわからない私は普通に返事をすると、ユミが猫の鳴き真似をしてヨウイチさんの膝に甘える。ヨウイチさんはユミの頭を膝に乗せて撫でる。気持ちよさそうな顔をするユミを撮影しながら、私も負けじと後ろから彼に抱きつき、髪を差し出した。
「サラサラだね」
「ええ、とても気持ちいいです」
彼に褒められると嬉しい。もっとお世話したいし、甘えたいし、かまってほしい。もっと彼が喜ぶことをしてあげたくなる。
「ヨウニイ、次は?」
「こっちにお尻を向けて、壁に手をついて」
私たちは甘やかされるだけでなく、彼の仕事モードの視線に捉えられる。ユミはネコのように背中をそらし、私は壁に手をつき、お尻を少し振ってみる。
「いいよ! 二人とも、まるで獣だね」
連写音が響き、彼の調子がどんどん上がっていく。
「なんでも言ってもいいのかい?」
「ええ、もちろん」
私が答えた瞬間、ヨウイチさんの雰囲気が少し変わった。
「ちょっとこっちに来て」
「……はい」
低い声にドキッとしながら、私たちは振り返り、彼の命令に従う。逆らう気などなく、むしろ屈服することが気持ちよくてたまらない。
「仰向けに寝て」
二人とも並んで仰向けに寝かされる。彼が見下ろしてくる視線の先には、鏡に映る私の赤く染まった頬と潤んだ瞳がある。完全に従属した雌のように見えて、情けなくもいやらしい姿だ。
「お前たちは可愛いな。二人とも、俺のものだ。一生そばにいろよ」
「っ!? ハァ~……あ、あぁ……はい!」
「……うん」
私の隣でユミも恥ずかしそうに息を荒げている。それを最後に撮影会は終わりを告げた。
終わった後、いつも以上に疲れている彼の姿を見て、今日はたくさんお世話してあげなくちゃ。
正確には、私が着ている衣装に視線が向いている。頭につけたウサギの付け耳、白くフワフワとしたドレス、そしてドレスについたフワフワの尻尾。
メイド服を着た時はそれほど意識しなかったけど、この格好はとても恥ずかしい。
「撮るよ」
ヨウイチさんの前でポーズを取る。恥ずかしさと見つめられる快感で、もっと見てもらいたいと思ってしまう。ヨウイチさんが選んで購入してくれたプレゼント――それを身につけることで、全身が彼に包まれているような気持ちになる。
まるで彼のペットになったみたい。
「ヨウニイ、似合ってる?」
横で妖艶な笑みを浮かべるユミは、生き生きとした表情でヨウイチさんに見つめられることを望んでいる。
「すごく可愛いよ……。少しずつポーズを変えてみて」
ファインダー越しに見つめるヨウイチさんの瞳は次第に真剣なものに変わり、私が抱える恥ずかしさを少しずつ取り払っていく。
彼のプロの視線。
ヨウイチさんは何かに集中すると、凄まじい力を発揮する。彼に全身を見透かされるような不思議な感覚に包まれ、余すところなく見られている気がする。
「ヨウニイ」
ユミも、きっと知ることになるだろう。ヨウイチさんの魔性の力を。広いはずのリビングが、彼の視線で狭い空間に閉じ込められたような錯覚を覚える。
四つん這いになった私たちはヨウイチさんの顔を見上げる。その姿勢でコスプレ衣装の胸元が開き、スカートが少しめくれてストッキングと下着の間が見えてしまう。
あの視線に捕まると、私の体はおかしくなる。彼の視線に見つめられ、獣のように、ただ見られることを求めてしまう。
「ヨウニイ、もっと~!」
「……ああ、スミレさん。ユミさん、いいよ」
体が火照って、熱くなってくる。実を言えば、彼がいつでもこの体に触れてくれても構わないと思っている。ヨウイチさんが酔ったあの日、私を求めてくれたときから、私は気づいてしまった。
「スミレさん……」
「……はい」
「その格好、気に入ってるのかな?」
「えぇ。ヨウイチさんがくれたプレゼントですから」
服自体に特別な思いはない。でも、こんなにも私を見てくれるなら、心と体を熱くしてくれるなら、いくらでも好きになれる。
「ヨウイチさん、ご主人様とペットごっこをしてみませんか?」
「姉さん、それいいね!」
「なんですかそれ……?」
不思議そうな顔をするヨウイチさんが可愛い。ユミが賛同してくれたので、私は趣旨を説明する。ヨウイチさんがご主人様になり、私とユミがペットとして接する――それをヨウイチさんが撮影していくのだ。
「じゃあ、まずは髪でも撫でさせてもらおうかな?」
「はい」
「ゴロニャ~」
ウサギの鳴き声がわからない私は普通に返事をすると、ユミが猫の鳴き真似をしてヨウイチさんの膝に甘える。ヨウイチさんはユミの頭を膝に乗せて撫でる。気持ちよさそうな顔をするユミを撮影しながら、私も負けじと後ろから彼に抱きつき、髪を差し出した。
「サラサラだね」
「ええ、とても気持ちいいです」
彼に褒められると嬉しい。もっとお世話したいし、甘えたいし、かまってほしい。もっと彼が喜ぶことをしてあげたくなる。
「ヨウニイ、次は?」
「こっちにお尻を向けて、壁に手をついて」
私たちは甘やかされるだけでなく、彼の仕事モードの視線に捉えられる。ユミはネコのように背中をそらし、私は壁に手をつき、お尻を少し振ってみる。
「いいよ! 二人とも、まるで獣だね」
連写音が響き、彼の調子がどんどん上がっていく。
「なんでも言ってもいいのかい?」
「ええ、もちろん」
私が答えた瞬間、ヨウイチさんの雰囲気が少し変わった。
「ちょっとこっちに来て」
「……はい」
低い声にドキッとしながら、私たちは振り返り、彼の命令に従う。逆らう気などなく、むしろ屈服することが気持ちよくてたまらない。
「仰向けに寝て」
二人とも並んで仰向けに寝かされる。彼が見下ろしてくる視線の先には、鏡に映る私の赤く染まった頬と潤んだ瞳がある。完全に従属した雌のように見えて、情けなくもいやらしい姿だ。
「お前たちは可愛いな。二人とも、俺のものだ。一生そばにいろよ」
「っ!? ハァ~……あ、あぁ……はい!」
「……うん」
私の隣でユミも恥ずかしそうに息を荒げている。それを最後に撮影会は終わりを告げた。
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