勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

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王国内乱編

side セリフォス 2

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《side セリフォス》

 王宮の廊下を歩きながら、心の奥でほくそ笑んでいた。ついに第二王子ユリウスは失脚し、無能なブラフが辺境伯となった今、私に対抗できる者は残りわずかだ。だが、そのわずかな王族こそが、最後の障害となる。

 王座への道を確保するため、王族同士の争いが激化しているのはもはや隠しようがない。数ある兄弟姉妹の中でも、特に第一王女であるカレンと、第三王子エリアスの動きには注意が必要だ。

 奴らには勇者が付き従っており、それが厄介な存在となっている。

 私は会議室に入ると、すでにカレンとエリアスが席についていた。カレンは、長い銀髪を整えた冷ややかな目を持つ女で、どこか鋭利な刃のような雰囲気をまとっている。

 一方、エリアスは優雅な微笑みを浮かべつつも、その瞳にはどこか腹黒さを感じさせた。

「兄上、今日もお忙しい中お越しいただき、感謝いたします」

 カレンが微笑んで口を開いた。その言葉に込められた皮肉を見抜けないほど、私は愚かではない。

「ええ、カレン殿。兄妹たちの行く末について話し合うことは、私にとっても重要ですからね」

 私は丁寧に返しつつも、心の中で彼女の背後に控える勇者の存在を意識していた。

 第一王女であるカレンは、冷静かつ知略に長けた女だ。そして彼女の右腕となる勇者レオもまた、強力な存在で知られている。彼は他の者を圧倒する力を持ち、戦場での活躍は絶大だ。

 一方で、エリアスも油断ならない。彼に付き従う勇者は、異世界から召喚されたアーノルドという名の剣士だ。彼の筋肉隆々の体と、戦いで鍛えられた戦闘技術は、まさに生ける武器と言えるだろう。

「私たち兄妹がこうして話し合うことは大切です。ですが…私はやはり、国の未来を背負う者として、最も力ある者が王となるべきだと思っています」とエリアスが口を開く。彼の声には自信が滲んでおり、まるで自分が王にふさわしいと言わんばかりの態度だった。

 ふと、彼が一瞬、私の方へ視線を向ける。彼の意図を見抜きながら、私は軽く笑って応じた。

「もちろん、力は重要です。しかし、力だけが全てではありません。王としての器、それを判断するのは我々ではなく、民の信頼です」

 エリアスは鼻で笑い、興味なさそうに肩をすくめた。だが、その表情の裏には確固たる自信と野心が隠されている。彼は自らの勇者アーノルドを信じ、その力をもってして王位を手中に収めるつもりなのだろう。

 カレンもまた、冷静な表情を崩さずに私たちのやり取りを見守っていた。その表情からは何も読み取れないが、彼女もまた、レオの力を信じている。カレンは表向きは穏やかながら、その内には誰よりも冷酷な戦略家の顔を持っている。

 それに対して、私は悠真を手元に置いている。彼もまた異世界の勇者だが、私には彼の信頼とその力を引き出す自信がある。彼を巧みに操ることで、私はカレンやエリアスといった強敵にも対抗できる。

 会議が終わると、エリアスが私に近寄ってきた。彼は少し笑いながら、低い声で囁いた。

「セリフォス兄上、そろそろ兄上も本音を出されてはどうです?我々は皆、王座を狙っている。それは互いに隠す必要もないことでしょう?」

 私は彼の挑発に乗らず、軽く微笑み返した。

「もちろん、私はいつでも正直だよ、エリアス。だが、言葉だけでなく、行動で証明するべきこともあるだろう?」

 エリアスは一瞬、鋭い視線を向けたが、すぐに笑って去って行った。その背中には確固たる自信が漂っており、彼の内なる野望が見て取れた。

 廊下を歩きながら、私は心の中でこれからの戦略を練っていた。カレンとエリアスは手強い相手だが、私には彼らとは違ったアプローチがある。私は民衆の支持を得ることで、彼らの力を覆すつもりだった。

 部屋に戻ると、悠真が待っていた。彼はソファに座り、どこかつまらなそうにしている。

「セリフォスさん、話は進んでるんですか?俺、早く行動したいんですけど」

 彼の不満そうな表情に、私は微笑んだ。

「心配しなくていい、ユウマ。全ては計画通りだ。カレンやエリアスがどう動こうと、最終的にこの王座を手に入れるのは私だ」

 彼は私の言葉に少し安心した様子で頷いた。

「それならいいんですけど、俺も戦う準備はできてるんで、いつでも言ってくださいよ」
「その時が来たら頼むよ、ユウマ」

 彼の力が私の計画の要だ。そして、カレンとエリアスを打ち負かすための切り札となる。

 私はグラスに注がれたワインを見つめ、心の中で微笑んだ。これからの戦いは激しさを増していくだろう。だが、私は決して譲らない。この国の未来は私の手の中にあり、そのためには何者をも排除する覚悟がある。

「さあ、始めよう。王座争いの本番はこれからだ」
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感想 4

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みんなの感想(4件)

chichi
2024.10.23 chichi

あっさり終わってしまって、少し物足りない感が…。
この2人なら、激しい描写はなくてもいいと思うのですが、もう少し甘さもほしかった。
後半、ブラフの方が相棒以上の思いを漏らしはじめてたので、続編あるなら、そこも少し発展させてもらえるとうれしいな(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
それと、フルフルの成長&活躍も!

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ミシル
2024.10.21 ミシル

完結お疲れ様です
短めだけど、楽しく読ませて頂きました

BLって、どうしてもエロい描写が有るのを承知の上で読んでたりするのですが(余りしつこいと読み飛ばしたり笑)、この2人ならエロ無しも有りだなと思わせますね
まさに「相棒」ですね

ノンケの異世界人と同性婚有りの世界の美人妻(♂)で、お互いピュアなんだけどゆっくり絆を深めていてイイなと思いました。
娘は竜人みたいな感じなのかな?
他にも存在するのでしょうか?

ちなみに敵国の将軍様のことは、勝手にマッチョな美丈夫だと思いながら読んでました(笑)

番外編が有りましたら、また読ませて頂きます

イコ
2024.10.21 イコ

ミツルさんコメントありがとうございます。

現在、続編を執筆中ですw

一度は完結させたのですが、意外に読んでいただけたので、続編を書こうと創作中です。

投稿を開始したら、またお願いします(๑>◡<๑)

解除
かりりん
2024.10.20 かりりん

ひょっとして今日で完結なのでしょうか?BLカテゴリーなのでトオルとブラフの恋愛をぜひとも成就させて女神の加護のもとに第二子は卵ではなく子を成せる身体に一時的になるみたいな展開があっても良いと思うし、辺境を大きくして一つの国を作ってしまう展開もあるだろうし、他の勇者との絡みも読んでみたいです。トオルの今のスキルも気になります。ここでおしまいにするのではなくもう少し続けて欲しいです。
とはいえ、一読者の意見なので最終判断は作者様に委ねます。

イコ
2024.10.20 イコ

現在書き上げているのが今のとこまでです^ ^

一応第二部を投稿に向けて考え中なので、しばしお待ちいただければ幸いです^ ^

コメントありがとうございます^ ^

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