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王国内乱編
飼い主?
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《side トオル》
テオスとの一騎打ちに勝利したその夜、俺たちは獣人の集落で歓迎の宴を開かれることになった。集落の中心には大きな焚き火が焚かれ、魔物の肉が串に刺されて炙られている。肉の香ばしい匂いが漂い、食欲をそそる。
「トオルさん、どうぞ召し上がれ!」
ラオが得意げに肉を差し出してくれる。焼き加減も程よく、脂がじゅわりと滴るような見事な仕上がりだった。俺は一口かじり、旨みが口いっぱいに広がるのを味わいながらラオに微笑んだ。
「ありがとう、ラオ。これは美味しいな」
フルフルも同じように、魔物の肉を夢中でかじっている。彼女はこの宴にすっかり馴染んでいて、他の獣人たちと楽しそうに笑い合っている。
宴が深夜まで続いた後、俺たちは一晩の宿を提供されることになった。木造の簡素な家だったが、心地よい温かみが感じられる場所だ。疲れがたまっていた俺は、フルフルと一緒に布団に横になり、そのまま深い眠りに落ちた。
翌朝、微かに射し込む朝日とともに目を覚ました俺は、何かが体に触れている感覚に気づいた。重みを感じて目を開けてみると、フルフルが俺のお腹の上に寝そべっていた。その小さな体が俺を枕にして、気持ち良さそうに寝息を立てている。
「ん……フルフル……?」
それだけならまだしも、視線を横に移すと、両腕にも何か柔らかい感触が伝わってきた。驚いてよく見ると、ラオとテオスが俺に抱きつくように寝ていたのだ。
「え、ちょ、ちょっと待て……」
状況を飲み込むのに時間がかかり、俺は軽くパニックに陥った。布団の中で獣人兄弟が俺に抱きつき、フルフルまでが無防備に俺の上で眠っている状況に、どうしても冷静でいられなかった。
「お、おい、ラオ、テオス、起きてくれ!」
俺が声をかけると、ラオがゆっくり目を開け、眠たげに顔を擦りながら俺を見上げた。
「あ、おはよう、トオルさん……」
テオスも目を覚まし、俺に気だるそうな視線を向ける。
「お前ら、どうして俺に抱きついて寝てるんだ?」
俺がそう尋ねると、ラオは少し照れたように笑い、テオスも肩をすくめて答えた。
「だって、トオルさんは僕たちの飼い主なんだから」
「え、か、飼い主……?」
予想外の答えに、俺は驚きのあまり声が裏返ってしまった。ラオはうなずきながら続ける。
「そうだよ、トオルさんが僕たちを倒したんだから、もう僕たちの主人だって決まったんだ」
テオスも同意するように頷いた。
「強い者が弱い者を従える。それが俺たち獣人の掟なんだ。俺とラオはお前のものだ」
この真剣な説明に、俺は思わず頭を抱えた。獣人たちの文化はこういうものだとは聞いていたが、まさか自分が彼らの「飼い主」になるとは思ってもみなかった。
「いやいや、俺はそんなつもりでお前たちと戦ったわけじゃ……」
俺が説明しようとすると、ラオが俺の腕にさらにしがみついてきた。その無邪気な笑顔と、テオスの誇らしげな表情に、なんだか反論する気力も失ってしまう。
「……分かった、俺が飼い主ってことでいいから、もう少しだけ寝かせてくれ……」
こうして俺は、ラオとテオス、そしてフルフルに囲まれたまま、少しだけ眠り直すことにした。
翌日、俺たちは集落に別れを告げてグシャ領に戻った。獣人たちは名残惜しそうに見送ってくれ、ラオとテオスも一緒に俺たちと戻ることになった。
領地に到着すると、ブラフが出迎えてくれた。しかし、俺の隣に寄り添うラオとテオスの姿を見るなり、ブラフの表情が険しくなった。
「トオル、君がどこで何をしていたかと思えば……随分可愛い男の子を連れてきたね」
ブラフの冷ややかな言葉に、俺は少し焦りながら説明を試みた。
「ああ、いや、こいつらはラオとテオス。獣人の森で知り合って、それで……まあ、いろいろあって、俺の“仲間”になったんだ」
ブラフはじっとラオとテオスを見つめ、ふっと小さくため息をついた。
「仲間、ね……君はいつも魅力的な存在を集めるのが得意だな」
ブラフの口調には、ほんの少し嫉妬が混じっているように感じられた。彼が俺にこういう感情を向けることは珍しいが、それだけに彼の心中が少しだけわかる気がした。
「えっと、ブラフ? 怒ってる?」
俺が尋ねると、ブラフは目を逸らしながら首を横に振った。
「怒ってなんかないよ。ただ、君があまりにも他人を引き寄せるから、少し心配なだけだ」
その言葉に、俺は思わず笑ってしまった。
「ブラフ、お前が心配することなんてないさ。俺にとって、お前が大事なことは変わらない」
俺がそう言うと、ブラフは少し赤くなったように見え、そっぽを向いて何も言わなくなった。
「トオルさん! これからもよろしくね!」
ラオとテオスが笑顔で俺に抱きつき、フルフルも嬉しそうに腕を組んできた。
その光景を見て、ブラフは再びため息をつきながらも、どこか温かい目で俺たちを見守ってくれていた。
♢
あとがき
どうも作者のイコです。
本日から、BLコンテストの投票が開始されます。
応援してくださるととても嬉しいです!
これからも頑張って書きますので、よろしくお願いします。
テオスとの一騎打ちに勝利したその夜、俺たちは獣人の集落で歓迎の宴を開かれることになった。集落の中心には大きな焚き火が焚かれ、魔物の肉が串に刺されて炙られている。肉の香ばしい匂いが漂い、食欲をそそる。
「トオルさん、どうぞ召し上がれ!」
ラオが得意げに肉を差し出してくれる。焼き加減も程よく、脂がじゅわりと滴るような見事な仕上がりだった。俺は一口かじり、旨みが口いっぱいに広がるのを味わいながらラオに微笑んだ。
「ありがとう、ラオ。これは美味しいな」
フルフルも同じように、魔物の肉を夢中でかじっている。彼女はこの宴にすっかり馴染んでいて、他の獣人たちと楽しそうに笑い合っている。
宴が深夜まで続いた後、俺たちは一晩の宿を提供されることになった。木造の簡素な家だったが、心地よい温かみが感じられる場所だ。疲れがたまっていた俺は、フルフルと一緒に布団に横になり、そのまま深い眠りに落ちた。
翌朝、微かに射し込む朝日とともに目を覚ました俺は、何かが体に触れている感覚に気づいた。重みを感じて目を開けてみると、フルフルが俺のお腹の上に寝そべっていた。その小さな体が俺を枕にして、気持ち良さそうに寝息を立てている。
「ん……フルフル……?」
それだけならまだしも、視線を横に移すと、両腕にも何か柔らかい感触が伝わってきた。驚いてよく見ると、ラオとテオスが俺に抱きつくように寝ていたのだ。
「え、ちょ、ちょっと待て……」
状況を飲み込むのに時間がかかり、俺は軽くパニックに陥った。布団の中で獣人兄弟が俺に抱きつき、フルフルまでが無防備に俺の上で眠っている状況に、どうしても冷静でいられなかった。
「お、おい、ラオ、テオス、起きてくれ!」
俺が声をかけると、ラオがゆっくり目を開け、眠たげに顔を擦りながら俺を見上げた。
「あ、おはよう、トオルさん……」
テオスも目を覚まし、俺に気だるそうな視線を向ける。
「お前ら、どうして俺に抱きついて寝てるんだ?」
俺がそう尋ねると、ラオは少し照れたように笑い、テオスも肩をすくめて答えた。
「だって、トオルさんは僕たちの飼い主なんだから」
「え、か、飼い主……?」
予想外の答えに、俺は驚きのあまり声が裏返ってしまった。ラオはうなずきながら続ける。
「そうだよ、トオルさんが僕たちを倒したんだから、もう僕たちの主人だって決まったんだ」
テオスも同意するように頷いた。
「強い者が弱い者を従える。それが俺たち獣人の掟なんだ。俺とラオはお前のものだ」
この真剣な説明に、俺は思わず頭を抱えた。獣人たちの文化はこういうものだとは聞いていたが、まさか自分が彼らの「飼い主」になるとは思ってもみなかった。
「いやいや、俺はそんなつもりでお前たちと戦ったわけじゃ……」
俺が説明しようとすると、ラオが俺の腕にさらにしがみついてきた。その無邪気な笑顔と、テオスの誇らしげな表情に、なんだか反論する気力も失ってしまう。
「……分かった、俺が飼い主ってことでいいから、もう少しだけ寝かせてくれ……」
こうして俺は、ラオとテオス、そしてフルフルに囲まれたまま、少しだけ眠り直すことにした。
翌日、俺たちは集落に別れを告げてグシャ領に戻った。獣人たちは名残惜しそうに見送ってくれ、ラオとテオスも一緒に俺たちと戻ることになった。
領地に到着すると、ブラフが出迎えてくれた。しかし、俺の隣に寄り添うラオとテオスの姿を見るなり、ブラフの表情が険しくなった。
「トオル、君がどこで何をしていたかと思えば……随分可愛い男の子を連れてきたね」
ブラフの冷ややかな言葉に、俺は少し焦りながら説明を試みた。
「ああ、いや、こいつらはラオとテオス。獣人の森で知り合って、それで……まあ、いろいろあって、俺の“仲間”になったんだ」
ブラフはじっとラオとテオスを見つめ、ふっと小さくため息をついた。
「仲間、ね……君はいつも魅力的な存在を集めるのが得意だな」
ブラフの口調には、ほんの少し嫉妬が混じっているように感じられた。彼が俺にこういう感情を向けることは珍しいが、それだけに彼の心中が少しだけわかる気がした。
「えっと、ブラフ? 怒ってる?」
俺が尋ねると、ブラフは目を逸らしながら首を横に振った。
「怒ってなんかないよ。ただ、君があまりにも他人を引き寄せるから、少し心配なだけだ」
その言葉に、俺は思わず笑ってしまった。
「ブラフ、お前が心配することなんてないさ。俺にとって、お前が大事なことは変わらない」
俺がそう言うと、ブラフは少し赤くなったように見え、そっぽを向いて何も言わなくなった。
「トオルさん! これからもよろしくね!」
ラオとテオスが笑顔で俺に抱きつき、フルフルも嬉しそうに腕を組んできた。
その光景を見て、ブラフは再びため息をつきながらも、どこか温かい目で俺たちを見守ってくれていた。
♢
あとがき
どうも作者のイコです。
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