21 / 38
領地経営スタート
異世界の勇者
しおりを挟む
砦に陣を構えた王都軍は、すぐに戦闘を開始した。
隣国の兵士が、砦を破壊するために押し寄せてきたからだ。
相手も同じく1000人程度の兵士を連れてきたが、俺が作り上げた砦が防御を固め、ユリウス王子が連れてきていた女性勇者がチートだった。
「アンリ。どうか、私のために力を使ってくれないか?」
「ユリウスが言うなら仕方ないね。ふふ、イケメンは得だよね~。こんな美少女にお願いができるんだから」
「はは、君が私の陣営に加わってくれて本当に助かるよ」
「利害の一致ってやつだよね。仕方ない、やりますか!」
俺は同じ世界からやってきた彼女も、同じように忌避感を持つのではないかと危惧してしまう。
「あ~面倒だな。死んじゃえよ!」
だが、俺の心配など全く関係なく、苛立った声を出してアンリと呼ばれた勇者は予想通り魔法を展開していく。
ブラフによって鑑定してもらった結果。
名前:アンリ・ヤマジ
年齢:19歳
性別:女性
称号:異世界の勇者
職業:魔導士
レベル:3
生命力:100
攻撃力:20
守備力:10
魔力量:500
魔法力:500
魔法守備力:3000
魅力:30
運力:10
通常スキル:全魔法属性(熟練度初級)、魔法の才能
固有スキル:無詠唱(熟練度初級)、自動翻訳(熟練度MAX)
知識スキル:異世界知識
加護:魔導神からの加護
あまりにも魔法に偏ったチート能力に対して、不思議に思った。
普通に攻撃を受ければ弱く、物理攻撃が当たればすぐに死んでしまうんじゃないか?
しかも俺がこっちにきて三カ月の間にレベル上げを頑張ってやっていたのに、彼女はレベル3のままだ。戦闘をしたことはあるのだろうが、あまりにもレベルが上がっていない。
「この勇者なら」
俺は共に召喚された勇者たちが圧倒的な強さを手に入れて、手に負えないことを想定していた。だが、今の彼女なら俺でも倒せそうだと思えてくる。
「敵が退避していく! さすが勇者アンリだ!」
「えっ? もう、全然歯応えないんですけど」
魔法は確かに凄い。一発目の爆発魔法で、数名の兵士を倒すことができた。
だけど、相手もバカではない。強力な魔導士がいて、砦がある相手に無闇に突っ込んではこない。
「十分に活躍してくれているよ。初戦闘は我々の勝利だ! 勝鬨をあげよ!」
ユリウス王子の言葉に兵士たちが歓声をあげる。
本当にそうだろうか? 敵軍としても様子を見て、離れた場所でこちらを伺っているような気持ち悪い感覚を覚える。
こんな時に、ブラフが近くにいてくれたら相談ができるんだが、いない相手を求めても仕方ないな。
「ヨーゼフ、少し頼みたいことがあるから数名を連れて、砦を離れてくれるか?」
「よろしいのですか?」
「ああ、伝令だ。今の状況をブラフに伝えて、必要なら救援が送れるようにしてほしい」
「救援が必要には思えませんが?」
「ああ、だがどうしても嫌な予感がするんだ」
「わかりました。トオル様の言葉を我々は信じております」
ただ、勝手に脱走させたと言われては困るので、俺はユリウス王子に進言をすることにした。
「初勝利おめでとうございます!」
「うん? なんだグシャの者か、我は気分がいい。何か言いたいことがあるなら、言ってみろ」
「勇者アンリ様のご活躍、とても素晴らしいと感じました」
「そうだろうな」
「はい! 私はこの勝利を最後まで見届けて勝利の一員になりたいと思います」
「くくく、グシャの民にしておくのが、惜しいほどに面白い奴だな」
俺は腹の中で舌を出しながら、ユリウス王子と勇者アンリを褒め称えた。
「このまま勝利は確実だと思われます。そこでソカイで祝勝パーティーが出来るように伝令を向かわせたいのですが、よろしいでしょうか?」
「気の早い奴だな。だが、先程も言った通り気分が良い。貴様の申し出、受けてやろう」
「ありがとうございます! 最後まで勝利を!」
すぐに馬鹿騒ぎをしている砦を出て、ヨーゼフたち九人をグシャに向かわせるように手配した。
「トオル様は、一緒に行かれないのですか?」
「俺も出てしまえば、ユリウス王子に怪しまれてしまう。ブラフに事情を伝え、ソカイにいる兵を動かしてもらってくれ」
「かしこまりました! 必ず戻ります」
ヨーゼフたちを見送り、俺は確保していた食糧を口に入れて見張り台に上がっていく。
「あぁ? なんだお前?」
「グシャ領からお手伝いに来たものです! 見張りを交代します!」
「はは! 助かるぜ。みんなが初勝利に酔いしれてるなかで見張りをさせられて嫌気がさしていたんだ」
見張りの兵は喜んで見張り台を降りていく。
俺は代わりに見張り台の上から敵国へと視線を向けた。
隣国とはどんな相手なのかブラフに聞いているから、初勝利に酔いしれていてはいけないのだ。
身を引き締めるぐらいでなければならない。
「嵐の前の静けさだな」
隣国は、王国と違って勇者召喚は出来ない。
それでも滅亡することなく、国を続けている強国なのだ。
油断は決してしてはならない。
ブラフと何度も話し合って出した答えだ。
隣国の兵士が、砦を破壊するために押し寄せてきたからだ。
相手も同じく1000人程度の兵士を連れてきたが、俺が作り上げた砦が防御を固め、ユリウス王子が連れてきていた女性勇者がチートだった。
「アンリ。どうか、私のために力を使ってくれないか?」
「ユリウスが言うなら仕方ないね。ふふ、イケメンは得だよね~。こんな美少女にお願いができるんだから」
「はは、君が私の陣営に加わってくれて本当に助かるよ」
「利害の一致ってやつだよね。仕方ない、やりますか!」
俺は同じ世界からやってきた彼女も、同じように忌避感を持つのではないかと危惧してしまう。
「あ~面倒だな。死んじゃえよ!」
だが、俺の心配など全く関係なく、苛立った声を出してアンリと呼ばれた勇者は予想通り魔法を展開していく。
ブラフによって鑑定してもらった結果。
名前:アンリ・ヤマジ
年齢:19歳
性別:女性
称号:異世界の勇者
職業:魔導士
レベル:3
生命力:100
攻撃力:20
守備力:10
魔力量:500
魔法力:500
魔法守備力:3000
魅力:30
運力:10
通常スキル:全魔法属性(熟練度初級)、魔法の才能
固有スキル:無詠唱(熟練度初級)、自動翻訳(熟練度MAX)
知識スキル:異世界知識
加護:魔導神からの加護
あまりにも魔法に偏ったチート能力に対して、不思議に思った。
普通に攻撃を受ければ弱く、物理攻撃が当たればすぐに死んでしまうんじゃないか?
しかも俺がこっちにきて三カ月の間にレベル上げを頑張ってやっていたのに、彼女はレベル3のままだ。戦闘をしたことはあるのだろうが、あまりにもレベルが上がっていない。
「この勇者なら」
俺は共に召喚された勇者たちが圧倒的な強さを手に入れて、手に負えないことを想定していた。だが、今の彼女なら俺でも倒せそうだと思えてくる。
「敵が退避していく! さすが勇者アンリだ!」
「えっ? もう、全然歯応えないんですけど」
魔法は確かに凄い。一発目の爆発魔法で、数名の兵士を倒すことができた。
だけど、相手もバカではない。強力な魔導士がいて、砦がある相手に無闇に突っ込んではこない。
「十分に活躍してくれているよ。初戦闘は我々の勝利だ! 勝鬨をあげよ!」
ユリウス王子の言葉に兵士たちが歓声をあげる。
本当にそうだろうか? 敵軍としても様子を見て、離れた場所でこちらを伺っているような気持ち悪い感覚を覚える。
こんな時に、ブラフが近くにいてくれたら相談ができるんだが、いない相手を求めても仕方ないな。
「ヨーゼフ、少し頼みたいことがあるから数名を連れて、砦を離れてくれるか?」
「よろしいのですか?」
「ああ、伝令だ。今の状況をブラフに伝えて、必要なら救援が送れるようにしてほしい」
「救援が必要には思えませんが?」
「ああ、だがどうしても嫌な予感がするんだ」
「わかりました。トオル様の言葉を我々は信じております」
ただ、勝手に脱走させたと言われては困るので、俺はユリウス王子に進言をすることにした。
「初勝利おめでとうございます!」
「うん? なんだグシャの者か、我は気分がいい。何か言いたいことがあるなら、言ってみろ」
「勇者アンリ様のご活躍、とても素晴らしいと感じました」
「そうだろうな」
「はい! 私はこの勝利を最後まで見届けて勝利の一員になりたいと思います」
「くくく、グシャの民にしておくのが、惜しいほどに面白い奴だな」
俺は腹の中で舌を出しながら、ユリウス王子と勇者アンリを褒め称えた。
「このまま勝利は確実だと思われます。そこでソカイで祝勝パーティーが出来るように伝令を向かわせたいのですが、よろしいでしょうか?」
「気の早い奴だな。だが、先程も言った通り気分が良い。貴様の申し出、受けてやろう」
「ありがとうございます! 最後まで勝利を!」
すぐに馬鹿騒ぎをしている砦を出て、ヨーゼフたち九人をグシャに向かわせるように手配した。
「トオル様は、一緒に行かれないのですか?」
「俺も出てしまえば、ユリウス王子に怪しまれてしまう。ブラフに事情を伝え、ソカイにいる兵を動かしてもらってくれ」
「かしこまりました! 必ず戻ります」
ヨーゼフたちを見送り、俺は確保していた食糧を口に入れて見張り台に上がっていく。
「あぁ? なんだお前?」
「グシャ領からお手伝いに来たものです! 見張りを交代します!」
「はは! 助かるぜ。みんなが初勝利に酔いしれてるなかで見張りをさせられて嫌気がさしていたんだ」
見張りの兵は喜んで見張り台を降りていく。
俺は代わりに見張り台の上から敵国へと視線を向けた。
隣国とはどんな相手なのかブラフに聞いているから、初勝利に酔いしれていてはいけないのだ。
身を引き締めるぐらいでなければならない。
「嵐の前の静けさだな」
隣国は、王国と違って勇者召喚は出来ない。
それでも滅亡することなく、国を続けている強国なのだ。
油断は決してしてはならない。
ブラフと何度も話し合って出した答えだ。
612
お気に入りに追加
908
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる