勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

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領地経営スタート

歩み寄り

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名前:トオル・コガネイ
レベル:3
生命力:100
攻撃力:30
守備力:25
魔力量:30
魔法力:15
魔法守備力:15
魅力:15
運力:20
通常スキル:new火の魔法

レベル1の時は合計値が90だったが、今はレベル3になって合計値が250まで急上昇した。その上、火の魔法を使えるようになったのは、かなり嬉しい。

カタログ召喚も一応魔法ではあるが、カタログが出てくるだけなので、魔法を使っているという感覚はない。しかし、火の魔法は、何もないところから火が生まれる。これこそ異世界ファンタジーの魔法だと感じる。

「すごいね。王都にいる騎士たちと変わらない数値だよ!」
「そうなのか?」
「ああ、異世界の勇者たちはレベル1で合計値が1000だったけど、あれは例外だと思ってくれればいい」

ブラフが「例外」と呼んだ四人の顔が浮かぶ。彼らが今後何をするのかはわからないが、過ぎた力は破滅を呼ぶともいう。何もなければいいが……。

「普通の平民で100を超えるぐらい。訓練をしている騎士で200~300ぐらいが平均値なんだよ。私は自分の鑑定はできないけど、トオルの数値は王都の騎士と変わらないよ」

やはり異世界から召喚された者には、多少なりともチート能力が備わっているということだろう。カタログ召喚も使い続ければ進化するかもしれない。

「なら、もっとレベルを上げれば、戦いが楽になるってことだな」
「ああ、トオルは勇者たち以外ではかなりの強さを持てると思うよ」
「よし! やる気が湧いてきたぞ。これで俺にも役目ができたな」
「役目?」
「ああ、ブラフは領主だろ? だが、俺は自分の役割が宙ぶらりんだった。大工として他の奴らを導くことはできるけど、俺がここにいる理由みたいなものが欲しかったんだ」

レベルを上げれば、もっと強くなれる。俺は今、剣と魔法の異世界ファンタジーにいるんだ。そして、火の魔法が使える。

まだ戦いには慣れていないし、魔力量も少ない。でも、俺という存在に意味ができた気がする。

「そんなことを考えていたのか? トオルはいるだけで十分役に立っているよ。料理、掃除、洗濯、カタログ召喚、それにアイデアを出してくれているじゃないか」
「家事全般は一人暮らしをしていたら誰でもできる。カタログ召喚も俺の能力であって、俺自身がすごいわけじゃない。アイデアも元の世界の知識だろう。俺が考えついたわけじゃない」

ブラフが褒めてくれたことは、俺にとっては何一つ誇れることではない。俺自身が努力して得たのは、大工としての技術だけだ。でも、今のところ屋敷の修繕ぐらいしか役に立てていない。それは、俺が本当に求めているものではなかった。

「どうして、トオルはそんなに人の役に立ちたいと思うんだ?」

ブラフの問いかけに、俺はゆっくりと自分の過去を語り出した。

俺は中学三年の時に両親を亡くした。交通事故でトラックに突っ込まれて死んでしまったのだ。叔父である親方が育ての親となり、俺は中学を卒業した。無口だが優しい親方だった。

俺が大工として働きたいと言った時、親方は最初は反対し、高校に行けと言った。でも、俺は早く誰かの役に立ちたくて、仕事を教えて欲しいと頼みこんだ。そんな時、親方が俺に言った言葉があった。

「お前は強いな。なら、誰かのために生きてみろ。人は自分のためだけに生きていると限界が来ることがある。誰かのために頑張りたいと思えば、不思議と力が湧いてくるんだ」

その言葉は当時の俺にはよくわからなかった。けれど、一人前になりたいという気持ちだけが強かった。今思えば、叔父は両親を失った俺に生きる希望を与えようとしてくれていたんだと理解できる。

異世界に来ても、俺はブラフのために生きてみようと思えている。

大工の仕事は本当に大変だった。頭が良くない俺には覚えるのに必死だった。だが、少しずつ仕事ができるようになると、親方や周りの職人たちが認めてくれるようになった。

「トオル坊、こっちを頼む」
「トオル、コーヒー飲めよ」

職人たちは皆、気の良い人ばかりで、俺は恵まれていた。でも、俺は常に一人前になりたいという強い思いを抱いていたんだ。

「……そうだったんだね」

俺の話をブラフは最後まで真剣に聞いてくれた。平凡だけど、俺という人間を形作ってきた人生だ。

「トオルはやっぱりすごいだけじゃなく、努力家で、偉い人だよ」
「偉くはないさ。努力はしたと思うけど」
「偉いよ。両親を失っても、自分で一人前になろうとしたんだから。私は両親に守られて、領主という地位も与えられた。それが過酷なことでも、恵まれていると思えるよ」

俺から見れば、ブラフだって恵まれているとは思えない。第五王子としての苦悩や、厳しい領地経営。それでも、俺は彼を尊敬している。

「俺はお前を認めている。だから、自分の話をしたんだ」
「認めている?」
「ああ、お前も偉い。だけど、お前のことも聞かせてくれよ」
「私のことなんて……」
「いいから」
「はぁ、わかったよ」

俺たちは自分の過去を語り合った。それが、お互いを理解し、認め合うことだと思ったから。
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