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序章
友人 後半
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プリンくんの話は本当に面白い。
私が知らない知識をたくさん持っているのだ。
特に魔導具についての知識もさることながら昆虫についても詳しく。
魔物と化してしまう昆虫を嘆いていた。
「魔法があり、魔素が空気中にある以上、生物が魔物化してしまうのは仕方ないことだ。だが、魔物化を止めたいと我は思っておるのだ」
目的があり、そのための研究をしている彼は素晴らしい人物だと思う。
「そうだ。先ほどの守護虫を使って見せてはくれないか? 我がいるほうが何かあった時に対処もできる」
「ああ、わかったよ」
先ほどの三体から、芋虫型の守護虫を貰い受けた。
選んだ理由としては、蜘蛛と蟷螂は妙にリアルで触るのが躊躇われた。
かっこいいだろと言われたらそうかもしれないと思ったのだが、足の細い蜘蛛に、鎌をもつ蟷螂はどうにも選び辛かった。
そこで芋虫に触ったところ、これもリアルといえばいいのか、ふわふわとして柔らかくて気持ちよかった。顔も他の二匹に比べるとグロさが少ない。
「魔力を流せばいいのかな?」
「そうだ。できれば属性を含まぬ純粋な魔力が良い」
属性とは、回復魔法や雷などの私が使っている魔法を指す。
そして、属性を含まない魔力だけのものを無属性として、肉体強化や武器強化に使われる。
「わかった。やってみよう」
私は言われた通りに無属性の魔法を芋虫に流していくと、透明だった芋虫のボディーが白く染まっていく。
「よし。もういいぞ」
「どうだろうか?」
「完璧だ! 白いとは珍しい。大抵の物は赤か青に染まる。白は見たことがない」
数億匹の失敗作を作ったと言っていてので、色々な色を見ているのだろう。
「これでこいつは君の物となった。名前をつけてやってくれ」
「では、モコにするよ。モコモコした肌触りをしてるからね」
「捻りのないつまらない名前だ。もっとないのか? 私はこの蟷螂型の守護虫にするぞ! そうだな。名前はシーザーにしよう! カッコいいだろ?」
「ああ、かっこいいな。う~ん、モコ以外だと」
フワフワな体を眺めていると、芋虫が動いた。
『キュピ』
「うわっ!鳴いた!」
「くくく、そりゃ鳴くだろ。虫だぞ」
「いやいや、魔導具だろ?」
「魔導具ではあるが、こいつらは魔力を与えられた際に命を吹き込まれる守護虫だ。今はレベルも低く、弱い存在だが。しっかりと主人がレベルを上げて成長をすれば、こいつも進化して成長を遂げる」
「えっ?! 進化するのか?」
そんな形を変える魔導具など聞いたことがない。
「当たり前だろ。虫は変態するのだ。我のカマキリもここから2段階変態をするのだ!」
「凄いな!」
「だろ? 研究者として、我も最高傑作を作ってしまったと思っている。だが、完成したと言っても時間をかけて成長させたわけではない。魔力を強引に注いで変態させた姿を見たことがあるだけだ」
実験のために強引にか、目の前にいる芋虫が強引に殺されてしまうのは悲しい。
「こいつはどんな変態をするんだ?」
「芋虫型は、蝶になるな。色は与えた魔力によって変化していたから、白い芋虫は白い蝶になると思う」
「なるほど。ならば、白くて美しい蝶になって欲しいと願いを込めて、フロスティーと名付けよう」
「フロスティーか、悪くないな」
どうやらプリン君の、名前センスにもダメ出しはされないようだ。
「これから頼むなフロスティー」
私が呼びかけると、フロスティーが私の掌に乗ってきてくれた。
柔らかくて、先ほどよりも温かみを感じる。
それに心が通じているような不思議な感覚を覚える。
「魔導具に心があるのか?」
「それはわからぬよ。だが、魔導具も魔力を帯びることで、生き物のように意思を保つことがあるかも知れぬな。それは研究者である我の永遠の課題になるだろう」
有意義な時間はあっと言う間に過ぎてしまう。
プリン君と過ごす時間は楽しかった。
同じように思っていてくれると嬉しいが、どうだろうか?
「マクシム君。我は外に出ることが苦手だ。だから、また来てくれ」
「プリン様は相当楽しかったようです。友人としてまた会いたいと言っておられます」
白衣さんの通訳のおかげで、プリン君の気持ちが知れるのはありがたい。
「ああ。私も凄く楽しかったよ。友人としてこれからもよろしく頼む。それと、フロスティーのことでわからないことがあったら、連絡してもいいかい?」
「もちろんだ。なんでも言ってくるがいい。そうだな。自身の成長がないまま魔力を与え続けるのはやめた方がいい。自分が成長を遂げたと思った際に、魔力をあげてあげると、フロスティーの成長が上手くいくぞ」
「自分の成長を感じた時か、わかった肝に銘じておくよ」
「おう。友よ」
私たちは握手を交わして、別れを告げた。
迎えにきてくれたアルファと共に馬車に乗り込むと話しかけられた。
「どうやら楽しかったようですね」
「ああ、来てよかったよ」
「それはようございました。マクシム様に男性の友人ができて私も嬉しく思います」
「ありがとう。アルファ」
自分のことのように喜んでくれるアルファに、つい嬉しくなる。
「それで……、その頭に上にいる芋虫は?」
「ああ、プリン君にもらった魔導具の守護虫のフロスティーだ。私の成長と共に私を守ってくれる魔導具になるそうだ」
「それは良いものを頂きましたね。見た目も、可愛いです」
他の二体に比べれば、確かにフワフワとして可愛い見た目で本当によかった。
この子が綺麗な蝶になれるようにしっかりと育てていこう。
私が知らない知識をたくさん持っているのだ。
特に魔導具についての知識もさることながら昆虫についても詳しく。
魔物と化してしまう昆虫を嘆いていた。
「魔法があり、魔素が空気中にある以上、生物が魔物化してしまうのは仕方ないことだ。だが、魔物化を止めたいと我は思っておるのだ」
目的があり、そのための研究をしている彼は素晴らしい人物だと思う。
「そうだ。先ほどの守護虫を使って見せてはくれないか? 我がいるほうが何かあった時に対処もできる」
「ああ、わかったよ」
先ほどの三体から、芋虫型の守護虫を貰い受けた。
選んだ理由としては、蜘蛛と蟷螂は妙にリアルで触るのが躊躇われた。
かっこいいだろと言われたらそうかもしれないと思ったのだが、足の細い蜘蛛に、鎌をもつ蟷螂はどうにも選び辛かった。
そこで芋虫に触ったところ、これもリアルといえばいいのか、ふわふわとして柔らかくて気持ちよかった。顔も他の二匹に比べるとグロさが少ない。
「魔力を流せばいいのかな?」
「そうだ。できれば属性を含まぬ純粋な魔力が良い」
属性とは、回復魔法や雷などの私が使っている魔法を指す。
そして、属性を含まない魔力だけのものを無属性として、肉体強化や武器強化に使われる。
「わかった。やってみよう」
私は言われた通りに無属性の魔法を芋虫に流していくと、透明だった芋虫のボディーが白く染まっていく。
「よし。もういいぞ」
「どうだろうか?」
「完璧だ! 白いとは珍しい。大抵の物は赤か青に染まる。白は見たことがない」
数億匹の失敗作を作ったと言っていてので、色々な色を見ているのだろう。
「これでこいつは君の物となった。名前をつけてやってくれ」
「では、モコにするよ。モコモコした肌触りをしてるからね」
「捻りのないつまらない名前だ。もっとないのか? 私はこの蟷螂型の守護虫にするぞ! そうだな。名前はシーザーにしよう! カッコいいだろ?」
「ああ、かっこいいな。う~ん、モコ以外だと」
フワフワな体を眺めていると、芋虫が動いた。
『キュピ』
「うわっ!鳴いた!」
「くくく、そりゃ鳴くだろ。虫だぞ」
「いやいや、魔導具だろ?」
「魔導具ではあるが、こいつらは魔力を与えられた際に命を吹き込まれる守護虫だ。今はレベルも低く、弱い存在だが。しっかりと主人がレベルを上げて成長をすれば、こいつも進化して成長を遂げる」
「えっ?! 進化するのか?」
そんな形を変える魔導具など聞いたことがない。
「当たり前だろ。虫は変態するのだ。我のカマキリもここから2段階変態をするのだ!」
「凄いな!」
「だろ? 研究者として、我も最高傑作を作ってしまったと思っている。だが、完成したと言っても時間をかけて成長させたわけではない。魔力を強引に注いで変態させた姿を見たことがあるだけだ」
実験のために強引にか、目の前にいる芋虫が強引に殺されてしまうのは悲しい。
「こいつはどんな変態をするんだ?」
「芋虫型は、蝶になるな。色は与えた魔力によって変化していたから、白い芋虫は白い蝶になると思う」
「なるほど。ならば、白くて美しい蝶になって欲しいと願いを込めて、フロスティーと名付けよう」
「フロスティーか、悪くないな」
どうやらプリン君の、名前センスにもダメ出しはされないようだ。
「これから頼むなフロスティー」
私が呼びかけると、フロスティーが私の掌に乗ってきてくれた。
柔らかくて、先ほどよりも温かみを感じる。
それに心が通じているような不思議な感覚を覚える。
「魔導具に心があるのか?」
「それはわからぬよ。だが、魔導具も魔力を帯びることで、生き物のように意思を保つことがあるかも知れぬな。それは研究者である我の永遠の課題になるだろう」
有意義な時間はあっと言う間に過ぎてしまう。
プリン君と過ごす時間は楽しかった。
同じように思っていてくれると嬉しいが、どうだろうか?
「マクシム君。我は外に出ることが苦手だ。だから、また来てくれ」
「プリン様は相当楽しかったようです。友人としてまた会いたいと言っておられます」
白衣さんの通訳のおかげで、プリン君の気持ちが知れるのはありがたい。
「ああ。私も凄く楽しかったよ。友人としてこれからもよろしく頼む。それと、フロスティーのことでわからないことがあったら、連絡してもいいかい?」
「もちろんだ。なんでも言ってくるがいい。そうだな。自身の成長がないまま魔力を与え続けるのはやめた方がいい。自分が成長を遂げたと思った際に、魔力をあげてあげると、フロスティーの成長が上手くいくぞ」
「自分の成長を感じた時か、わかった肝に銘じておくよ」
「おう。友よ」
私たちは握手を交わして、別れを告げた。
迎えにきてくれたアルファと共に馬車に乗り込むと話しかけられた。
「どうやら楽しかったようですね」
「ああ、来てよかったよ」
「それはようございました。マクシム様に男性の友人ができて私も嬉しく思います」
「ありがとう。アルファ」
自分のことのように喜んでくれるアルファに、つい嬉しくなる。
「それで……、その頭に上にいる芋虫は?」
「ああ、プリン君にもらった魔導具の守護虫のフロスティーだ。私の成長と共に私を守ってくれる魔導具になるそうだ」
「それは良いものを頂きましたね。見た目も、可愛いです」
他の二体に比べれば、確かにフワフワとして可愛い見た目で本当によかった。
この子が綺麗な蝶になれるようにしっかりと育てていこう。
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