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序章
side ー 聖男 3
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《sideナルシス・アクラツ》
家庭教師がやってきた。
何やらタイミングよく上位貴族の家庭教師をしていたという女性が職を失って、募集をかけたタイミングで捕まったそうだ。
「初めまして、ナルシス様。わたくしはアーデルハイドと申します。この度、家庭教師として勤めさせていただきます」
見た目はメガネをかけた美人だけど、どこか堅そうでつまらない女性って感じだ。
年齢的には若そうだけど、今の僕からしたら、オバさんに見えるよね。
「よろしくお願いします。先生」
それでも外面は完璧に演じ切る自信があるよ。
彼女がどこの誰と繋がっているのかわからないからね。
「はい。よろしくお願いします。それでは、授業を始める前に聞いておきたいことがあるのですがよろしいですか?」
「ええ、なんでも聞いてください」
どうせ、男に飢えたオバさんだから、僕が笑いかけてあげれば、コロッと言うことを聞くはずだ。
「それでは、ナルシス様。あなたの目指すべき頂きはどこですか?」
「目指す頂きですか? それはもちろん、女王陛下の花婿です。男爵家だから無理だと思いますか? でも、僕は本気です」
こんな健気に頑張る男の子が女性は好みだろ。
「いえ、決して無理だとは思いません。あなたは他の殿方よりも容姿が優れています。ですから、花婿筆頭になることもできるでしょう」
なんだ、わかっているじゃないか。
ふふ、所詮この家庭教師もチョロいんだったと言うことか。
「ですが、それは本来の筆頭花婿候補が辞退されたからに過ぎません」
「はっ?!」
あっ、つい素の顔が……。
「ハァ、醜悪なお顔をされるのですね」
「なっ!」
「その偽の作り笑いも薄っぺらい」
「ハァア!!!」
「いいですか? あなたが目指すべきは女王の花婿です。演じるのであれば、わたくしの前程度は演じ切っていただきたい。そうしなければ一生を女王の夫として、国民全員を騙さなければいけないのです」
こっ、この女言いたい放題言いやがって、ちょっと優しくしてやっていれば調子に乗りやがって! 僕は三年間魔法を覚えて鍛え、体を作ってきたんだ。
魔法の理解はイメージだ。
そんな物は現代の知識があれば誰でも知っている常識だ。
いいだろう。僕をバカにするなら実力の差で見せつけてやる。
「ふむ。今度は暴力ですか、いいでしょう。家庭教師の実力をお見せしましょう。わたくしも女です。自分で優秀だと思っておりますが、前回はあまりにも優秀な方の指導をしていたので、ナルシス様のような方が教えがいがあります」
「調子に乗るなよ! 僕は唯一無二の選ばれた存在なんだ!」
ボクは氷の魔法を発動して、矢を作り出す。
「ほう、魔法を使えるとは優秀ですね」
「謝るなら今だぞ」
「謝る必要はありません。これも教育の一環です。どうぞ、お力をお見せください。わたくしも指導させていただきます」
「後悔するなよ!」
もう容赦はしない。
なんだ、この家庭教師は! 絶対に屈服させて僕の奴隷にしてやる。
こんなやつに教えてもらうことなんて何もない。
「さっさと放っては?」
「うるさい! 大怪我しちまえ!」
「ハァ、マクシム様ならば、絶対にこのような行為はしないでしょうね。本当に見た目だけのお人ですね」
僕が氷の矢を放つと、家庭教師は片手を振っただけで全てを消してしまう。
「はっ?」
「ふぅ、わたくしも戦闘は久しぶりで手加減できるのか不安ではありましたが、どうやら問題ありませんね。どうしますか? まだ魔法で攻撃しますか? それとも拳で?」
男を舐めているのか? 力ならいくら歳の差があっても僕が勝つに決まっているじゃないか!
女だから殴るつもりはなかったけどいいだろう。
「オラっ!」
僕が殴りかかると足を掛けられて転びそうになる。
「おっと、本当に転ばせるつもりはありません」
「ぐっ!」
襟首を掴まれた。
「どうです?」
「うるさい! 僕は凄いんだ!」
「そうですね。才能は十分です。見た目も良い。性格は最悪ですが、なんとかなるでしょう。本気で目指されているのであれば」
「本気だよ! 僕は花婿になって、聖男にもなるんだ!」
手を離されて尻餅をついた。痛いけど、目の前の家庭教師が僕よりも強いことは理解できた。
「どうやらナルシス様の目的は本気のようですね。では、ナルシス様。あなたにわたくしから教える内容は、人身掌握術になります」
「えっ?」
「国民全員を騙せるほどの、外面を身につけていただきます。そのための人身掌握術を私はあなたに教えましょう。その上で勉強や礼儀作法を学びましょう」
「それで花婿になれるの?」
「もちろんです。わたくしはもう間違えたくはありません。ですから、しっかりと相手を見極めて判断しています」
堂々とした家庭教師が僕を見下ろして宣言する。
「ふん、なら、僕を育ててみろよ!」
「ええ、しっかりと指導させていただきます。ナルシス様もしっかりとついてきてくださいませ!」
「おっ、おう」
「それでは、本日はご挨拶だけですので、明日からよろしくお願いします」
「ああ」
とんでもない家庭教師がきやがった。
前に指導を受けていたやつも、あいつに嫌気が差して首にしたんじゃないか?
「そうそう、先に言っておきます。わたくしが指導させていただいたお方の中で、前回まで指導させていただいた方が、わたくしにとって最高の生徒でした。ナルシス様には、その方を超えていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」
最後まで嫌味な様子で出ていった。
「クソが、絶対に超えてやるよ! その最高の生徒とやらおよ!」
それで家庭教師よりも強くなってやる。
その時は覚えていろよ。
家庭教師がやってきた。
何やらタイミングよく上位貴族の家庭教師をしていたという女性が職を失って、募集をかけたタイミングで捕まったそうだ。
「初めまして、ナルシス様。わたくしはアーデルハイドと申します。この度、家庭教師として勤めさせていただきます」
見た目はメガネをかけた美人だけど、どこか堅そうでつまらない女性って感じだ。
年齢的には若そうだけど、今の僕からしたら、オバさんに見えるよね。
「よろしくお願いします。先生」
それでも外面は完璧に演じ切る自信があるよ。
彼女がどこの誰と繋がっているのかわからないからね。
「はい。よろしくお願いします。それでは、授業を始める前に聞いておきたいことがあるのですがよろしいですか?」
「ええ、なんでも聞いてください」
どうせ、男に飢えたオバさんだから、僕が笑いかけてあげれば、コロッと言うことを聞くはずだ。
「それでは、ナルシス様。あなたの目指すべき頂きはどこですか?」
「目指す頂きですか? それはもちろん、女王陛下の花婿です。男爵家だから無理だと思いますか? でも、僕は本気です」
こんな健気に頑張る男の子が女性は好みだろ。
「いえ、決して無理だとは思いません。あなたは他の殿方よりも容姿が優れています。ですから、花婿筆頭になることもできるでしょう」
なんだ、わかっているじゃないか。
ふふ、所詮この家庭教師もチョロいんだったと言うことか。
「ですが、それは本来の筆頭花婿候補が辞退されたからに過ぎません」
「はっ?!」
あっ、つい素の顔が……。
「ハァ、醜悪なお顔をされるのですね」
「なっ!」
「その偽の作り笑いも薄っぺらい」
「ハァア!!!」
「いいですか? あなたが目指すべきは女王の花婿です。演じるのであれば、わたくしの前程度は演じ切っていただきたい。そうしなければ一生を女王の夫として、国民全員を騙さなければいけないのです」
こっ、この女言いたい放題言いやがって、ちょっと優しくしてやっていれば調子に乗りやがって! 僕は三年間魔法を覚えて鍛え、体を作ってきたんだ。
魔法の理解はイメージだ。
そんな物は現代の知識があれば誰でも知っている常識だ。
いいだろう。僕をバカにするなら実力の差で見せつけてやる。
「ふむ。今度は暴力ですか、いいでしょう。家庭教師の実力をお見せしましょう。わたくしも女です。自分で優秀だと思っておりますが、前回はあまりにも優秀な方の指導をしていたので、ナルシス様のような方が教えがいがあります」
「調子に乗るなよ! 僕は唯一無二の選ばれた存在なんだ!」
ボクは氷の魔法を発動して、矢を作り出す。
「ほう、魔法を使えるとは優秀ですね」
「謝るなら今だぞ」
「謝る必要はありません。これも教育の一環です。どうぞ、お力をお見せください。わたくしも指導させていただきます」
「後悔するなよ!」
もう容赦はしない。
なんだ、この家庭教師は! 絶対に屈服させて僕の奴隷にしてやる。
こんなやつに教えてもらうことなんて何もない。
「さっさと放っては?」
「うるさい! 大怪我しちまえ!」
「ハァ、マクシム様ならば、絶対にこのような行為はしないでしょうね。本当に見た目だけのお人ですね」
僕が氷の矢を放つと、家庭教師は片手を振っただけで全てを消してしまう。
「はっ?」
「ふぅ、わたくしも戦闘は久しぶりで手加減できるのか不安ではありましたが、どうやら問題ありませんね。どうしますか? まだ魔法で攻撃しますか? それとも拳で?」
男を舐めているのか? 力ならいくら歳の差があっても僕が勝つに決まっているじゃないか!
女だから殴るつもりはなかったけどいいだろう。
「オラっ!」
僕が殴りかかると足を掛けられて転びそうになる。
「おっと、本当に転ばせるつもりはありません」
「ぐっ!」
襟首を掴まれた。
「どうです?」
「うるさい! 僕は凄いんだ!」
「そうですね。才能は十分です。見た目も良い。性格は最悪ですが、なんとかなるでしょう。本気で目指されているのであれば」
「本気だよ! 僕は花婿になって、聖男にもなるんだ!」
手を離されて尻餅をついた。痛いけど、目の前の家庭教師が僕よりも強いことは理解できた。
「どうやらナルシス様の目的は本気のようですね。では、ナルシス様。あなたにわたくしから教える内容は、人身掌握術になります」
「えっ?」
「国民全員を騙せるほどの、外面を身につけていただきます。そのための人身掌握術を私はあなたに教えましょう。その上で勉強や礼儀作法を学びましょう」
「それで花婿になれるの?」
「もちろんです。わたくしはもう間違えたくはありません。ですから、しっかりと相手を見極めて判断しています」
堂々とした家庭教師が僕を見下ろして宣言する。
「ふん、なら、僕を育ててみろよ!」
「ええ、しっかりと指導させていただきます。ナルシス様もしっかりとついてきてくださいませ!」
「おっ、おう」
「それでは、本日はご挨拶だけですので、明日からよろしくお願いします」
「ああ」
とんでもない家庭教師がきやがった。
前に指導を受けていたやつも、あいつに嫌気が差して首にしたんじゃないか?
「そうそう、先に言っておきます。わたくしが指導させていただいたお方の中で、前回まで指導させていただいた方が、わたくしにとって最高の生徒でした。ナルシス様には、その方を超えていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」
最後まで嫌味な様子で出ていった。
「クソが、絶対に超えてやるよ! その最高の生徒とやらおよ!」
それで家庭教師よりも強くなってやる。
その時は覚えていろよ。
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