お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

文字の大きさ
60 / 153
第二話

頼られたら、受け止めたくなるよね。

しおりを挟む
《side フライ・エルトール》

 朝、私の屋敷の扉をノックする音が響いた。

 普段は誰も訪ねてこないのに、珍しいこともあるもんだと思いながら扉を開けると、そこに立っていたのは鼠人族の少女だった。

 小柄な体に丸まった背中、だけど、可愛らしい大きな瞳と前歯、他の鼠人族よりも、人族の特徴が強くて、とても可愛らしい女の子が、私に向かって深々と頭を下げた。

「鼠人族のミミと申します。フライ・エルトール様、私をここで働かせてくださいっチュ!」

 彼女の言葉に一瞬驚いたものの、すぐに柔らかく微笑んで応えた。

「僕のことを覚えてくれていたんだね。ようこそ、ミミ」

 私は来る者拒みません。彼女がどんな理由でやってきたのか、知りませんが私を頼ってここに来たのなら受け入れるだけです。

「私たち鼠人族は、ずっと迷宮の中でしか生きられないと諦めていました。でも、フライ様が教えてくれましたっチュ。迷宮の外でも生きていける可能性があるって、だから、私、自分で外の世界を見てみたいんですっチュ!」

 迷宮は薄暗くて、綺麗ではない。ただ、決められた環境で生活するというのは、安住の地であり、そこから外に出るのには勇気がいる行為だろう。

 彼女はその一歩を踏み出そうとしている。それを拒む理由はなかった。

「ようこそ、君は勇者だね。ここで生活しながら、自分のやりたいことを探していこう。でも、一つだけ条件がある」
「条件っチュ?」
「僕の屋敷に来たからには、自分の力で自立する方法を学ぶこと。ここはただの安住の地じゃないんだ。僕のお小遣いの中で支援はしよう。だけど、ちゃんと勉強や仕事をすること」

 ミミは真剣な表情で頷いた。その覚悟が見えた。

「ありがとうございますっチュ! 私、絶対に頑張りますっチュ!」

 彼女の決意を見ていると、自然と笑みが浮かんだ。

 ミミが屋敷に加わったことを、エリザベートとアイリーンにも紹介した。ミミの姿を見ると、エリザベートは頭を抱えて溜息をつく。

「フライ様、また女性ですの? 一体、どこまで増やすつもりですの?」
「いやいや、今回はそういうのじゃないよ。奴隷じゃないから、ミミは普通に僕を頼ってきてくれたんだよね? ただ、彼女には学ぶ場が必要だっただけで」
「ですが、学園都市に来てから、女性ばかりがフライ様の周りに増えていくのは事実ですわ」

 う~ん、言われてしまえばそうなんだけど、ユーハイム姉妹にトア、奴隷たち加えて、ミミ。うん確かに女性ばかりだ。

「そう言われても……」

 困っている人を助けるのは人として当たり前なんだよな。しかし、僕としては色々と考えがあるわけで、どうやってエリザベートに説明をすればいいかな?

 考え事をしていると、アイリーンが冷静に話に入ってきた。

「エリザベート、考え方を変えましょう。この少女、ミミを活用できるかもしれません」
「活用?」
「はい。彼女は迷宮で育った鼠人族だという話ではないですか? 迷宮や地下に詳しいはずです。それなら、この学園都市における地下の情報を収集する役割を担わせることができるのでは?」

 その言葉に、エリザベートはまだ納得できない顔をしていた。アイリーンがミミの働き方を考えてくれたのは意外だったけど、助け舟を出してくれたのはありがたい。

「わかりました。学園都市の迷宮は複雑ですもの、何かの助けになるでしょう」
「ミミ、どうだい? 最初の仕事として、迷宮の知識を活かして、アイリーンにこの都市の地下について教えてあげてくれるかい?」

 私の問いかけに、ミミは少し戸惑ったものの、すぐに頷いた。

「はいっチュ! 私、やってみますっチュ!」

 アイリーンだけでなく、ミミが暮らすようになって、トアともすぐに仲良くなった。

 屋敷の庭では、トアがミミと話をしていた。トアは平民出身で虐げられていた時期もある、彼女にはミミの境遇が理解できる部分があるのだろう。

「ミミ、迷宮から出てきたって聞いたけど、大丈夫だったの?」

 私もミミが一人で屋敷までやってきたことは、よく来れたと不思議に感じていた。

「はいっチュ。みんなに見送ってもらったっチュ。爺様も応援してくれたっチュ」
「そうなんですね! ミミは勇気があるんですね! 迷宮の外に出るなんて、怖くなかった?」
「怖かったっチュ。でも、フライ様が言ってたっチュ。鼠人族を尊敬しているって言ってくれっチュ。その言葉を信じたかったっチュ」

 トアは満足そうに頷きながら笑った。

「凄いね」

 ミミの屋敷での生活は順調に始まった。

 彼女はアイリーンの指導を受けながら迷宮についての知識を整理し、時にはトアと一緒に研究と学習を続けている。

 お祭り中の学園都市は、ミミにとって煌びやかな楽しさがあるようだ。

「フライ様、ミミを預けていただきありがとうございます」
「いや、アイリーンさんこそ、エリザベートへの口添えありがとう」
「ふふ、いいのですよ。私にとってはどれだけ増えても問題はありません」
「えっ?」
「いえ、こちらの話です」

 ミミが持っている地下迷宮の情報はアイリーンさんにとっては必要だった情報なので、アイリーンさんが何かと世話をしてくれている。

 私としては、新たな世界を始めるミミの道を作ってあげられれば良い。

 トアと共に将来的には、成長していく姿が見れるといいね。イベントが始まるので、私としても祭りを楽しみます。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...