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第三話
作戦会議
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《side エルド・カレヴィ》
長老会の空気は、静かに、そして鋭く張り詰めていた。
カラムの水晶が淡く揺れ、バッサム長老の戦槌が床に打ち据えられたまま微動だにしない。
そんな中、俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「俺たちは、迎え撃つ」
ざわ、と衣擦れの音が一斉に立つ。だが俺は手を挙げて静止させる。
「いや、正確には誘い込む。王国軍を、ヨンクへ」
長老たちの視線が集中する。だが、誰も口を挟まなかった。皆、続きがあるとわかっていた。
「王国の第三王子・ドウマは、武功を焦っている。ならばこちらが逃げ腰に見えれば、喜んで攻め込んでくるだろう」
カラムが目を細めた。
「つまり……エルド、貴殿はわざと弱く見せると?」
「ああ。防備を解き、街道を開けてやる。正面をがら空きにして、ヨンクへ誘導する。連中に『奇襲が成功した』と思わせる」
バッサム長老が腕を組み、にやりと笑う。
「ふむ……あえて、懐に引きずり込む策か。まるで鍋に飛び込んだ豚じゃな」
俺は頷き、地図を示す。
「ここ。谷間にかかる旧鉱山の道筋を通れば、自然と奴らは狭い谷に入る。そこで、全軍を包囲する。ヨンク本隊、周囲の連合各国、遊撃部隊全てを使って逃げ道ごと潰す」
「連合の被害は最小に抑えられるな……」
今回の一件は、第三王子の身勝手から、民が傷つくことになる。
俺は連合のみんなに傷ついてほしくはない。
だが、戦をする以上は傷つかないなどあり得ない。
俺は戦いの中で生きている人間だ。覚悟はできている。
いや、連合に生きている者たちは、皆覚悟を持って生きている。
「奴らを正面から迎え撃てば、こちらの消耗が激しくなる。だが、俺たちは土地を知っている。地の利がある場所に、敵を誘導して囲む方が合理的だ」
カラムがゆっくりと手を口元に当て、言う。
「……それは、王国の第三王子の軍勢を殲滅するということですか?」
「本当はそうしたい。ノーラを狙ったその報いは、きっちり返したいからな。だが、今回、王国の本体が動いたわけじゃない」
王国全体の真意。王の考えがわからない以上は無闇に虐殺をした後の報復の方が大きくなる。
「無関係な民や兵には極力手を出さない。それが、ヨンクの誇りだ」
俺は、きっぱりと言った。
ヨンクに住んでいる者たちは、ただの戦鬼の軍ではない。守るべきものがある。それを理解しているからこそ、仲間がついてくる。
「戦の皮切りは俺が担う。囮も、最前線も、すべて俺が引き受ける。あとは、合図の刻限に包囲を閉じてくれればいい」
その言葉に、長老たちの沈黙が一瞬だけ続いた。
やがて、バッサムが豪快に笑う。
「面白い! それでこそエルドじゃ。ヨンクは、やはりお主のもので間違いなかった!」
「必要な準備は、すぐに始めよう。連合の誇りにかけてこの戦、勝つ」
「うむ、王国に痛打を与える機会、逃す手はない」
長老たちが次々に頷き、立ち上がっていく。
地図の上で、王国軍の動きを示す駒が、静かにヨンクに向けて進んでいく。
そして、それを囲むように、連合各国の印が揃って並べられた。
「この戦、終わらせてやる」
俺は静かに、剣の柄を握った。
目標は第三人王子の捕虜。そして、なるべく多くの兵を生かしたまま捕まえて、人質として、侵略者の責任を王国に取らせる。
そうすることで、連合に非はなく。王国も暴走した第三王子を切り捨てるだけで話はつくはずだ。
長老会の空気は、静かに、そして鋭く張り詰めていた。
カラムの水晶が淡く揺れ、バッサム長老の戦槌が床に打ち据えられたまま微動だにしない。
そんな中、俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「俺たちは、迎え撃つ」
ざわ、と衣擦れの音が一斉に立つ。だが俺は手を挙げて静止させる。
「いや、正確には誘い込む。王国軍を、ヨンクへ」
長老たちの視線が集中する。だが、誰も口を挟まなかった。皆、続きがあるとわかっていた。
「王国の第三王子・ドウマは、武功を焦っている。ならばこちらが逃げ腰に見えれば、喜んで攻め込んでくるだろう」
カラムが目を細めた。
「つまり……エルド、貴殿はわざと弱く見せると?」
「ああ。防備を解き、街道を開けてやる。正面をがら空きにして、ヨンクへ誘導する。連中に『奇襲が成功した』と思わせる」
バッサム長老が腕を組み、にやりと笑う。
「ふむ……あえて、懐に引きずり込む策か。まるで鍋に飛び込んだ豚じゃな」
俺は頷き、地図を示す。
「ここ。谷間にかかる旧鉱山の道筋を通れば、自然と奴らは狭い谷に入る。そこで、全軍を包囲する。ヨンク本隊、周囲の連合各国、遊撃部隊全てを使って逃げ道ごと潰す」
「連合の被害は最小に抑えられるな……」
今回の一件は、第三王子の身勝手から、民が傷つくことになる。
俺は連合のみんなに傷ついてほしくはない。
だが、戦をする以上は傷つかないなどあり得ない。
俺は戦いの中で生きている人間だ。覚悟はできている。
いや、連合に生きている者たちは、皆覚悟を持って生きている。
「奴らを正面から迎え撃てば、こちらの消耗が激しくなる。だが、俺たちは土地を知っている。地の利がある場所に、敵を誘導して囲む方が合理的だ」
カラムがゆっくりと手を口元に当て、言う。
「……それは、王国の第三王子の軍勢を殲滅するということですか?」
「本当はそうしたい。ノーラを狙ったその報いは、きっちり返したいからな。だが、今回、王国の本体が動いたわけじゃない」
王国全体の真意。王の考えがわからない以上は無闇に虐殺をした後の報復の方が大きくなる。
「無関係な民や兵には極力手を出さない。それが、ヨンクの誇りだ」
俺は、きっぱりと言った。
ヨンクに住んでいる者たちは、ただの戦鬼の軍ではない。守るべきものがある。それを理解しているからこそ、仲間がついてくる。
「戦の皮切りは俺が担う。囮も、最前線も、すべて俺が引き受ける。あとは、合図の刻限に包囲を閉じてくれればいい」
その言葉に、長老たちの沈黙が一瞬だけ続いた。
やがて、バッサムが豪快に笑う。
「面白い! それでこそエルドじゃ。ヨンクは、やはりお主のもので間違いなかった!」
「必要な準備は、すぐに始めよう。連合の誇りにかけてこの戦、勝つ」
「うむ、王国に痛打を与える機会、逃す手はない」
長老たちが次々に頷き、立ち上がっていく。
地図の上で、王国軍の動きを示す駒が、静かにヨンクに向けて進んでいく。
そして、それを囲むように、連合各国の印が揃って並べられた。
「この戦、終わらせてやる」
俺は静かに、剣の柄を握った。
目標は第三人王子の捕虜。そして、なるべく多くの兵を生かしたまま捕まえて、人質として、侵略者の責任を王国に取らせる。
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