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第二十八話 ○月✕日モノポリー
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○月✕日今日のお天気は曇りのち晴れ。例年と比べ比較的暖かな一日となるでしょう。
昔は落ち葉の下に出来ている霜柱を、サクサクと脆く崩れて行く感覚が楽しくて、踏みながら登校していたものだ。
ゆったりと午前を過ごした自宅を出て、すっかり真上に日が上った休日の午後。
昨日までの賑やかだった秋色の街路樹は、昨夜の強風ですっかり枝をカラにさせ、代わりに地面をカラフルにさせていた。
日陰を歩くと出来る地面に残す濡れた自分の足跡は、もうすっかりあの頃のものとは違う。
少し感傷的なのは目の前の景色を見て、昨日までの景色を思い出すからなのかもしれない。
「わあ!あれっ!」
「あはっおかしい?」
「ううん……ううん!全然おかしくないよ似合ってる……なんか……昔のエッちゃんに戻ったみたい」
ちょうど鳥海家の玄関を、日差しが直射する時間。小春日和に包まれ眩しそうに目を細ませ姿を見せたのは、昨日までの恵風と違う恵風だった。目を細めた恵風と対照的に瑞月はまるで顔いっぱいに大きくした目で、恵風からもう離せないでいる。
出迎えに履いたつっかけを脱ぎながら、瑞月の視線を照れ臭そうに逸らす。それまで長い髪が隠していた、たわやかな白い襟足に軽くなった毛先が揺れる。
顔を覆う慣れない肩丈の髪をサッと軽く耳にかけ、涼し気に笑って見せたのは少年のような少女。昨日までの恵風と目の前にいる今の恵風、どちらも本人であるはずなのに、瑞月の中でそれが追いつかない。
「思い切ったね どうしちゃったの?」
「これはね中学生のころから計画してたんだ」
「計画?」
「ヘアドネーションって知ってる?」
仕草に少女らしさがなく、お転婆を注意することもしばしば。いつも笑ってあしらわれ、またお転婆の繰り返し。飾りのない幼さ残る振る舞いは、ふたりの時によく姿を現す。いつも自分には自然体。けれど時おり見せる少女らしさに、自分を丸ごと奪われたように振り回される日々。それが髪を切り、年齢も性別も中和されたように映る。
まだ幼かった日の彷彿を誘うけれど、昔に戻ったわけではない。
カラダもきっと成長の途中。自分より小さくてか弱く頼りなくて、いつも守っていたくなる。本当は守られてるのはいつも自分の方かもしれないのに。
全てが愛しくて愛しくて、好きで好きでずっと好き。
それはきっと一生変わらないもの。
「そんな素敵なことずっと考えてたんだー すごいよエッちゃん」
「えへっ」
少し抱き寄せただけで、それは苦しいほど。欲しくて欲しくて全身の血液と酸素がどこかに奪われてしまったように頭がクラクラとし、他に何も考えることができなくなる。
すっかり大きくなった切望の陰で小さくなって行くのは、生きてる世界に置かれた、自分たちの位置。
何の邪魔もない、ふたりだけになった世界にいるような心地は、若過ぎるふたりの大切な約束ごとまで忘れさせてしまいそうだ。
けれど
「ま、まって……!」
普段性差を感じない友だちから時々男になる友だちに、恵風はまだ戸惑いを感じる。自分の中に引かれているカーテンの奥に、飛び込んで行きたくなるのだ。
心は決まっていて、それは間違いないのに。
けれどなにかが引っかかり、知らない世界に進むことができない臆病が顔を覗かす。今のままが心地よいと感じるのは、自分ひとりが現実から逃げていることと薄々気付いている。ふたりで進んでいかなければならない風景が、目の前にあることに本当は気付いてるのに。
思い描いてたことなのに、邪魔をするその引っかかりとは何なのだろう。
そのひとつは
「……エッちゃん……言っておく」
「なに?」
「ミズキは……ちゃんと準備してるって……」
「準備って?」
「これ……」
その小さなものは、ふたりを隔てても唯一許されるものだ。目新しくてなにも知らなかった少し前の自分だったら、無邪気にお菓子と間違えてしまいそう。けれどそれは小さいけれど、それまで浸かっていた世界を一変してしまうほどの脅威から、唯一守ってくれる優れものとふたりはもう知っている。あるのとないのとでは雲泥の差と教えられ、そしてそれがすっかり当てはまる自分たちと理解している。
それは今のふたりにとって、絶対必要な行為の免罪符だ。
改めて思う。自分たちは男と女なのだと。時間をかけて作られたのは、カラダの外側だけではない。カラダの内側だってそう。
時は満ちているのかもしれない。混ざりあいを禁じられてるわけではない。
大切で愛しい友だちをカラダごと受け入れよう、受け入れたい与えたいと想いを馳せても構わない自然なことなのだ。
自然の流れに添い、誠意までを見せてくれた友だちに対して、自分はどう返せば良いのだろう。はね返すのは、それこそ不自然に感じる。そのまま自分も自然に預けるべきなのだろうか。
けれどこの恥ずかしさと未知への恐怖に似た感情を、拭い切るにははどうすれば良いのだろう。
そんな不安を、素直に言葉にしてみればどうか。自分たちはそんな関係であると、これまで築いてきたはずだ。
「ごめん……まだ……怖くて……」
「……ミズキも怖いって思うよ……でも……それ以上に君のことが好きで それで頭がいっぱいなんだ」
かつては自分もカラダごとで、好きな人と愛と情を育みたいと思っていた。それがいざとなるとどうしても勇気が出ない。勇気を後押しするものを自分の中から見つけたい。
それを誘い引き寄せなければならない。けれど自分ひとりでは難しい。ひとりではない場面が今押し寄せているというのに、この小さな矛盾の見え隠れはなんなのだろう。
ならば、大好きな友だちだけを見つめてみよう。これまでずっと自分だけをひたむきに見つめてくれていた友だちが、その解決の方法を教えてくれるかもしれないから。
「触ってみる?」
「なにを?」
「大丈夫 このまま……」
もっと好きな人を見つめて もっと
そして自分の中から感じて
「え……」
「怖がらないで」
もっと もっと
「エッちゃん……」
「俺だよ 全部ミズキだよ……」
そう言った自分の手を誘い合わせた友だちの手も、少しひんやりとしてる。
幾度も合わせた唇。その度に胸は震えていた。
大人までまだ数歩あっても大きくなったふたりは、小指を絡ませなくても大切な言葉は約束になる。
自分に向けられている眼差しを、心のどこからでも感じている。遊びも本気もふたりはちゃんと通じ合ってる。
まだふたりは未熟。先をいそいだって、まだ少年と少女であることは変わらない。
いそいで成熟させようとしなくていい。慌てたせいで、零してしまう大事なものがあるかもしれないから。育む時間は見えないくらいたくさんある。ゆっくりふたりであたためていくと良い。
いつか観た映像や早熟な子たちの経験の、後追いをしなくて良い。手ほどきを受けたわけではないけれど、そうしたくなる不思議なカラダは、ふたりの前にその道しるべがちゃんとできているから。
それまでのふたりを包んでいた景色が突然別のものとなり、拒絶されるわけではない。
瑞月は瑞月で、恵風は恵風だ。
いそがなくて良い。それでも
もっとお互いを知りたいと思うのなら、胸と胸を重ねお互いの鼓動を感じながら、幼い頃から見ている背中に手を回し、羽を探すように抱き合えば良い。
触れ合った肌の温度の違いを、分け合ってもかまわない。ひとりだったら絶対に知ることができないことが、ふたりならばできるのだ。
手を伸ばした先、名前を呼ばなくても心の行き先は、お互いと決まっているなら
大好きな人を一番やさしい気持ちで包み合う時が来たと感じるなら
それに素直になれば良い――
ゆっくり ゆっくりでいい
慌てないで 焦らないで
大好きな人がこんなに近くにいる
それを全身で感じて
走りたくなっても大切な人を置いてけぼりにしないで
一緒に ずっと一緒に
今はまだ危なかしいけど、いつかふたりだけのものになるから
気持ちが溢れてカラダからも溢れ出す
大きな手 好き 小さな手 好き
わたしのいちばん好きなひと
わたしのことをいつも見ていてくれるひと
君のことがずっと好き
ずっとずっと好き
わたしも
おれも
全部好き ずっと 好き
いつまでも いつまでも 一緒にいたい
一緒にいようね
聴こえているもの、見えている世界、色彩、温度、自分を取り巻く全てのことが、今自分の胸にあるものだけとなっていた。
不意に頬を伝った雫を指でやさしく受け取った、目の前の想い人は語る瞳で自分を見つめる。その一滴はきっと数年の想いを溢れさせたもの。
「ん?はは……それより君は大丈夫?どこも何ともない?正直にミズキに教えて」
理想の甘美さは現実にはまだ遠くて。
けれど大切な人を一番に想うのは、いつも誰にも何にも負けないし譲らないから。
それを知ってるのも、そして同じ気持ちなのも、やっぱり最高の友だち。
「ミズキ……大好きだよ」
忘れない。絶対に忘れない。
この時間とこれまでの出来ごとや風景を。
それはきっとかつて少年と少女だった自分たちの、これから先のふたりの大切な宝物になる。
その宝物はどんどん どんどん増えて
溢れるほどに。
恵風が数年かけ伸ばしていた髪を切った、ある晴れた日の初冬の午後。
広い世界の中から見るふたりはほんの小さな粒のような存在で、そして普通にいるただの高校生。
けれども今日ふたりにとっては、誰よりも何よりも世界で1番の素敵な日。○月✕日。
雪のように溶けて消えてしまう前に、言葉にして伝えよう。
もう知ってる。
知ってるけれど、とってもやさしくて暖かくなる不思議な言葉。
「俺も君のこと大好きだよ ずっとずっと」
不安で震える胸を覆う、それが窮屈に感じたなら、これからはいつも自分が――
窮屈なブラは僕がはずしてあげる
ずっとハートのハダカで抱きあいたい
昔は落ち葉の下に出来ている霜柱を、サクサクと脆く崩れて行く感覚が楽しくて、踏みながら登校していたものだ。
ゆったりと午前を過ごした自宅を出て、すっかり真上に日が上った休日の午後。
昨日までの賑やかだった秋色の街路樹は、昨夜の強風ですっかり枝をカラにさせ、代わりに地面をカラフルにさせていた。
日陰を歩くと出来る地面に残す濡れた自分の足跡は、もうすっかりあの頃のものとは違う。
少し感傷的なのは目の前の景色を見て、昨日までの景色を思い出すからなのかもしれない。
「わあ!あれっ!」
「あはっおかしい?」
「ううん……ううん!全然おかしくないよ似合ってる……なんか……昔のエッちゃんに戻ったみたい」
ちょうど鳥海家の玄関を、日差しが直射する時間。小春日和に包まれ眩しそうに目を細ませ姿を見せたのは、昨日までの恵風と違う恵風だった。目を細めた恵風と対照的に瑞月はまるで顔いっぱいに大きくした目で、恵風からもう離せないでいる。
出迎えに履いたつっかけを脱ぎながら、瑞月の視線を照れ臭そうに逸らす。それまで長い髪が隠していた、たわやかな白い襟足に軽くなった毛先が揺れる。
顔を覆う慣れない肩丈の髪をサッと軽く耳にかけ、涼し気に笑って見せたのは少年のような少女。昨日までの恵風と目の前にいる今の恵風、どちらも本人であるはずなのに、瑞月の中でそれが追いつかない。
「思い切ったね どうしちゃったの?」
「これはね中学生のころから計画してたんだ」
「計画?」
「ヘアドネーションって知ってる?」
仕草に少女らしさがなく、お転婆を注意することもしばしば。いつも笑ってあしらわれ、またお転婆の繰り返し。飾りのない幼さ残る振る舞いは、ふたりの時によく姿を現す。いつも自分には自然体。けれど時おり見せる少女らしさに、自分を丸ごと奪われたように振り回される日々。それが髪を切り、年齢も性別も中和されたように映る。
まだ幼かった日の彷彿を誘うけれど、昔に戻ったわけではない。
カラダもきっと成長の途中。自分より小さくてか弱く頼りなくて、いつも守っていたくなる。本当は守られてるのはいつも自分の方かもしれないのに。
全てが愛しくて愛しくて、好きで好きでずっと好き。
それはきっと一生変わらないもの。
「そんな素敵なことずっと考えてたんだー すごいよエッちゃん」
「えへっ」
少し抱き寄せただけで、それは苦しいほど。欲しくて欲しくて全身の血液と酸素がどこかに奪われてしまったように頭がクラクラとし、他に何も考えることができなくなる。
すっかり大きくなった切望の陰で小さくなって行くのは、生きてる世界に置かれた、自分たちの位置。
何の邪魔もない、ふたりだけになった世界にいるような心地は、若過ぎるふたりの大切な約束ごとまで忘れさせてしまいそうだ。
けれど
「ま、まって……!」
普段性差を感じない友だちから時々男になる友だちに、恵風はまだ戸惑いを感じる。自分の中に引かれているカーテンの奥に、飛び込んで行きたくなるのだ。
心は決まっていて、それは間違いないのに。
けれどなにかが引っかかり、知らない世界に進むことができない臆病が顔を覗かす。今のままが心地よいと感じるのは、自分ひとりが現実から逃げていることと薄々気付いている。ふたりで進んでいかなければならない風景が、目の前にあることに本当は気付いてるのに。
思い描いてたことなのに、邪魔をするその引っかかりとは何なのだろう。
そのひとつは
「……エッちゃん……言っておく」
「なに?」
「ミズキは……ちゃんと準備してるって……」
「準備って?」
「これ……」
その小さなものは、ふたりを隔てても唯一許されるものだ。目新しくてなにも知らなかった少し前の自分だったら、無邪気にお菓子と間違えてしまいそう。けれどそれは小さいけれど、それまで浸かっていた世界を一変してしまうほどの脅威から、唯一守ってくれる優れものとふたりはもう知っている。あるのとないのとでは雲泥の差と教えられ、そしてそれがすっかり当てはまる自分たちと理解している。
それは今のふたりにとって、絶対必要な行為の免罪符だ。
改めて思う。自分たちは男と女なのだと。時間をかけて作られたのは、カラダの外側だけではない。カラダの内側だってそう。
時は満ちているのかもしれない。混ざりあいを禁じられてるわけではない。
大切で愛しい友だちをカラダごと受け入れよう、受け入れたい与えたいと想いを馳せても構わない自然なことなのだ。
自然の流れに添い、誠意までを見せてくれた友だちに対して、自分はどう返せば良いのだろう。はね返すのは、それこそ不自然に感じる。そのまま自分も自然に預けるべきなのだろうか。
けれどこの恥ずかしさと未知への恐怖に似た感情を、拭い切るにははどうすれば良いのだろう。
そんな不安を、素直に言葉にしてみればどうか。自分たちはそんな関係であると、これまで築いてきたはずだ。
「ごめん……まだ……怖くて……」
「……ミズキも怖いって思うよ……でも……それ以上に君のことが好きで それで頭がいっぱいなんだ」
かつては自分もカラダごとで、好きな人と愛と情を育みたいと思っていた。それがいざとなるとどうしても勇気が出ない。勇気を後押しするものを自分の中から見つけたい。
それを誘い引き寄せなければならない。けれど自分ひとりでは難しい。ひとりではない場面が今押し寄せているというのに、この小さな矛盾の見え隠れはなんなのだろう。
ならば、大好きな友だちだけを見つめてみよう。これまでずっと自分だけをひたむきに見つめてくれていた友だちが、その解決の方法を教えてくれるかもしれないから。
「触ってみる?」
「なにを?」
「大丈夫 このまま……」
もっと好きな人を見つめて もっと
そして自分の中から感じて
「え……」
「怖がらないで」
もっと もっと
「エッちゃん……」
「俺だよ 全部ミズキだよ……」
そう言った自分の手を誘い合わせた友だちの手も、少しひんやりとしてる。
幾度も合わせた唇。その度に胸は震えていた。
大人までまだ数歩あっても大きくなったふたりは、小指を絡ませなくても大切な言葉は約束になる。
自分に向けられている眼差しを、心のどこからでも感じている。遊びも本気もふたりはちゃんと通じ合ってる。
まだふたりは未熟。先をいそいだって、まだ少年と少女であることは変わらない。
いそいで成熟させようとしなくていい。慌てたせいで、零してしまう大事なものがあるかもしれないから。育む時間は見えないくらいたくさんある。ゆっくりふたりであたためていくと良い。
いつか観た映像や早熟な子たちの経験の、後追いをしなくて良い。手ほどきを受けたわけではないけれど、そうしたくなる不思議なカラダは、ふたりの前にその道しるべがちゃんとできているから。
それまでのふたりを包んでいた景色が突然別のものとなり、拒絶されるわけではない。
瑞月は瑞月で、恵風は恵風だ。
いそがなくて良い。それでも
もっとお互いを知りたいと思うのなら、胸と胸を重ねお互いの鼓動を感じながら、幼い頃から見ている背中に手を回し、羽を探すように抱き合えば良い。
触れ合った肌の温度の違いを、分け合ってもかまわない。ひとりだったら絶対に知ることができないことが、ふたりならばできるのだ。
手を伸ばした先、名前を呼ばなくても心の行き先は、お互いと決まっているなら
大好きな人を一番やさしい気持ちで包み合う時が来たと感じるなら
それに素直になれば良い――
ゆっくり ゆっくりでいい
慌てないで 焦らないで
大好きな人がこんなに近くにいる
それを全身で感じて
走りたくなっても大切な人を置いてけぼりにしないで
一緒に ずっと一緒に
今はまだ危なかしいけど、いつかふたりだけのものになるから
気持ちが溢れてカラダからも溢れ出す
大きな手 好き 小さな手 好き
わたしのいちばん好きなひと
わたしのことをいつも見ていてくれるひと
君のことがずっと好き
ずっとずっと好き
わたしも
おれも
全部好き ずっと 好き
いつまでも いつまでも 一緒にいたい
一緒にいようね
聴こえているもの、見えている世界、色彩、温度、自分を取り巻く全てのことが、今自分の胸にあるものだけとなっていた。
不意に頬を伝った雫を指でやさしく受け取った、目の前の想い人は語る瞳で自分を見つめる。その一滴はきっと数年の想いを溢れさせたもの。
「ん?はは……それより君は大丈夫?どこも何ともない?正直にミズキに教えて」
理想の甘美さは現実にはまだ遠くて。
けれど大切な人を一番に想うのは、いつも誰にも何にも負けないし譲らないから。
それを知ってるのも、そして同じ気持ちなのも、やっぱり最高の友だち。
「ミズキ……大好きだよ」
忘れない。絶対に忘れない。
この時間とこれまでの出来ごとや風景を。
それはきっとかつて少年と少女だった自分たちの、これから先のふたりの大切な宝物になる。
その宝物はどんどん どんどん増えて
溢れるほどに。
恵風が数年かけ伸ばしていた髪を切った、ある晴れた日の初冬の午後。
広い世界の中から見るふたりはほんの小さな粒のような存在で、そして普通にいるただの高校生。
けれども今日ふたりにとっては、誰よりも何よりも世界で1番の素敵な日。○月✕日。
雪のように溶けて消えてしまう前に、言葉にして伝えよう。
もう知ってる。
知ってるけれど、とってもやさしくて暖かくなる不思議な言葉。
「俺も君のこと大好きだよ ずっとずっと」
不安で震える胸を覆う、それが窮屈に感じたなら、これからはいつも自分が――
窮屈なブラは僕がはずしてあげる
ずっとハートのハダカで抱きあいたい
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