Cutie Skip ★

月琴そう🌱*

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第二十七話  ステキなハイ・ランデー

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 近頃友人Nの機嫌が微妙だ。それはあからさまな態度ではなく、薄い憂いた空気を感じる程度である。その様は彼の魅力を引き出す作用にもなっており、同じオトコでありながら自分にはないものだと、瑞月は思わず見入ってしまっていた。気怠そうな表情や仕草が、性を無にした艶に映るのだ。
その一方で彼の恋人のOも、様子がいつもと違う。Nの顔色伺うような様子が否めない。一体彼らはどうしてしまったのか。

 この一学年のフロアにおいて、それは同窓の顔よりも周知されていることであろう。その周知とは紛うことなき彼らのこと。
例えば、それを茶化す者が現れたとする。以前のように友の危機と馳せ参じる必要は今や要らない。彼らを密かに守護するFF外の輩がそこかしこから突然に現れ、愚民に向ける眼差し攻撃を食らわす。それは彼ら自身がことの内容を把握する前に繰り広げられる速さ。そして敵が怯むと同時、陰の守護者も散り消える。
彼らは孤独ではない。彼らはもう自分たちだけではない。”メクルメク世界”はすぐ隣にある世界。伝い広まったもはや全一年生が知る、彼らは恋人同士。
彼らの幸せは彼らだけのものではない。その幸せが欲しい者だけが手に入れることが出来る、そこはやさしい世界。(らしい)
 
 やさしい世界はまだ存在する。あの子が歩いているのを見ただけで、胸の鼓動が囃子始める。
自分たちの前方を歩いている恵風に気付いた3人。重苦しい鼠色の空間を、たちまち清涼感で入れ替えたように彼らには映る。恵風は自分たちにとって高校生活の象徴。恵風がいるのといないのとでは大違い。ああ今日もかわいい。大好きだ。

〈カクン〉

 障害物など見当たらない空間で、突然膝が抜けたように恵風はよろけた。そして何事もなかったように教室に入って行った。

「藤井、なんだ今のは」
「アッハッハッハ…… 笑っていいのかな……」

 その知識を役立てるいつかの時のためにと、瑞月はそれに関してはとても熱心に学んでいる。
完全なる当てずっぽうだが、瑞月は今のをこう推測する。

 恵風は今、ハイ・ランしたのだと――

良かったねエッちゃん ステキだよエッちゃん
ミズキは君のことがいつも大事だけど、昨日よりもその前よりももっと大事に思っているから。毎日毎日昨日よりも昨日よりもって、ずっとずっと永遠に。
地球も君のカラダも平和に回って、そしてミズキも一緒に回る。とっても幸せ。

 先ほどの鼠色は浄化され、ハートが空に向かって飛び続ける夢色の景色が瑞月には見えている。しかしその夢色の景色に、虹生のため息が吹き込んで来たのは寸刻の後。”藤井の変”は通常で、彼らには日常のこと。虹生のため息に反応したかのように、彼の恋人は突拍子もない提案を始めた。

「そ、そうだ虹生、今日は帰りに本屋に寄らないか?お前のヒイキにしている雑誌の発売日だろう 今、思い出したよ ヨカッタ~忘れてそのまま帰る所だったな」

 それに反応することもなく、虹生はそっぽを向く。

「……ねえねえ君たち最近どうしたの?俺の気のせい?ケンカしてるの?ナナくん、オータくんをいじめてるわけじゃないよねえダメだよいじめたら」

「人聞きのワルイこと言うなよ藤井 オレは”オトコ”になりたいだけだ!旺汰!オマエがいつまでもグズグズしてるから藤井にヘンな誤解をされるんだ」

「そっそんなこと言ったって……まあまあチョット落ち着こう虹生こんなトコロでする話でもないし な?な?……ハハッハハハ……」
「ケッ臆病モノめ」

「ケンカはだめだよお~」

『・・・・・』←旺汰、虹生

「旺汰、今ちょっと、オレ思いついたことがあるんだけど」
「俺もだ もしも同じならそれにはちょっと問題があるぞ?」
「ユイヒか」
「やはり同じことを……ま、一応本人に聞いてみようか なんせ、俺たちはトモダチだからなクスッ」
「だな!クスッ」

「あのさあ フジイ……」
「ちょっと聞くけどいいか?」
「もしも良かったら……なんだけどさ……」
「あ、ユイヒもいた方がいいって言うなら、そうしてもいい お前の為にもなるだろう」
「なに?」

『 おれたちとセックスしてみない? 』

「 ―― え? 」

 小さな気がかりは思いもよらないものだった。せっかくの瑞月のハートモードがダウンされてしまった。 
(ドコが俺の為になるって!?!?マッタク・・トンでもない話だ!まだエッちゃんからも誘われたことがないというのに!)
心外な出来事は自身の伸び悩みにも結びついてしまう。そこに彼らは関係ないが今の衝撃の償いとして、八つ当たりのひとつでも与えておかないと気が収まらない。

「俺の生まれ持った愛は彼女だけのもの 君たちと遊びでなんて以ての外だし、踏み入れるべき世界とも思えない  第一俺を君たちの問題のダシに使おうなんて、間違っている 君たちで解決してくれ こんなこと、冗談でもご遠慮願うよマッタク ま、しかし、それ以外で俺で良ければ相談に乗るよ」

 近頃感じていた気掛かりは、少々の疲労を伴いつつ解消された。

 ――そうか……君たちに変化が訪れているんだね
 ・・・そうか……オトコ同士って、そんな方法もあるのか…… 
 へーー・・・(メクルメク世界とは言ったもんだ)

 彼らでも普通に悩みはあり、一言悩みとは言っても長い年月を共にした彼らだからこその趣きがある。
そんな彼らに挟まり青春の一時を共に過ごせる自分は、少々の問題込みでも手放したくない幸せだと瑞月は考えている。
何のかんのと仲の良いふたりを見ながら、ふいに恵風がいつか言ったことが頭に過った。

「自分のカラダのこともちゃんと分かってないのに」

 けれどその謎を超える不思議を、自分たちはすでに知っている。それはただ目が合っただけや、手を繋いだ時や、愛しいひとをただ胸に思い出しただけでも、その答えを見つけることができる。
ただそれに任せきってしまうのは、恵風の言った通りとても危険だ。愛しい人は自分とは違う、繊細なリスクを伴う性。乱暴な真似はご法度。
いつか待望の時を迎え、それをふたりの最高の出来事に、そしてその先毎日とは言わずとも、日常化したいと考えるのならばなお、本能に任せた状態ではいけない。
その計画に近づくための瑞月の向学心は止まることを知らない。今はその鍛錬の時。焦らなくて良い。と、自身の褌を締め直した。

🌱

 駅舎から自宅までの通り沿いにある、ススキ野原の脇をひとりで歩く。この後自宅で着替えを済ませ、バイトに向かう。今日は恵風を残して先に下校した。
昔はもっと広くてススキも高かったはず……。
薄ら寂しく感じるのは、時間の流れに沿った自分の変化なのだろうか。恵風がいないから。なのかもしれない。
どこからともなく聞こえてくる、ススキ野原の奥から聴こえるこどものはしゃぎ声を聞きながら思い出す風景があった。

「モウ!ミズキキライ!!」

 強い光に負けて、輪郭がぼやけたような景色が瞳の中に映る。投げつけられた言葉とその時の風景が自分の中に残るだけで、原因はもう覚えていない。些細なことでケンカになるのは珍しくはなかった。けれど泣いて走って自分の元を離れて行ってしまったのは、ケンカの原因より衝撃だった。
後味の悪さを次の日に持ち込むほど、自分はまだ強くない。ちゃんと謝ろうと、帰宅したあといつもと同じに鳥海家にすっ飛んで行った。
玄関に現れたのは、結日ひとり。いつもの鳥海家と違い、まるで他に誰もいないみたいに家の中はシンとしている。普段粗雑な態度の結日もおとなしい。
他の気配を感じない静けさは、自分がどれだけ恵風を怒らせてしまったのかと、余計に不安を募らせた。
結日は静かに「上がれよ」とだけ言った。いつもならば

「瑞月おっせえぞ 時間なくなる早く!」

 と瑞月が靴を脱いで揃えてる間も待ち切れずに、けたたましく自分の部屋に向かって行く。結日の頭の中にあるのは、早く攻略したいステージのこと。その日はいつもと違って、結日の部屋には行かず居間に通された。

「こんにちはお邪魔しま…」「俺ひとりだ」

 いつもなら彼らの母親がいるはずなのが、出掛けているのか姿がなかった。
ダイニングテーブルの上には、そこにいたのが分かるように裁縫道具が使いかけの状態、座っていたらしい斜めになってる椅子には膝掛けが置かれていた。

「帰って来てすぐ母さんと病院行った アイツ熱あったみたい……だから……」

 結日はキッチンから、ポケッと突っ立ったままでいる瑞月に向かって話をする。そして

「食うか?」

 唐突に瑞月に向けた結日の手には、包まれるようにタマゴがあった。
帰宅後すぐに結日が作ったのだろう、手渡されたそれは茹でて水に浸してからまだ時間が浅いようにほんのりと温かった。
殻を剥きながらついさっきの出来事が離れないままでいる。
結日がくれたユデタマゴはとてもおいしかった。ブッキラボウな結日のもてなしがとても嬉しかった。さっきの言いかけは体調が悪かったせいのこと。だから気にするな。そう言ったように瑞月には聞こえ、そしておいしくて嬉しくて瑞月は泣いた。

「泣くほど美味いかバカヤロウ」
「う”ん”」

 瑞月がどうして泣いているのか、結日は分かっている。本当は口に出すのが恥ずかしいと思っている自分の気持ちと、瑞月を思っているやさしさが混ざった照れ隠しとすぐにバレるクチの悪さにいつも瑞月は慰められていた。
そんな結日に比べて、瑞月はいつも何の捻りもないストレートでダイレクト。

「結日はやさしいね」
「バカヤロウ おかわりあるぞ 塩、足りっか?……恵風に言っておくから泣くな」
「う”ん” ありがとう結日」
「食ったら遊ぶぞ もうお前は大丈夫だ」
「う”ん”!」

 照れ隠しの時の結日の独特な発音は棒読みに聞こえても、いつも不思議な温度を感じていた。それはきっと付き合いの浅い者には分からない、隠した結日のやさしさだ。
その頃の結日が唯一自分で出来るもてなしが、”ユデタマゴ”だったのだろう。それを受け取ることが出来た自分は、やっぱり幸せ者。結日と友だちで良かったと、瑞月は改めて思った。

「藤井、少し遠慮しろよ」
「え?」

 ボンヤリしてる恵風の髪を、背中に撫で直しただけ。それは瑞月が普段のふたりを見てて感じてたことと同じなのかもしれない。
友だちの脇をちょっと擽るイタズラや、片足立ちしてる時に支え合ってるような何でもない風景。わざわざ目を止めて見てしまうことではない。けれどそのありふれた風景の中のふたりに、特別な空気があるのだ。

 ふたりで同じものを見ている、ただそれだけなのに。彼が彼のことを見ている、ただそれだけなのに。ふたりの視線が合わさって、会話もしてないのにふたりの世界が出来ていて、それはふたりでひとつのタマゴを守りあたため合っているような。ふたりだけの大切なタマゴが、そこにあるんだと感じる。目に見えるものではないけれど、ふたりにはきっとある。

 ふたりのその見えないタマゴが、この先どう変わって行くのか楽しみに思う。時々聞こえて来る笑えない冗談は、ふたりの“惚気"のようなものなのだろう。
”ふたりだけのことにしておくのが、勿体ないくらいすごく素敵なことなんだ だから教えてあげる”
咄嗟に拒絶をしてしまったけれど、もしかしたらそれは結日が瑞月にくれた”ユデタマゴ”のようなものなのかもしれない。 
ふたりのタマゴがどう孵るのか楽しみで、それをずっと見守って行きたいと瑞月は思う。

🌱

 学校帰り、時々寄り道していた自分たちをすっぽり隠してしまう背丈よりも高いススキと、いつ抜け出せるのか心配になるほど広く感じた原っぱは、今では記憶だけの存在。
この前踏んで倒したススキの道はどこだったっけ?掻き分け進む。ふたりだけの時に、よく通っていたヒミツの迷路。
ススキの迷路を抜け出て、開けた風景が見慣れたものでもそこがゴール。
いつもスカした顔でいる友だちは、自分の一番の友だち。鼻に乗ったソバカスは、もうひとりの一番の友だちとお揃い。どうしてもそこに目が行ってしまうのを、許してほしい。
いつもスカした顔をしている友だち。そんな顔をしながら、だけど彼の言葉はいつもあたたかい。
ススキと一緒に風と流れてる、サラサラの友だちのオカッパ頭。素直に流れるけど邪魔するものを自分に近付けない、その強さがいつも羨ましいと思う。

「昨日のアレなあ」
「ん?」
「残り全部恵風に食われた だから……」
「ゆで卵のこと?」
「ウチに来い!きっと恵風の熱は下がったぞ!早く!早くだ トットと遊ぶぞ瑞月!!」

「!…う、うん分かった すぐ行くよ」
「モタモタすんなよ!したらな!!」

 忘れてない。忘れるなんてことはない。だって、大事なタマゴだから。
昔、友だちが分けてくれたあたたかいタマゴは、きっとちゃんと自分の中で孵ってる。
そして――
自分が渡した大事なタマゴは、今はあの子が大切に持っている。
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