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第二十五話 エッちゃんがいっぱい(ボクタチの昆虫採取N&O)
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彼とは昔からの知り合いのような、初めて会ったとは思えない不思議な親近感があった。それはきっと、愛しのあの子のせい。
あの子もこんな風に笑うのかな。そんな仕草をするのだろうか。
彼の表情が、あの子とかぶって見える。それは隣りの虹生も同じようだ。彼はこの会合で
「エッちゃんが好きだ……旺汰もだ」
と、よく言う。会話中、発作的にそれは現れ、それを理解できるのはおそらく俺……。
なぜかここに来ると、自分の色々が緩む気がするのだ。
「俺もだ……もちろん虹生のことを忘れたわけではない」
それまでの会話からどう辿っても筋道が通らない場面であっても、そう言いたくなる。
これは彼女のマジックか?
……もしかしたら彼のマジックかもしれない。
「バカヤロウめ ふたり揃って俺に言うか?プッ……恵風に言っておく……ザワッ」
自分の為にあの子が姿を変え、ここに来てくれたのではの夢物語を紡ぐ。
脳が誤作動を起こしたとは思いたくない。誰にも知られてはいけない、秘密の物語。きっときっと、あの子のせい。
恍惚する胸はやがて、酸素をいくら吸ってもまだ足りない鐘を鳴らし始める。君の前ではただ眩しくて、目を凝らしてばかりの自分。君を近くで感じていたはずが、幻だったように自分の元からいなくなってしまう切ない毎日。けれど、不確かなのは同じでも今は違う。
それがまた楽しみで、”ヤローの会合”はよほどのことがない限り欠席はしない。(したことがない)
だが、当たり前と言っちゃあ当たり前だが、そんな目で彼を見てはいけない。(顔にも出してはいけない)彼に失礼だろう。なあ、虹生……
「ユカリだ……ユカリに違いねえお前ら!……やっぱやめとこプッ」
彼らの声を耳に入れながら直射する夕日に眠気を誘われ、先日の出来事をやや興奮気味で語る虹生の隣りで、ウッカリ別のことを考えていた。
フワフワを破裂させるような言葉が突然聞こえ、ハッと我に返った。
不気味な響きを含んだ忍び笑いで締め括った彼は、落ち合ったこのハンバーガーショップを訪れた時と同じ顔をして電車の時間が来たと出て行った。放課後の空腹は満たされたが、何やら穏やかではない予感がしたのは自分だけではなかった。
「旺汰……」
「う、うん」
トレーに乗った紙くずをダストボックスに突っ込み、俺たちもそこを後にした。
翌日――
「へえ~君たち会ってんだ」
「うん たまにね 向こうから連絡来たり、コッチから誘ったり」
「へ~」
「藤井はいないのかって、彼いっつも言ってるよ 寂しいんだよきっと」
「えっ俺はいいよお」
「アッハッハッハッハッハッ…」
「ところで藤井、”ユカリ”ってヤツのことだが…」
「ほら、この前ユイヒの話に出て来てたヤツ」
「ソイツがどうしたの?」
「……いや……いいか……」
「なあにどうしたの?」
「もしかしたらだけど……」
「オレたちソイツを見たんだ」
「え!」
「まあ……分かんないけどな」
そう、分からない。
話しか知らないそんなヤツのことを、なぜ俺たちはソイツだと思ったのか
きっと藤井は不思議に思ったに違いない。
俺たちでさえ、これもまた不確かなことなのだから。
「ユイヒじゃない……オレはユイヒに言いたいんじゃない……なのになんで……言うなら本人に言うのがオトコだ!」
会合後、虹生はよくこれを言う。何のことを言っているのか分かる。俺自身も同じことを思っているからだ。
なぜこうなってしまうのか不思議だ。その不思議に挟まれつつ、俺たちの関係が良好であるのは、お互いを信じている他にないだろう。
🌱
ヤローの会毎に訪れるこの不思議現象とは違うが、誰にでも自分の胸に納めておけば良い言葉を、ついうっかり声に出してしまったりすることがあるだろう。しかし頻繁にそれがあると、トラブルの元になったりもするから注意が必要だ。彼の場合聞かれてしまうその大体は、自分の最愛の人虹生である。今もそれをやってしまい、ふたりは稲妻にあたったような顔で見合っている。
事の起こり、それは先日のこと――
「あ!」
「なに?エッちゃん」
その日彼を待ち受けていたのは”ウキウキハッピーデー”だった。虹生は思い入れのあるマンガの発売日で旺汰を待たずに早々下校。そして瑞月はバイト。委員会を終え、バス時間までのささやかな時をふたりは過ごした。
夕日の照りつけが濃くなって来た頃ふたりは教室を後にし、旺汰のC組での瑞月の話に笑いながらバス停に向かった。その時ふと、恵風が別のものに意識を逸らした時があった。校門付近の茂みに恵風は屈んで手を差し出し、するとそこで休んでいた昆虫が恵風の手に乗って来たのだ。
「え…すごい……」
「逃げちゃうコが殆どだけど、時々こうやって来てくれるコもいるんだよ このコは……キリギリスかなかわいいね!」
いつか瑞月に渡しそびれた恵風への熱を旺汰は思い出す。自分の中にはそれがまだ種火のように残っているのだ。いつまたそれがオノレを焦がすのかは、自身でさえも分からない。
『あ!』
捕まえたキリギリスが恵風の手元から跳ね、旺汰の胸に張り付いた。
「わあ!オータくん草色のブローチ付けてるみたいになっちゃったね!似合ってる! ああんバス来ちゃった……オータくん、そのコをどこかに放しておいてね じゃあねバイバーイ!」
🌱
彼女に手を振り、バスの姿はもうどこにもないのに。俺は一体どのくらいそこに立っていたのか……。乗車のためにここにやって来た者たちからの、熱い視線の洗礼を受けて我を取り戻した。
けれどそんなことはどうってことはない。彼女からの”オネツ”は自分の胸に残ったまま・・・。
彼女から受け取ったその小さな生き物を、バス待ちの野蛮な輩に痛めつけられないようにとそっとそこから離れた。(俺はバスに乗らん)
やはり俺はエッちゃんのことが好きだと改めて思う。
空き地の脇を通る度に、ここはいいぞ。ここも良さそうだぞ。と自分の胸に語りながら家に着いてしまった。この短い時間の間でずっと自分の胸にくっ付いたままのコに、情が湧いてしまったらしい。虫に対してこんな感情を抱くのは初めてだ。きっとこれも彼女のマジックだろう。
物置から昔使ってそのまましまわれていた虫ケースを出し、その中にこの小さな命と少しの野菜を入れ机の上にそれを置いた。起動させたパソコンの画面と交互に見てやっとこの虫の正体が分かった。
そしてメスだということも分かった。・・・
よし、このコの名前は エ ッ ち ゃ ん にしよう!!
それから”エッちゃん”と俺の生活が始まった。なんてかわいいんだ 俺のエッちゃん(クスクスクス)
今まで昆虫と接して来なかったわけではない。けれどこんなに自分の至近距離に置いたのは初めてだ。俺のエッちゃんはどうやら夜行性らしく、俺が帰宅する頃から活動を開始する。そして慣れて来た頃、彼女は俺のそばまで来てくれるようになった。虫が人間に懐くなんてことがあるのか知らないが、
それはまるで――
「オータくんおかえり 私もさっき起きた所なの」
と言ってるようだ。
彼女を机の上に置いたままでいた。俺が彼女を見ているように、彼女も俺を見ている。そして嬉しそうに触覚を動かすんだ。
君のことはちゃんと俺がお世話してあげるからね!大丈夫、安心して!
((エッちゃん かわいいね))
((オータくんスキ……))
プーーッ クスクスクス……
まるで俺たちは心を通い合わせているようさ。俺がケースを覗くようにすると、彼女はそばに来てくれる。
ああ・・・なんてかわいいんだ 俺のエッちゃん。
こんな、俺だけのエッちゃんがいるなんてことは虹生にはナイショだ。
それがあの日――
「わーどうしたんだ旺汰 へーこんな趣味あったっけ?」
虹生が虫ケースに手を伸ばしたその時――
「やめろ!! エ ッ ち ゃ ん が驚いて死んでしまう!! ・・・」
と いうわけだ。そして言われた。
「キッッッ モッッッ !! 」
キモ過ぎて、もはや他言出来ないレベルだそうだ。
そんなまで言うな。 だって虹生……だって……虹生……!!
俺のエッちゃんは、こんなにかわいいんだぞーー!!
「エッちゃんはかわいいけど……」
けどってなんだ虹生
「旺汰…… 大丈夫か?」
なんだその心配は
「俺は至って健康だ」
このやろう この気持ちをお前に理解させるつもりはなかったけどな
「今度の休みは晴れたら月琴公園に行こうと思ってる」
「なんで?」
「”俺”を見つけに行くんだ この子……”俺のエッちゃん”の為に……この子は女の子だ」
「!!」←ナナオ
俺の思い付きが、彼のスイッチオンになるとは思いもしなかった。
それまで”キモいキモい”しか言わないでいた彼は、急に噴火した火山の火柱のように立ち上がりこう言った。
「ズルイぞ!旺汰!!」
そして休みの日、俺たちは揃って虫がたくさんいると思われる月琴公園に向かった。無垢な童心を、後悔に変えてしまった大人にはなりたくないんだ。
「虹生、なんだその虫ケースは」
「オレもオレだけの”エッちゃん”を見つけるんだ!そしてオレも!!」
ふう やれやれ。俺も大概だが、お前も相当だぞ。まあ仕方ない。これが彼女の”マジック”なのだから。
彼女は藤井だけのものではない。こんな考えはキケンかな……。
彼女だけではない。俺や虹生、藤井だってそうだ。みんな誰のものでもない。
藤井から彼女を奪い取ろうとしているわけではない。虹生への熱が冷めたわけでもない。自然に生まれた自分の気持ちを大事にしたい。
大事にしていいと、彼女が許した。
その気持ちを理解してくれる仲間がいるこの環境が、とても居心地が良くて幸せだと思う。
自然にそうなったことを彼女は受け入れ、彼はそれをまるごと許した。
自然に身を預けるということは、自分の中の醜い願望が削ぎ落とされるということだ。あんな無垢な瞳の前では欲の行き先しか考えない自分は酷く醜く感じ、彼女に近付く権利を持たなくなってしまうように思う。
もしも俺が乱暴を働こうものなら、彼はそれを絶対に許さない。
そして俺はこの居心地の良い場所を、失うことになるだろう。
彼女のマジックは偉大だ。彼女がそこかしこに、俺の周りにもいると感じるようになる。
風が静かに気持ちよく自分のそばを流れたら、それは彼女だし。木漏れ日の中のどこかから鳥の囀りが聞こえたら、彼女のぬくもりを感じる。
穏やかな晴れの日に、君がどこかで笑っているのを思い浮かべる。いつもいつもそう思い、この世界で一緒に生きている。そんな心地よい幸せを感じる。
ふと虹生と目が合って、ふたりで理由もなく笑い合う。それは以前とは違った温度があるから不思議だ。
彼女は藤井のことが好きだけど、虹生も彼女のことが好きで俺も彼女のことが好きだ。それをダメだというヤツはいない。慈しむ瞳で彼女を見ている虹生を見ると、ああ今日も世界はあたたかい……そう感じる。
他の者にはちょっと理解し難い関係であると、自分でも思う。それを理解するには、やはりマジックに掛かるのが一番ということだ。
「 ……ちゃん ……えふうちゃん…… 」
虫採りに夢中になっていた俺たちは、ふたりして同時に同じものに目を向けた。それまではちらほら見える人影には興味がなかった。目的とは全然違う。
モンシロチョウが彼の周りをヒラヒラと飛んでいた。それはまるで懐かれているような、操っているようにも見えた。
彼の足元には空の虫ケース。飼っていた蝶を孵化させ、ここに放しに来たのだろうか。
モンシロチョウのヒラヒラとした白い羽と同じように、彼のシャツも風に揺らいでいた。
風が運んできた彼の声に、俺たちのそれまでの驚喜が止んでしまった。
聞こえた……気のせい?聞き違い?彼は何て言ってた?
虹生も答えを知りたい表情で、俺の顔を見ていた。
その週明け、ユイヒと会う約束をしていた俺たちはその話をした。
それを聞きすぐに
「それは”ユカリ”だ」と彼は言った。
”恵風”という名前はそうそう聞かない。ただの偶然なのかもしれない。けれど頭に浮かぶのは、こればかり。
聞き違いじゃなければその”ユカリ”かもしれないヤツは、エッちゃんの名前を呼んでいたのでは……。
もしもそうであればそれは大変だ。虹生に自分が言われた”キモい”のどれほどかを、そこで改めて知った。
「なるほどそれは非常にキモい」
「だろう?”さすが”と”ヤバイ”が一挙同時公開の最高のキモさだった」
「お前もヒトのこと言えないよな?」
「……」
虹生も自分の机の上に、”エッちゃんとナナオ”がいた。藤井は知らない、俺たちだけの秘密だ。その秘密は時が来れば交尾をし、やがて愛の結晶をこの世に産み落としてくれる……クスクスクス
それはさておき――
《 ユカリ・・・ 》
なんて身震いを誘う響きなんだ 良いのか悪いのか、彼女はこの”ユカリ”のことを
「う~んどんな子だったか思い出せないの 一緒にバッタを捕まえてくれた男の子がいたのは覚えているんだけどね」
彼女は以前、このユカリというオトコと会ったことがあるらしいが、捕まえたバッタを残しその時一緒にいたらしいユカリの記憶は、彼女の中には残っていないようだった。
さすがエッちゃんだ。そんな君がまた愛おしく感じる。家に帰ったら、虹生と君への愛を語りながら愛も育もう。
虹…生……エッちゃんって……かわい いッ よな あッ
ぅっ……あっ……か……かわ い……いっ……あっ……
ナ……かわい…………
…………旺 タッ…………あッ……あ エッ……わいッい……
藤井が知ったら……いや、彼女が知ったら悲鳴を上げられるかもしれない。
俺たちは仲良しなんだ。それはお前たちにも分かっていることだろう。だから何てことはない……でも言わないでおく。な、虹生。
彼女のかわいさは、俺たちの熱にもなる。自分の肌を愛しい人に感じて欲しくなり、自分もまた愛しい人に触れたくなる。自然のことだろう。
君の肌を通った風が世界を回る
巡って運んで自然に還る命たち
熱かったり冷たかったり、それでも君は笑ってる
キライなものってある?って聞いたらきっと君は
う~ん 何だっけ?
って言いそうだね
君がそこにいるだけで、君が世界で息づいている
どこにいても感じる 聞こえる 君の軽い足音と笑い声が
じゃあ好きなものは?って聞いたら
たくさんあるよ!
そう答えるのだろう
「聞いてくれよ”オレ”、食べられちゃった……ハッ!」
「なに?なんのゲーム?」
「そ、そうゲームなんだ……」
「へえナニナニ?俺にも教えてよ」
「いや、アレは藤井には向かないよ な、虹生」
「そ、そうだね……」
「?…」
藤井、お前は彼女のことだけ心配してればいい。
俺たちは俺たちのやり方で、彼女のことを愛すから。な… 虹生……
自分たちの見えない所で、何かが動き出しているのかもしれない。きっかけは誰も気にも止めない、小さなこと。
それを教えてくれたのは、もしかしたらあの小さな生き物だったかもしれない。彼女に自分の姿を見つけさせて、教えてくれたのかもしれない。
それが何か俺たちにとって良からぬことの始まりだったとしても、君を想う気持ちはずっと変わらないから。
君の温度と自然をいつも信じているから。誰かが君の名前をどこかで呼んでいても、それはそこかしこにいる君の気配を、ソイツも感じてるってこと。
俺が彼女の名前を付けたように、彼もただそうしていたのかもしれない。
知らないソイツのことが分かるような気がする。
君は俺たちが思いもしないことを連れて来たとしても、大切なトモダチであることは変わらない。
だから 大丈夫……。
ああ本当は、”俺”なんか捕まえなくたって良かったんだ。そんなふうに見つめられると、また君を胸に休ませながら出掛けたくなってしまう。
今日はどこの公園に行く?昔、俺たちが遊んだ秘密基地に君を連れて行ってあげようか?
こんな狭い所にいたんじゃ、きっと君は俺と同じものしか見ることが出来ない。そんな小さなカラダでも、きっと君にしか見ることが出来ないものを見つけて自分の好きな所に行くんだ。
君はいつもどんな景色を見てるのかな……
オータくん 今日も夕日がキレイだね
そうだね ”エッちゃん”
今は君と同じものが俺にも見えてる。君はどんな景色を見たい?
「虹生、今度の休み晴れだったらまた月琴公園に行こうと考えてるんだけど」
「なに?また捕まえに行くの?」
「いや…… 今度は……」
彼女から預かって最初に頼まれていた それをしなきゃ
”このコをどこかに放しておいて”
きっとあの子はきっと大丈夫。
あの子は簡単に不確かな者の手に乗ったりはしない。もしもの時は藤井がいる。ユイヒもいる。
そして俺たちもいるんだから。
あの子もこんな風に笑うのかな。そんな仕草をするのだろうか。
彼の表情が、あの子とかぶって見える。それは隣りの虹生も同じようだ。彼はこの会合で
「エッちゃんが好きだ……旺汰もだ」
と、よく言う。会話中、発作的にそれは現れ、それを理解できるのはおそらく俺……。
なぜかここに来ると、自分の色々が緩む気がするのだ。
「俺もだ……もちろん虹生のことを忘れたわけではない」
それまでの会話からどう辿っても筋道が通らない場面であっても、そう言いたくなる。
これは彼女のマジックか?
……もしかしたら彼のマジックかもしれない。
「バカヤロウめ ふたり揃って俺に言うか?プッ……恵風に言っておく……ザワッ」
自分の為にあの子が姿を変え、ここに来てくれたのではの夢物語を紡ぐ。
脳が誤作動を起こしたとは思いたくない。誰にも知られてはいけない、秘密の物語。きっときっと、あの子のせい。
恍惚する胸はやがて、酸素をいくら吸ってもまだ足りない鐘を鳴らし始める。君の前ではただ眩しくて、目を凝らしてばかりの自分。君を近くで感じていたはずが、幻だったように自分の元からいなくなってしまう切ない毎日。けれど、不確かなのは同じでも今は違う。
それがまた楽しみで、”ヤローの会合”はよほどのことがない限り欠席はしない。(したことがない)
だが、当たり前と言っちゃあ当たり前だが、そんな目で彼を見てはいけない。(顔にも出してはいけない)彼に失礼だろう。なあ、虹生……
「ユカリだ……ユカリに違いねえお前ら!……やっぱやめとこプッ」
彼らの声を耳に入れながら直射する夕日に眠気を誘われ、先日の出来事をやや興奮気味で語る虹生の隣りで、ウッカリ別のことを考えていた。
フワフワを破裂させるような言葉が突然聞こえ、ハッと我に返った。
不気味な響きを含んだ忍び笑いで締め括った彼は、落ち合ったこのハンバーガーショップを訪れた時と同じ顔をして電車の時間が来たと出て行った。放課後の空腹は満たされたが、何やら穏やかではない予感がしたのは自分だけではなかった。
「旺汰……」
「う、うん」
トレーに乗った紙くずをダストボックスに突っ込み、俺たちもそこを後にした。
翌日――
「へえ~君たち会ってんだ」
「うん たまにね 向こうから連絡来たり、コッチから誘ったり」
「へ~」
「藤井はいないのかって、彼いっつも言ってるよ 寂しいんだよきっと」
「えっ俺はいいよお」
「アッハッハッハッハッハッ…」
「ところで藤井、”ユカリ”ってヤツのことだが…」
「ほら、この前ユイヒの話に出て来てたヤツ」
「ソイツがどうしたの?」
「……いや……いいか……」
「なあにどうしたの?」
「もしかしたらだけど……」
「オレたちソイツを見たんだ」
「え!」
「まあ……分かんないけどな」
そう、分からない。
話しか知らないそんなヤツのことを、なぜ俺たちはソイツだと思ったのか
きっと藤井は不思議に思ったに違いない。
俺たちでさえ、これもまた不確かなことなのだから。
「ユイヒじゃない……オレはユイヒに言いたいんじゃない……なのになんで……言うなら本人に言うのがオトコだ!」
会合後、虹生はよくこれを言う。何のことを言っているのか分かる。俺自身も同じことを思っているからだ。
なぜこうなってしまうのか不思議だ。その不思議に挟まれつつ、俺たちの関係が良好であるのは、お互いを信じている他にないだろう。
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ヤローの会毎に訪れるこの不思議現象とは違うが、誰にでも自分の胸に納めておけば良い言葉を、ついうっかり声に出してしまったりすることがあるだろう。しかし頻繁にそれがあると、トラブルの元になったりもするから注意が必要だ。彼の場合聞かれてしまうその大体は、自分の最愛の人虹生である。今もそれをやってしまい、ふたりは稲妻にあたったような顔で見合っている。
事の起こり、それは先日のこと――
「あ!」
「なに?エッちゃん」
その日彼を待ち受けていたのは”ウキウキハッピーデー”だった。虹生は思い入れのあるマンガの発売日で旺汰を待たずに早々下校。そして瑞月はバイト。委員会を終え、バス時間までのささやかな時をふたりは過ごした。
夕日の照りつけが濃くなって来た頃ふたりは教室を後にし、旺汰のC組での瑞月の話に笑いながらバス停に向かった。その時ふと、恵風が別のものに意識を逸らした時があった。校門付近の茂みに恵風は屈んで手を差し出し、するとそこで休んでいた昆虫が恵風の手に乗って来たのだ。
「え…すごい……」
「逃げちゃうコが殆どだけど、時々こうやって来てくれるコもいるんだよ このコは……キリギリスかなかわいいね!」
いつか瑞月に渡しそびれた恵風への熱を旺汰は思い出す。自分の中にはそれがまだ種火のように残っているのだ。いつまたそれがオノレを焦がすのかは、自身でさえも分からない。
『あ!』
捕まえたキリギリスが恵風の手元から跳ね、旺汰の胸に張り付いた。
「わあ!オータくん草色のブローチ付けてるみたいになっちゃったね!似合ってる! ああんバス来ちゃった……オータくん、そのコをどこかに放しておいてね じゃあねバイバーイ!」
🌱
彼女に手を振り、バスの姿はもうどこにもないのに。俺は一体どのくらいそこに立っていたのか……。乗車のためにここにやって来た者たちからの、熱い視線の洗礼を受けて我を取り戻した。
けれどそんなことはどうってことはない。彼女からの”オネツ”は自分の胸に残ったまま・・・。
彼女から受け取ったその小さな生き物を、バス待ちの野蛮な輩に痛めつけられないようにとそっとそこから離れた。(俺はバスに乗らん)
やはり俺はエッちゃんのことが好きだと改めて思う。
空き地の脇を通る度に、ここはいいぞ。ここも良さそうだぞ。と自分の胸に語りながら家に着いてしまった。この短い時間の間でずっと自分の胸にくっ付いたままのコに、情が湧いてしまったらしい。虫に対してこんな感情を抱くのは初めてだ。きっとこれも彼女のマジックだろう。
物置から昔使ってそのまましまわれていた虫ケースを出し、その中にこの小さな命と少しの野菜を入れ机の上にそれを置いた。起動させたパソコンの画面と交互に見てやっとこの虫の正体が分かった。
そしてメスだということも分かった。・・・
よし、このコの名前は エ ッ ち ゃ ん にしよう!!
それから”エッちゃん”と俺の生活が始まった。なんてかわいいんだ 俺のエッちゃん(クスクスクス)
今まで昆虫と接して来なかったわけではない。けれどこんなに自分の至近距離に置いたのは初めてだ。俺のエッちゃんはどうやら夜行性らしく、俺が帰宅する頃から活動を開始する。そして慣れて来た頃、彼女は俺のそばまで来てくれるようになった。虫が人間に懐くなんてことがあるのか知らないが、
それはまるで――
「オータくんおかえり 私もさっき起きた所なの」
と言ってるようだ。
彼女を机の上に置いたままでいた。俺が彼女を見ているように、彼女も俺を見ている。そして嬉しそうに触覚を動かすんだ。
君のことはちゃんと俺がお世話してあげるからね!大丈夫、安心して!
((エッちゃん かわいいね))
((オータくんスキ……))
プーーッ クスクスクス……
まるで俺たちは心を通い合わせているようさ。俺がケースを覗くようにすると、彼女はそばに来てくれる。
ああ・・・なんてかわいいんだ 俺のエッちゃん。
こんな、俺だけのエッちゃんがいるなんてことは虹生にはナイショだ。
それがあの日――
「わーどうしたんだ旺汰 へーこんな趣味あったっけ?」
虹生が虫ケースに手を伸ばしたその時――
「やめろ!! エ ッ ち ゃ ん が驚いて死んでしまう!! ・・・」
と いうわけだ。そして言われた。
「キッッッ モッッッ !! 」
キモ過ぎて、もはや他言出来ないレベルだそうだ。
そんなまで言うな。 だって虹生……だって……虹生……!!
俺のエッちゃんは、こんなにかわいいんだぞーー!!
「エッちゃんはかわいいけど……」
けどってなんだ虹生
「旺汰…… 大丈夫か?」
なんだその心配は
「俺は至って健康だ」
このやろう この気持ちをお前に理解させるつもりはなかったけどな
「今度の休みは晴れたら月琴公園に行こうと思ってる」
「なんで?」
「”俺”を見つけに行くんだ この子……”俺のエッちゃん”の為に……この子は女の子だ」
「!!」←ナナオ
俺の思い付きが、彼のスイッチオンになるとは思いもしなかった。
それまで”キモいキモい”しか言わないでいた彼は、急に噴火した火山の火柱のように立ち上がりこう言った。
「ズルイぞ!旺汰!!」
そして休みの日、俺たちは揃って虫がたくさんいると思われる月琴公園に向かった。無垢な童心を、後悔に変えてしまった大人にはなりたくないんだ。
「虹生、なんだその虫ケースは」
「オレもオレだけの”エッちゃん”を見つけるんだ!そしてオレも!!」
ふう やれやれ。俺も大概だが、お前も相当だぞ。まあ仕方ない。これが彼女の”マジック”なのだから。
彼女は藤井だけのものではない。こんな考えはキケンかな……。
彼女だけではない。俺や虹生、藤井だってそうだ。みんな誰のものでもない。
藤井から彼女を奪い取ろうとしているわけではない。虹生への熱が冷めたわけでもない。自然に生まれた自分の気持ちを大事にしたい。
大事にしていいと、彼女が許した。
その気持ちを理解してくれる仲間がいるこの環境が、とても居心地が良くて幸せだと思う。
自然にそうなったことを彼女は受け入れ、彼はそれをまるごと許した。
自然に身を預けるということは、自分の中の醜い願望が削ぎ落とされるということだ。あんな無垢な瞳の前では欲の行き先しか考えない自分は酷く醜く感じ、彼女に近付く権利を持たなくなってしまうように思う。
もしも俺が乱暴を働こうものなら、彼はそれを絶対に許さない。
そして俺はこの居心地の良い場所を、失うことになるだろう。
彼女のマジックは偉大だ。彼女がそこかしこに、俺の周りにもいると感じるようになる。
風が静かに気持ちよく自分のそばを流れたら、それは彼女だし。木漏れ日の中のどこかから鳥の囀りが聞こえたら、彼女のぬくもりを感じる。
穏やかな晴れの日に、君がどこかで笑っているのを思い浮かべる。いつもいつもそう思い、この世界で一緒に生きている。そんな心地よい幸せを感じる。
ふと虹生と目が合って、ふたりで理由もなく笑い合う。それは以前とは違った温度があるから不思議だ。
彼女は藤井のことが好きだけど、虹生も彼女のことが好きで俺も彼女のことが好きだ。それをダメだというヤツはいない。慈しむ瞳で彼女を見ている虹生を見ると、ああ今日も世界はあたたかい……そう感じる。
他の者にはちょっと理解し難い関係であると、自分でも思う。それを理解するには、やはりマジックに掛かるのが一番ということだ。
「 ……ちゃん ……えふうちゃん…… 」
虫採りに夢中になっていた俺たちは、ふたりして同時に同じものに目を向けた。それまではちらほら見える人影には興味がなかった。目的とは全然違う。
モンシロチョウが彼の周りをヒラヒラと飛んでいた。それはまるで懐かれているような、操っているようにも見えた。
彼の足元には空の虫ケース。飼っていた蝶を孵化させ、ここに放しに来たのだろうか。
モンシロチョウのヒラヒラとした白い羽と同じように、彼のシャツも風に揺らいでいた。
風が運んできた彼の声に、俺たちのそれまでの驚喜が止んでしまった。
聞こえた……気のせい?聞き違い?彼は何て言ってた?
虹生も答えを知りたい表情で、俺の顔を見ていた。
その週明け、ユイヒと会う約束をしていた俺たちはその話をした。
それを聞きすぐに
「それは”ユカリ”だ」と彼は言った。
”恵風”という名前はそうそう聞かない。ただの偶然なのかもしれない。けれど頭に浮かぶのは、こればかり。
聞き違いじゃなければその”ユカリ”かもしれないヤツは、エッちゃんの名前を呼んでいたのでは……。
もしもそうであればそれは大変だ。虹生に自分が言われた”キモい”のどれほどかを、そこで改めて知った。
「なるほどそれは非常にキモい」
「だろう?”さすが”と”ヤバイ”が一挙同時公開の最高のキモさだった」
「お前もヒトのこと言えないよな?」
「……」
虹生も自分の机の上に、”エッちゃんとナナオ”がいた。藤井は知らない、俺たちだけの秘密だ。その秘密は時が来れば交尾をし、やがて愛の結晶をこの世に産み落としてくれる……クスクスクス
それはさておき――
《 ユカリ・・・ 》
なんて身震いを誘う響きなんだ 良いのか悪いのか、彼女はこの”ユカリ”のことを
「う~んどんな子だったか思い出せないの 一緒にバッタを捕まえてくれた男の子がいたのは覚えているんだけどね」
彼女は以前、このユカリというオトコと会ったことがあるらしいが、捕まえたバッタを残しその時一緒にいたらしいユカリの記憶は、彼女の中には残っていないようだった。
さすがエッちゃんだ。そんな君がまた愛おしく感じる。家に帰ったら、虹生と君への愛を語りながら愛も育もう。
虹…生……エッちゃんって……かわい いッ よな あッ
ぅっ……あっ……か……かわ い……いっ……あっ……
ナ……かわい…………
…………旺 タッ…………あッ……あ エッ……わいッい……
藤井が知ったら……いや、彼女が知ったら悲鳴を上げられるかもしれない。
俺たちは仲良しなんだ。それはお前たちにも分かっていることだろう。だから何てことはない……でも言わないでおく。な、虹生。
彼女のかわいさは、俺たちの熱にもなる。自分の肌を愛しい人に感じて欲しくなり、自分もまた愛しい人に触れたくなる。自然のことだろう。
君の肌を通った風が世界を回る
巡って運んで自然に還る命たち
熱かったり冷たかったり、それでも君は笑ってる
キライなものってある?って聞いたらきっと君は
う~ん 何だっけ?
って言いそうだね
君がそこにいるだけで、君が世界で息づいている
どこにいても感じる 聞こえる 君の軽い足音と笑い声が
じゃあ好きなものは?って聞いたら
たくさんあるよ!
そう答えるのだろう
「聞いてくれよ”オレ”、食べられちゃった……ハッ!」
「なに?なんのゲーム?」
「そ、そうゲームなんだ……」
「へえナニナニ?俺にも教えてよ」
「いや、アレは藤井には向かないよ な、虹生」
「そ、そうだね……」
「?…」
藤井、お前は彼女のことだけ心配してればいい。
俺たちは俺たちのやり方で、彼女のことを愛すから。な… 虹生……
自分たちの見えない所で、何かが動き出しているのかもしれない。きっかけは誰も気にも止めない、小さなこと。
それを教えてくれたのは、もしかしたらあの小さな生き物だったかもしれない。彼女に自分の姿を見つけさせて、教えてくれたのかもしれない。
それが何か俺たちにとって良からぬことの始まりだったとしても、君を想う気持ちはずっと変わらないから。
君の温度と自然をいつも信じているから。誰かが君の名前をどこかで呼んでいても、それはそこかしこにいる君の気配を、ソイツも感じてるってこと。
俺が彼女の名前を付けたように、彼もただそうしていたのかもしれない。
知らないソイツのことが分かるような気がする。
君は俺たちが思いもしないことを連れて来たとしても、大切なトモダチであることは変わらない。
だから 大丈夫……。
ああ本当は、”俺”なんか捕まえなくたって良かったんだ。そんなふうに見つめられると、また君を胸に休ませながら出掛けたくなってしまう。
今日はどこの公園に行く?昔、俺たちが遊んだ秘密基地に君を連れて行ってあげようか?
こんな狭い所にいたんじゃ、きっと君は俺と同じものしか見ることが出来ない。そんな小さなカラダでも、きっと君にしか見ることが出来ないものを見つけて自分の好きな所に行くんだ。
君はいつもどんな景色を見てるのかな……
オータくん 今日も夕日がキレイだね
そうだね ”エッちゃん”
今は君と同じものが俺にも見えてる。君はどんな景色を見たい?
「虹生、今度の休み晴れだったらまた月琴公園に行こうと考えてるんだけど」
「なに?また捕まえに行くの?」
「いや…… 今度は……」
彼女から預かって最初に頼まれていた それをしなきゃ
”このコをどこかに放しておいて”
きっとあの子はきっと大丈夫。
あの子は簡単に不確かな者の手に乗ったりはしない。もしもの時は藤井がいる。ユイヒもいる。
そして俺たちもいるんだから。
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