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月琴そう🌱*

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第二十四話 ノスタルジック・ユイヒ ~昆虫採取~

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ノスタルジック・ユイヒ序章


「お前は今日ダメだ!」
「ケチーー!」

 ごはんまでの時間は遊びたがりのこどもたちに、遊ぼう遊ぼうとそこかしこが誘っているのに。草も木も空を飛んでるビニール袋だって。
なのにダメしか言わない自分の片割れは、きっと鬼か悪魔に違いない。
その鬼か悪魔のせいで自分は今、こんなに悲しいのが悔しい。みるみる大きな瞳一杯に涙がせり上がり、今にも零れてしまいそうだ。けれど泣き顔は絶対に見せない。
自転車に乗ったふたりに置いて行かれるまでは、今日もいつもと同じはずだった。自分の知らない間に新しい約束ができ、それは自分がいると彼らの都合が良くないらしい。自分を見つめるハの字の眉の瑞月は最後までハの字のままで、そして結日と行ってしまった。

 ひとりぼっちで辿り着いた小さな空き地で、肩を震わせ鼻をすすりながらグッと涙を堪える。すると涙でぼやけた恵風の視界に、草色の跳ねるものが見えた。
(トノサマバッタだ!)
たった今、泣き出してしまいそうだったのに、草が伸び放題になってる小さな空き地で、無我夢中になって虫と追いかけっこ。堪えていた涙はかわりばんこに頬を流れたが、風がそれをすぐに乾かしてくれた。そのうち通りかかりの少年も混ざり、一緒にバッタを追いかけ始める。ふたりの人間に追い回され逃げ切れなくなったバッタは、恵風の細い指の間にやっと収まった。さっきまでの恵風のことをこの少年は知らないが、頬に見える乾いた涙の跡に気付いていた。当の恵風は泣いてしまいそうだったこともすっかり忘れ、ついさっき会ったばかりの少年に満面の笑みでお礼を言い、虫取りの興奮が冷めないふたりは、そのままとりとめのない会話を始めた。

 何年生?家は近くなの?虫、好きなの?

 ふたりの間の空気が穏やかになった頃、少年は明日も虫取りしようと持ちかけてきた。ここよりもっと、虫がいそうな公園を知っていると言う。少年の顔をよく見ても、恵風はやっぱり知らない顔。葉っぱがくすぐっているように話す少年の声を耳に入れながら、恵風は捕まえたばかりのトノサマバッタを見て考えた。この出来事を、今日でおしまいにするより楽しそう。自分を仲間はずれにした結日に、また自慢ができると恵風は目論み約束を交わした。

 けれど空模様の方が、ふたりに合わせてくれなかった。雨とともに流れた約束は、次を迎えるにはひどく頼りないものだった。恵風は聞かれたまま自分の名前を教えたが、少年は自分の一つ上の六年生であること以外を、聞いていなかったのだ。

🌱

〈ピロリン〉〈ピロリン〉

「ユイヒからだ」
「いつの間にそんなことやってるの?」
「この前からね」
「”ヤローの会”だ」

「ヤッタ!」
「なに?3人で遊ぶの?」
「遊ぶって言うかね」
「泊まりに行くことになった」
「ぇえ!?」
「藤井も来るか?」
「ユイヒが喜ぶよきっとね クスッ」


  序章 終わり



「ユイヒ!早く今のうちに!!」
「焦るなナナオ 恵風は長っ風呂だ」

 夕食を済ませ順々に入浴を終えて、最後に恵風が風呂に行った。ここからが待ちに待ったヤローの宴が始まる ってわけだ。(プッ…)
以前からの約束だった、我が家での”お泊り会”がやっと今日実行された。
各々ゲーム機のコントローラーを持ち込んだ、祝日含んだ週末の休みを利用した計画だ。買い込んだ菓子類、ヤローどもの寝具も客間に控えている。お迎えする側として抜かりはない。
 メンバーはナナオ、オータ、そして瑞月だ(ブフッ)。
瑞月は今日バイトだったが、それを済ませ自宅で夕食と入浴までも済ませ、後は心置きなく俺たちと戯れるだけという、準備万端な体勢で駆け付けた。恵風抜きの気心知れたヤローだけの面々が、今ウチの居間に揃っている。

 両親は今、俺が結婚記念日にとバイト代でプレゼントした温泉旅行中だ。
トシゴロの娘一人に対し、友人とは言えヤロー3人集まるこの計画に俺は許可が下りないと思っていたのだが――

「今しか出来ない楽しみは今やるべき けれど後悔をするようなことは絶対にしない!分かった?」

 と、信用が元での許可がおりた。ちゃんと分かってるぞ だからそんな両親を裏切ることは絶対出来ないんだって。
恵風を差し置き、俺だけがいい子ちゃんぶろうとコレを考えたわけではない。
恵風からも僅かばかりの心配りがちゃんとあった。コイツは自分の小遣いからの捻出だからムリは言えない。けれど俺は言わないでいた

「お土産楽しみにしてるね!」

 さすが恵風だ。また箱菓子をひとりで食うに違いない。
この話を持ち掛け、そして許可が下りて喜んだのはオータ、ナナオ。コイツらは”冗談のつもりが本当になった!ユイヒマジック!”と喜んだ。けれどひとり焦っていたのは瑞月。ま、俺はこの話が決まった時点で、呼ぶつもりでいたけどな……(プッ)。
 恵風はと言えば――

「私も温泉行きたかったな」

 と、興味はヤローどもに掠りもないようだ。(まあ良し)俺でも分かってる。ここのヤローどもは、お前目当てで集まったようなモノだと。けど安心しろ恵風。父さん、母さんの言い付け通り、俺は楽しいことしかしないつもりでいるから。
そして寝食を共にしたヤローどもの絆は一層深まり、俺たちはお互いかけがえのない存在になるであろう。な、瑞月……プッ

 ヤローの宴とは言ったものの、その名に相応しくないことをナナオとオータそして瑞月までも提案して来た。いつかのように”メクルメク彼ら”と、ヒミツの打ち合わせをすることもなかった。ここにいるヤローどもは、俺と遊びたくてここに来たのではない。ハラガタツから俺はソレを利用し、逆に俺が楽しんでやろうと考えている。

「全く…どれだけモノ好きなヤローどもなんだお前ら フン……エッチなヤローどもめ」
「聞こえが悪過ぎるよ結日」
「そんなことないよ ね、旺汰」
「もちろんさ ユイヒ、君ともっと仲良くなれる  君のことをお互いを、もっと知ることが出来る、いい機会じゃないか」
「そんなコト……ヤローに言われるとムズッとして来るな」
「へ~女の子には言われたことあるの?」
「残念ながら今まで一度もナイ……プッ」
「旺汰もいい加減わきまえないと、オトコもオンナも関係ないただのスケベに受け取られるぞ」
「なんでだよ!」

 彼らは俺たちのアルバム、”生い立ち”を見せて欲しいと言って来た。先ほどそれを恵風のいる前で言ったらば

「やだ!絶対ダメ!分かった?ユイ!」と言われ、その時点では諦めたアルバム鑑賞会だった。

「結日、”エッチ”は余計だ 俺は純粋にエッちゃんを見たいんだ」
「藤井!オマエは見なくたっていいんだ ずっとライブで見て来たんだろうが!」
「そうだ藤井!お前は向こうで、自分の顔でも見てるといい!」
「まーまーナンだったら、ここで俺のカオ見ててもいいぞ プッ」
「やだよ!俺は”俺のかわいいエッちゃん”を見るんだ! そしてお前らがエッチな目で”俺のかわいいエッちゃん”を見てないか見張ってるんだ!」

 クソウ瑞月……いい、分かった。幼い頃の俺が、どれだけかわいかったかを見て思い直すといい。

「ったく、アホなヤローどもめ トイレ行くなら今のうちだぞ?いいのか?では始める」

うっっっわあああああ・・・かああわ… いいいいい~~~・・・・・!!

 なんと、自分で言っといてアレだが、幼き頃の俺を見て”かわいい”と叫ぶヤローが実在した。
  
 ナナオアンドオータ……

 小さい頃の俺たちはこんなふうに写真で見たりした時、ウッカリすると自分でも間違えるほどうりふたつだ。時々は恵風をあて、それを彼らは”かわいい”と言ったもんだが、十中八九俺のことを彼らは”かわいい”と叫んだ。不思議と俺は喜びの遠くにいた。驚き と言うか 意外 と言うか……正直ザワッとした。”かわいい”俺も言われてみたい憧れの言葉のひとつではあったが、これは言う相手によるものであると今日知った。それは同時に俺にはやはりひとりだけ……そう改めて気付かされた出来事でもあった。
なのに悔しいことに、瑞月は全て正解を成し遂げた。

「ね、君たちには分からないよね”俺のかわいいエッちゃん”が」

 歯軋りの聞こえる中、瑞月は得意げに言った。クソウ瑞月  ク ソ ウ 瑞月!!
俺はこういうシナリオを作っていた。

「ほらごらん、”かわいい”は俺なのさ!クスッ」爽やかに言い放つ心構えをしていた。なのにヤツは

「違うよソレも結日 ね、そうでしょコレ、結日だよね」
「…… そう… 俺だ……」
『エーーーッッ!!』

 引っ掛かるのはオータ、ナナオばかり…… クソウ……しかもこんなことまで言いやがった。

「良かった 君ら間違ってばっかりいるから”俺のかわいいエッちゃん”のことエッチな目で見る余裕もないね!クスクスクス あ!もしかして君ら、間違って結日のことをエッチな目で見たりしてない?」

「!!」←結日

「クソウ藤井!全問正解だからって、バカにすンなよお!」
「ムカつくから”俺のかわいいエッちゃん”繰り返すな!!」
「まあ……今はこの通りだが、恵風と間違われることはしょっちゅうだった」
「ムリもないよ こんなにソックリなんだから パッと見ただけじゃあ全然見分けが付かないよ」
「そう……周りにはやっぱり俺たちはそう見えてたようだ だからだと思うんだけど そうとしか思えない……そう思いたい……ヤツは俺と恵風を間違ったに違いない 当時の俺にはまだ”メクルメク世界”の存在を知らなかったからってことがあった お前も恵風も知らないことだ」
「なに?いつ?」
「あれは確か、小学五年生の頃のこと 忘れてたんだが俺のファーストキスはすでに終わってたらしい  その時に」

『 !!? 』

「それってどういうこと!?」←瑞月
「なんだ 聞きたいか(プッ)」瑞月、それはヤイテルってことか?
『ウンウン 聞かせて聞かせて!』

「あれは下校中のことだ。友だちと別れ、俺はひとりで歩いていた 恵風より先に家に着き、アイツに食われる前に2つ目のプリンを食ってしまわなければ……なんてことを考ながら歩いていた こども内で分ける、”3連プリン問題”だ」

『・・・・・』

「そんな心配をしなければならないほど、アイツの食い意地はスゲーんだ!俺は何度も食い損なってるふたつ目のプリン!次こそは俺が食う番だ!!あの頃何度アイツに言ったか!……お前らはそんなしょっぱい思いをしたことはないだろう」

「エッちゃんってかわいいんだね」
 
 ナナオ!そこは”意地汚い”っていうのが正解じゃねーのか。せっかくここに”どうかしちまったヤロー”が、三人も集まったんだ。”かわいいからはほど遠い恵風”を暴露してやるチャンスだ!そして俺に気が向くといいさ”俺のかわいい結日”……言わせてやるよ……。

「ブフッ」『?…』

🌱

「おーーい」

 聞いたことのない声。結日は自分を呼んでいるのではないと、歩調を緩めはしない。

「おーーい」

 誰が誰を呼んでいるのかだんだん興味が湧き、振り返り姿を確認したが、やはり知り合いではない。結日は再びプリンに気を向け直すが、”おーい”はまだなお続く。もしかしてなにか落し物でもしてしまったのだろうか。”おーい”と言いながら、こちらに走り寄って来ている気配も感じる。結日は心当たりを手探るが、落し物もしていない自分ではなかったと再び気を戻す。けれど止まない”おーい”が気になり、プリンに集中が出来ない。やがて声の主は、結日の元にやって来て「今日、行ける?」と言った。

 小学生の結日と恵風の髪型や服装、そして学用品などの大体が、子ども用品店に勤める母親好みに委ねられていた。ふたりの見かけに双子要素を忘れず、それに加わる絶妙な男女差は、鳥海ママのセンスの素晴らしさも見せていた。
当人らは特に不服もなく一緒に”おかっぱヘアー”にもなっており、なによりふたりは二卵性でありながらソックリだった。
 そんなことから間違われることが時々あったのだが、幾とせの進級を共に過ごしてきた学友の間からは、そうそう起こる間違いではなかった。稀に訪れるご愛嬌に対しては、それを材料にして結日は遊び、後で恵風を怒らせていた。
結日は賢いと言われるよりも、かわいいと言われた時の方が気分が良かった。
それは自分が恵風に間違われた時に多いと気づき、解せないことと思いつつ喜んでいた。結日は自身をも、遊びの道具にしていたのである。

「ただ俺たちの場合、男と女だ ウッカリすると大変なことを招いてしまい、最悪お互いの交友関係を壊す恐れを含んでいる 間違っていると気付いた時には、相手によりで言うようにしていた じゃないと」

(ねえ恵風ちゃん、ゲッキンくんが恵風ちゃんを”かわいい”って言ってたよ)

「俺が聞いてもショーガネーことを、恵風の代わりに”かわいい恵風”として俺が聞くハメになってしまう さらに面倒なのは、それを本人に報告すること ザワッとするばかりで笑えない」
「うそおおお!!ねえ結日ソレっていつ?ソレからどうなったの!?コタエテ結日!!」
「アッハッハッハッハッハッハッ…前から思ってたんだけど、藤井って怒ると妙なカンジになるよね」
「藤井落ち着け!小学生の頃の話だろ?……虹生、ソレは言わん方がいいぞ彼は気付いてないのかもしれない」
「……ったく、マヌケなヤローめ 俺ひとりの時によく恵風に間違われていたが、恵風が俺と間違われることは少なかったらしい 俺と間違われても寸前で”ごめん間違った”と、そればかりだったそうだ 何でだろうな 恵風からオンナ臭さがもう出てたってことか?」

『・・・・・』((ハート))

「バカヤロウ!恵風のそばには貼り付くようにいつもお前がいて、睨みを利かしてたからに決まってるだろう! お前のせいで俺と恵風を間違った罪のない哀れなヤローは、慌てて逃げていたんだ お前が恵風の隣にいない方が珍しいってくらいだ!」
「藤井コノヤロウ!オマエなんて、またくすぐってコシヌケにしてやるからな!」
「ぇえ!やだよ!冗談じゃない! いーよエッちゃんの所に行くから」
「そうはさせないよ!フジイ」
「なんだ?楽しそうだな」
「旺汰、後のお楽しみだ 結日、今日レッスン行けるかあ?今日は旺汰もいるし、前回より濃厚な内容期待出来るぞ」
「!!…ちょっとナナくんナニ考えてるの!?」
「ナニってオマエ、その為にここに来たんだよなあ?(クスッ)」
「イヤーーーッッ!!」←瑞月

「ソイツの名前は確か”ユカリ” ちなみに”ヤロー”だ」
「ユカリ?オトコ?珍しいね」
「だろ?珍しさ故の記憶だ」
「”ユカリ”……?俺も心当たりあるぞ こんなことがあったんだ……ソイツかな」

(あれ?君、今向こうに走って行かなかった?)

「昼休みにエッちゃんと図書室にいた時だ 突然”俺のかわいいエッちゃん”に、気安く話し掛けて来た”不審者”が現れた」

『”不審者”……』  
「ま、藤井にはエッちゃんに近付くオトコは、みんな”不審者”だろうよ」
「エッちゃんにしてみたら、藤井こそが一番アヤシクてヤッカイだと思うがな」
「ブフッオータ、それでも恵風は毎日ボケらっとしてたぞ」

(ユカリどうしたの?)

「同じ顔をしたオトコが本棚の後ろから現れて、俺の方こそビックリだ 
君らのようにまるで双子のように同じ顔をしてるのに、名札を見ると苗字が違った 俺はこのふたりはいとこ同士なのかなーって けど妙なことをソイツは言ったんだ」

(あはっ この子も俺たちと同じだよ この子は女の子だけどね)
(なーんだそうか、ユーレイを見たかと思ったよ)
(ユーレイなんて信じるなよバカだなあ)

「って、すごく横柄な態度でそのまま行っちゃったんだよね 思い出したよ エッちゃんからその”ユカリ”ってオトコの話なんて一度も聞いたことないぞ?その無礼なオトコどもは今どうしてるんだろう 校区が同じで下校中の結日を追い掛けて来るくらいだから、もしかして近所に住んでるの?」

「!…藤井!」
「キケンだぞ エッちゃんがヨソのオトコに!」
「まあまあ 落ち着け 話はまだ続く」

 お互いの勘違いを正すため、結日は向き合いジッと相手の顔を見た。
それでも結日にはやっぱり心当たりがあるわけもなく、むしろ相手のために自分を見せたようなものだ。なのに相手は構わず話し出し、疑うこともしない。

「虫取り、これから行ける?」

 突拍子もなく聞こえるのは、片割れと間違っていること以外ない。いつもの遊びが出来る相手ではないのは、百も承知。早々に自分は双子であると、自白した方が良さそうだ。けれどその隙間を見つけることが出来ない、相手からの圧に結日は戸惑う。

「この前話してたのも渡したいんだけど、いいかな 君は手ぶらでいいから、カバン置いたらこの前の空き地にすぐ来て!」

 困惑の反対側で、恵風がバッタを捕まえた話を思い出した。結日はそれに目星を付けて、そこで会わなければこの冒険を終わりにしようと、安易に切り替えた。恵風が帰って来る前に、顔を合わす前に家を出なければ。もうひとつ、この少年が”本物”と会う前に。
 
「お前のさっきの話を聞いて、なおさら妙に思う ”この子も俺たちと同じだよ この子は女の子だけどね”ってどういうことだろうな まあ他人が知る必要のない事情が、名字が違うってとこにあったりするかもだし……そしてソイツが果たして俺が会った”ユカリ”かどうかも分からん」
『………』
「ナンだ揃って神妙なカオして」
「ナンか ユイヒじゃないみたいだね」
「今日は”俺を知る日”なんだろう?さっきオータが言ってたじゃないか」 

 う~~ん チガウ…… 三人は思った。 

 「ただいま」と「行ってきます」を忙しなく言い、カバンを放り込むように玄関に置いて、結日は空き地にすっ飛んで行った。少年の家も近くのようで、結日の目星は当たりそこに彼が立っていた。不思議に思ったのは”虫取り”と言った少年の手には、虫かごではなく手提げを持っていたことだ。結日は再び困惑した。少年と恵風はどんな約束を交わしていたのだろう。少年の名前は疎か、まるで知らなかった。同学年では見ない顔。同じ小学生なのだろうが、彼の醸し出してる雰囲気はとても下級生には思えない。

「実際はどうだったの?」
「分からない……名札は学校に置いて下校する決まりになってたしな 身バレの恐れがあるから下手に何も聞けなかった」
「藤井も分かんない?」
「ん~俺もアレが一回きりだったし……名前ばかりに気を取られてたから、顔なんてもう覚えてないや」
「ま、小学生の頃の出来事だ 記憶が曖昧になるのは無理もない」

 途中、恵風じゃないと気付かれたらどうしようと、迷いは消えないまま。その時は習い事の時間だとか適当を言い、問い詰められる前に帰ろう。結日はそう心の中で決めて、緊張を解かなかった。
少年の話や思考を巡らす視線のひとつひとつに興味が湧いて、結日はその回答が欲しくなって仕方がなくなる。こんなに引きよせられるのは、結日は恵風ではないのに恵風を求められているからと、結日は自分で気付かない。

「今日はおとなしいね この前はバッタを追い掛けるほど元気だったのに」
「あ……いや……大丈夫デス」
「クス」

 ”俺”だとバレないように、あまり話をしないでおこうと策をめぐらす結日の口調は、少々つっけんどんだ。

「どこに行くの?」
「ほら、月琴沼公園」

「ごめん 用事あったのを思い出したから、やっぱり帰る」出そうで躊躇っている言葉が、結日の喉元で騒いだ。けれど結日はこの見知らぬ少年にくっ付いて、”結日”という自分の陰だけを置いてけぼりにして歩き始めた。

 その公園は住宅街の外れに位置し、ただ広いだけで遊具もなく芝と樹が生えているだけの公園だ。そんな公園にこんな平日の夕方に訪れるこどもなんて、そうそういないはず。この公園がこんなに不人気なのは、不審者が出ることがあるからこどもだけでは行ってはいけない、そう学校で知らせが出たせいもある。結日には低学年の頃に、遠足で行った以来の存在になっていた。低学年の足には相応な遠足の距離だったかもしれないが、五年生になった今では”少しだけ遠くにある公園”くらいには近付いた。

 (今日だけ 今日だけだよ 何かあったらすぐ逃げよう……。)緊張の材料はどんどん増えて行く。なのに結日にはそのどれもが冒険のように感じ、迷いごと受け入れた。

「捕まえたらコレに入れて 大丈夫、小さく穴を開けてるからちゃんと口を持っていたら逃げ出したりも、窒息して死んじゃうこともないよ」

 少年は持っていた手提げの中から、ビニール袋を取り出してそれを結日に手渡した。先ほど感じた圧する空気は、思い過ごしだったように少年の表情は和らいでいる。

「自分の家にはぼくの虫かごがあるんだけど、黙って出て来たから虫かごを借りることが出来なかったんだ」

 恵風だったら分かるのだろうかと、自分に通じない話を聞いてるだけ。そうすることしか自分が出来ないのは、当たり前なのだ。それでも結日は”恵風のフリ”を続けた。
手提げの中には、まだ何かが入っている。それが恵風に渡されるものなのだろうか。結日は自分が、”恵風になったままの理由”がその中にあると感じた。

 草むらを何かが弾いてるのを目で追い、鳴き声を聞きつけ、追い掛け走り回っていつの間にか夢中になっていた。虫採りをしなくなってから、もうどのくらい経つだろう。この少年はまだこんな遊びをするのだろうか。と思ったが、日射しを反射するほどの白色の肌が、結日の目に映った。時折聞こえてくる少年の笑い声と歓喜の声は、大人になろうとしている兆しを含んでいた。

 ただの草っ原を、公園と謳ってる場所だ。定期で草刈りをされているのだろうが、設備は公園の入り口に水飲み場や時計が一個あるくらい。その頃の結日の手首には、まだ時計がなかった。傾いた日は夏の熱を少しだけ緩ませ、昆虫の呼び合いが先ほどよりも、地面から響き上がっていた。太陽は雲を薄くオレンジに染めている。

 どちらともなく走り回ったカラダを風に当てようと、ふたりは芝の上に腰を下ろした。虫を追い掛け回ってる間、少年は結日に”ユカリって呼び捨てでいいよ”そう言い、結日は今日初めて会った少年を、名前で呼んでも許される仲になった。
けれどユカリがそれを許したのは、結日ではなく”恵風”にだ。ユカリは結日を「えふうちゃん」と呼んでいた。自分の名前を言い出せず、恵風になったままでいるのは初めてのことだった。

 ユカリから虫の入った袋を預かり、そして彼は手提げを持った。いよいよ恵風に渡そうとしている物が、なんなのかが分かる。ずっと感じている、虫取りよりも大事なことがそこにある。自分が恵風になっていなければならない理由も、その中にあるのだ。
現れたのは一冊の本、絵画集だった。それを見ながらユカリは言った。

「ぼく、転校生なんだ ちょっと家の都合でいとこの家に居るの」
「……」
「来週、自分の家にちょっとだけ帰ることになって……」
「よかったね」
「うん それでね帰る前にこれ……本当は叔父さんの本なんだけど……」
「?」

「ヒオリがこの本の真似ばかりをする きっとこの本はヒオリから離した方がいいんだ」

 さっきまでの虫を追い掛けていた興奮とは違う、ユカリから空気を圧すようなものがまた胸を押して、結日をドキドキとさせた。捕まえたトノサマバッタが、ビニール袋の中で逃げ道を探すように跳ねている。

 ユカリは恵風に、”渡したい”と言った。恵風が欲しがったわけではないようだ。恵風でもここに来なければ、分からなかったことなのだろうか。
いつか目の前を跳んで行ったバッタを見て、恵風が歓声を上げたことがあった。恵風がどうしてそんなに、昆虫に魅力を感じているのかは興味はない。けれどユカリがなぜこんな人気も遊具もない、行っては駄目と言われている所まで”恵風を連れて来た”のか、そこまでする理由が分からない。
その本を手放す為に、都合が良かったのだろうか。隠し事をしている立場では、理由を知ろうにも言葉が頭の中を彷徨うだけ。ようやく出た言葉は――

「ユカリも――トノサマバッタが――好きなの?」
「え?」

 公園を吹く風の流れに乗せたような笑みをユカリは浮かべ、結日と目を合わせた。

「やっぱりやめた」

 今の自分の質問は恵風じゃないことを、ユカリに知られてしまったのではと、不安が走りカラダが固まる。

「ねえ、この本はやっぱり君にはあげない いつか取りに行くから、それまで預かっててくれない?」
「えっ」

 そもそもユカリは恵風は双子であると知っていたのか、成りすましをしているその時の結日には確かめようがない。それでもユカリから離れるまでは、結日は恵風に成り切っていなければならない。ユカリは恵風じゃないことに勘付いて、考えを変えたのだろうか。
それでも 自分が恵風じゃなくても、ユカリはその本を手離したいのだろうか。

 そんなことが頭の中を回り、さらにその立派な本をもらって欲しいも、預かって欲しいも、どちらも結日には困った話だった。「そんなこと出来ない、母さんに叱られる」そう言って断ろうかどう返事をすれば良いかと迷い、視線が自分の手や足元で泳ぎ出す。第一、恵風にバレたらどうする。そんなこと最初から分かってたはずなのに。答えが見つからない苦境に結日は立たされた。

 応えに困っていると、ユカリは結日のおかっぱの頭を触り始めた。母親の趣味の恵風とそっくり同じではなかったが、自分は”おかっぱ男子”。
その髪型が恵風と自分の見分けを一番難しくさせている要因だと、その頃の結日にはもう分かっていた。

「意外に似合ってるよね コレでしょ?」
「だろう?」
「今じゃムリだけどね……クスッ」
「バカヤロウ!俺は”かわいい”から出来ているんだ!」
『・・・・・』
「チッ…フシアナめ」

 さっきから風に靡いて頬をくすぐる髪の毛を、ユカリは撫でるように耳に掛けてくれる。普段自分にそんなことをするのは、大概母親。年齢の近い同性にされることとは、思いもしない。”自分はいま恵風”ということも忘れ、ビックリしたままユカリのことを結日は見つめるだけ。
さっきの返事もまだしていない。返事どころかそれどころではなくなった。   

 やがてユカリの手が止まり、結日の頬に触れた。
トノサマバッタが入った袋を逃げ出さないようにと、ギュッと口を握るように持っていた。けれど一匹残らず自分たちの元を離れ、彼らの世界に帰ってしまった。カラになってしまった袋まで風に持って行かれ、手元には何も残らなかった。

 ユカリの両手が結日の頬を包むように触り、静かに唇を離した。夕方の風が汗を掻いた肌を涼しくさせていたから、彼の手が安心するようなあたたかさに結日は感じた。

「秘密なんだ……お願い……そばに置いておきたくない」

 風と流れる草花や木々のやさしいささやき。それに混ざるユカリの声。自分のすぐ前に出来た影と、自分の頬に掛かる他人の吐息。重なった唇のやわらかさと彼の体温。自分の中に刻む前に、それらは全て驚きと一緒に飛び散り、そして――
結日は振り切るように走り出した。無我夢中で走って走って、見慣れた風景まで来たところで
自分の手にはしっかりと本が持たれていることに、気が付いたのだった。

『・・・・・』

「ね…ねえ……結日?」
「ナンだヤキモチか?」(プッ)
「って言うか、ユイヒ」
「俺ならご覧の通り大丈夫だぞ?まだ何にも染まっていない純白の美少…」
「と言うかユイヒ、あのな」
「ナンだ三人して羨ましいってか?はっはっはっ…俺にもあった”アマズッパイ思い出”ってヤツが しかし残念なのは、当時の俺は全く目覚めていなかった、甘美な世界はまだ早かったということだ」

「そ、その、”ユカリの本”はどうしたの?」
「ああ 待ってろ今持って来るから」

『 !! 』

「ヤバイぞ藤井ソイツはユイヒを、エッちゃんだと勘違いしたままだ」
「う、うん……そこだよね」
「で、ソイツは今どこにいるんだろう 俺たちのイッコ上……だとしたら……」
「全然分かんないよオータくん 市内にいるんだったらどこかで会ってしまう可能性が……」
『 否めない! 』

「あったぞ あった 見ろよコレだ」

『 ゆ い ひ !! 』

「ナンだよテメーら揃って……自分にはなかった美しい思い出だからって、八つ当たりは見苦しいぞ」
「って言うかね、そのユカリってヤツは今どこにいるのか知ってる?」
「そう……”自分の家”って、俺はテッキリ地方にでも行くのかと当時は思ってた」
『ウンウン』
「住所までは知らねーが、コレ話して思い出したことがひとつ……」
『・・・』

「……こう注目されると、照れるな ブフッ」
「イーから早く答えて結日!!」
「ったく、セッカチなヤローめ 行ってる高校までは知らんが、市内の高校に通学中ならいつか顔を合わせることがあるかもな 知った顔なのに思い出せないってことがあった 確か入学した頃街の駅で見たんだ アレはユカリだ 残念だったのは、ヤツは俺に気付かなかったってことだ ま、ムリもない 俺はもう逆立ちしたって恵風にはなれないからなプッ」
『 ゆいひーーっ!! 』

「藤井、ナンでオマエも気が付かなかったんだ そんな魔の手が潜んでたことに」
「俺だってあの一回きりだったし、まさかこんなことがあったなんて知らなかったよ」
「お前、エッちゃんから一瞬たりとも目を離すなよ ナンだったら俺たちが…」
「大丈夫、エッちゃんから片時も離れないよ 絶対に!」
「ソレはソレでムカツクな」
「仕方ない虹生”俺たちのかわいいエッちゃん”の為だ コイツの執念に任せよう」
「おい、せっかく本を持って来たのに、見ねーのか」
《 ジーーーッ… 》
「ナ、ナンだよ ……おっと、もうひとつ忘れちゃならないことがあったぞ」
「な、なに?まだなんか……」
「気にならないか?”二つ目のプリン” その日もやっぱり恵風に食われたブフッ…」
『(ハァ…)』

「あ!エッちゃん!」
「アーッ!!見てるの!?ダメって言ったでしょーーっ!!」
「恵風もう遅い ここにいるヤローどもは、お前より俺の方が”かわいいかわいい”と盛り上がっていたんだ」
「エッちゃん!結日の言うことを信じてはいけないよ!君は”俺だけのかわいいエッちゃん”なんだから」
「クソッ藤井”俺だけの”なんて言いやがって エッちゃん!藤井の言うことも鵜呑みにしてもいけないよ 君は藤井にはもったいない女の子なんだから」
「エッちゃん!さあココ(胡座の中)に座りなよ!」〈パン・パーン!〉←自分の腿を叩いて促す旺汰
「ズルイぞ旺汰 エッちゃんオレの所へおいでよ!」
「ナナくんもオータくんも分かってないねえエッちゃんは俺の所に来るのが普通さ ね?エッちゃ…」
「アイス食べよ」
「プッ…瑞月、お前はまだ食い物には勝てねーってことだ ショーガネーから俺が恵風の代わりになってやってもいいぞ?プッ」
「そうだ結日、お前エッちゃんに成りすましたこと、他にはないんだろうねえ?」
『 !! 』
「ああ瑞月安心しろ このアルバム同様、お前は騙せなかったブフッ」
『 ゆ い ひ !! 』
「まあまあ落ち着け、俺のちょっとしたお遊びだ    今はさすがに出来ないがな残念なことに」
『 あ た り ま え だ !! 』

🌱

 いつもお腹が鳴り始めるのは、3時間目から。やっと待ってた給食の時間。
今日は何だったっけ?手洗いの順番待ちしながら、友だちと談笑。毎日冒険みたいなことが起こらなくていい。緩やかな日常の中にいる自分も大切だ。
母さんに叱られても、恵風にプリンを取られても、友だちと笑っていたら忘れてしまう。
けれど自分に不似合いな本が一冊。息を潜めているけれど、自分に馴染まなくて胸をチクチクとさせる。そんな本を結日は一冊持っている。

「ヒオリー!」
「待って!」

 聞き覚えのある名前、覚えのある声、背格好。そして結日が一番驚いたのは
同じ顔――

 不意の出来事に、時間も自分も止まる。思わず声が出そうになってしまったが、寸時で飲み込んだ。”ヒオリ”にそれが伝わってしまったのか、結日に怪訝な視線を向けたが、すぐに呼ばれた先に行ってしまった。ヒオリにとっては、自分は知らない人間。いないのと同じ。あれから”ユカリ”を見ていない。
たまたまかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。

「ゆいひ!」
「今行く!」

 会ったところで自分はなにも出来ない。自分は”結日”なのだから。

 ユカリから預かった少し痛んだその本は、小学生の結日には難解でつまらないものだった。何もすることがない退屈な時でも、申し訳ないが見る気にもならない。置きっ放しになったその本を、何となくボンヤリ見ていたある時。開き切った跡があることに気付いた。

「ヒオリがこの本の真似ばかりをする」

 高尚に描かれた性愛、同性のその様子があった。不意に開いてしまった知らない世界を、どう解釈して良いのか結日にはやっぱり分からなくて、恵風だったら分かるのだろうかと何度か聞いてみようと揺らいだ。
けれどそうする為には、引っ張り出さなければいけない秘密の出来事がある。
そうしてる内その本は棚にしまわれ、持っていたのも忘れるほどの時が過ぎた。

 ふたりは母さん好みの”お揃い”を卒業し、それぞれの自然に沿うようになった。秘め事も一緒に受け取ってしまった強ばりも、いつの間にか風がさらって行ったようになくなっていた。
ただひとつ、小さな気がかりを残して。

 恵風と彼はいつ会って、何度会って、その時一体どんな話をしていたのだろう。”ユカリとヒオリ”って、何だったのだろう。恵風だったら全部分かるのだろうか。ふとした時結日の胸に、過ぎた風が吹き返し靡くことがある。
そしてあの日起きた全てのことが、まるで夢だったように感じるのだった。

🌱

「エッちゃん!トノサマバッタを持ったオトコには気を付けるんだよ!」
「ナニ?突然」
「恵風   お前”ユカリ”ってヤロー覚えてるか」
「ユカリ?男の子?さあ……なあに?その本」
「ユカリのだ 借りっ放しになってた」
「友だち?」
「……まあ そうだな」

 珍しい名前の理由だけで、忘れなかったわけではない。本人がもう彼を覚えていないようだから、確かめようもない。けれど
恵風は忘れていても向こうは覚えていて、いつか恵風の前に現れるかもしれない。

少年だった俺の姿をうっすら残すお前の前に――トノサマバッタを捕まえて

「あの本と交換してくれない?」

いつかの夏そう言って現れるかもしれない。
その時が来たら、きっと恵風は自分は知らないと言うだろう。ふたりの間に結日は存在しないのだ。


 昆虫採取  終・・・
 

~ノスタルジック・ユイヒ~メクルメクレッスン~
 
「ひゃーっはっはっはっはっ   ひーーっひっひっひっひっひっ…」←ミズキ

 俺たちが顔を揃えたということは、つまりこういうことなんだ。瑞月、悪く思うなよ……。

「フジイ?フジイ   別にいいじゃないエッちゃんとユイヒは双子なんだから、大差はないだろ?」
「エッちゃんがそれをどう思うかは、さておきだ」

 瑞月、お前も何となくでも予感はしていたんじゃないのか?こうなることを……。

「ナナオ!コレからどうすりゃあいいんだ!コイツをただくすぐってるだけじゃねーか 俺は早く先に進みたいんだ!」
「分かった分かったユイヒ   オレがこの前言った”予習”はちゃんとしたんだよね?」
「もちろんだ 俺はコイツとメクルメク世界に行く為に、徹底的に予習復習を行った!」
「ヤ…ヤメ……助けて!エッちゃ…!!」
「ウルサイよフジイ!」(ペチン!)
「ィッタッ!」
「ちょっと旺汰コイツを黙らせてくれない?」
「任せろ虹生 藤井、俺と軽く慣らすか?」
「ヤ、ヤメ…ヤダ……タッタスケ……!!」

 ――〈ヤダーーハナシテ!   コラ、藤井ジッとしろ!〉
「大丈夫だった?クスッ……キミの意思は堅いようだね   それほどフジイをアイシテルってことだね   ナンだカンだって、ソレが一番大事なんだよ さすがユイヒだ立派だよ」
 ――〈ヤメテーーイタイッ!   藤井?藤井……大丈夫ダカラ……〉
「まあな……俺の気持ちは誰にも変えられんさ」
 ((ヒイ!!))
「それじゃあキミは”ドッチ”というのも決めているんだね?」
 ――〈ヤダヤダヤダヤダーーッ!   フジイ……クスッ……〉
「もちろんだ!!」
「ウルサイよフジイ!ちょっと旺汰、フジイの口塞いじゃって!」
「ヤダーーヤメテッ! オータくん離して!!」〈ドタン バタン〉

「そう……で?キミはドッチを希望してるの?」
「俺はコイツに――」
「ヤダーー!!俺はもうエッちゃんとメクルメク世界に行ってるから、もう行かなくていいんだ~~」〈ドスン ガタン〉

(((チッ…)))

「藤井……残念だこのままで終わるのは非常に残念だ 俺はあの世界を知る者として、それをお前と共有し、もっと仲良くなれることを夢見ていた」
「ヤダーー俺は知らなくていい! エッちゃーーーーーんんん!!」
「チッ…虹生!コイツの着てるもの、身ぐるみ剥ぐぞ!手伝え!強行する!!」

((!!))

「ユイヒ!お前も準備を! さあ ハ ダ カ に な れ !! ユイヒ!! 」
「きゃああああああああああーーーーーーーっっっ!!」←ミズキ

「フジイ……ナニも怖くないよ……安心して…… 旺汰……」
「……ヤルか……」
「旺汰!やっぱりオマエは頼りになるよ!」
「俺はただのスケベじゃないぞ虹生!」

「旺汰……」
「虹生・・」

「テメーら紛れてなにヤッテヤガル!!」
「お……俺の上でやめて……ふたりともヤルならドッカ別のところでーーーっ!!」

 ガラッ! 

「ちょっと静かにして!うるさくって眠れな……キャーー!!ナニシテルノ!!」

 ア・・・ エッちゃ・・・・・
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