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月琴そう🌱*

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第二十三話 ”不思議な結日マジック”

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🌱第一幕 [ 予感 ]

 爽やかな秋晴れの土曜の朝。今日はバイトも休みで一日恵風と過ごせる瑞月にとって素晴らしい日だ。今日のどこかで甘い一時を作ることができたらと、瑞月は胸を膨らます。いつも恵風にはぐらかされたり、なんやかんやの邪魔が入る。
その邪魔な存在のひとつはズバリ結日である。自分たちの恋の時間に全くもって不必要なのだ。今日は今日こそは、誰にも何にも邪魔はされたくない。そして……と、瑞月は頬を熱くし、この恋の小径をを歩く。
 瑞月の妄想タイムを繰り広げる場であるこの”恋の小径”は、自分の家から恵風の家までのことであるが、繰り広げつつも瑞月はいつものチェックを怠らない。
それは自分がバイトなどで、恵風をひとりにさせてしまった時を意識して道を歩くこと。意味の分からない杭がある場所や、ヘンタイが潜んでいそうな場所など、歩き慣れた道中だからと油断してはいけないのだ。何しろエッちゃんはかわいいから。この界隈を行き交う顔ぶれを、知っておくのもその一つだ。
この時間帯はすれ違うのは顔見知りばかり。瑞月はそれも楽しみにしている。
 
 やあ!ビバルディ(←プードル)お天気のいい日のお散歩は気持ちがいいね!俺も君と同じ気持ちだよ オナカはもうスッキリさせたのかい?

 君はピョンコちゃんじゃないか(←パピヨン) 元気だったかい?久しぶりだね そうなんだ俺も君と一緒 ゴキゲンなんだクスッ分かるだろ?

 瑞月は顔見知りのワンちゃんに、自分だけの呼び名を付けて心で会話をする。彼らはちゃんと瑞月を分かってて、シッポを振り瑞月と視線を交わす。

「フフかわいいなあ……みんな元気で何よりだ ああ今日もいい一日になりそうだ」

 おひさまに向かって気持ちよくバンザイしていた途中、次に見た自転車に乗った顔見知りは瑞月に気付かず行ってしまった。

「紙派のユイが頼んでた本が入荷したんだって ユイも今日はバイト休みみたいだね 多分用が済んだらすぐ帰って来るんじゃないかなーすっごく本届くの楽しみにしてたから」

 今日の幸せの予定が、早くも狂い出しそうな予感に瑞月は焦る。

「ど、どこまで行ったの?」
「”イッチャン”」

 ”イッチャン”とは以前、3人で遊びに出かけたショッピングモールだ。行った先で3人が5人になり、楽しくなる所か散々な目に遭った記憶は瑞月の中でまだ鮮明だ。幸せに満ちあふれる今日に、不吉な陰が忍び寄る気配を感じた。そうならないためにはどうすれば良いか。誰一人として自分たちの邪魔を許したくないのだ。それは予定外なのだ。瑞月が一生懸命策を練る最中、恵風のもとに通知が入った。

「モーッ!ユイーーッ!!」
「どうしたの?」

✓イッチャンで”メクルメク彼ら”と遭遇

✓彼らを部屋に招待しようと思う

✓恵風 大変申し訳ないが
✓俺の部屋を
✓ちょっと
✓ちょっと
✓ちょっとでいいから片付けて欲しい

✓お兄ちゃんより(笑)

「ミズキ!そーゆーわけでユイの部屋掃除しなきゃ!マッタクモ~どーせ散らかってるんだから!」
「俺も手伝うよ!」

 ”メクルメク彼ら”とは……?
いつもの結日語であろうと、瑞月は結日の学友と推測し幸せへの模索をここで中断した。

「ユイったら、カーテンも開けてない!」

 暗い部屋をカーテンを開けて窓を全開にし、空気ごと一気に明るくさせたが、この部屋の主の生き写しのような怪しさまでは、払えない散乱な有様。そんな中サクサク動く恵風を見て、瑞月はある日見かけた模様を思い出した。清掃時間中何があったのか、恵風がクラスの男子をホウキを持って追いかけていたのだ。それを一緒に見ていた虹生は案の定大笑いをし、しばらくそれが止まなかったんだっけ……と、そこで瑞月は小さく引っかかった。
(”メクルメク彼ら”……・・)
しかし彼らの接点はまだ弱く、起こることではない。それは”まさか”という瑞月の推測によって打ち消された。

 ちょうど怪しげな部屋が凡庸に塗り替えられた頃、外から数台の自転車の音が聞こえ、”メクルメク彼ら”も自転車なのだと家の中にいるふたりにも伝わった。
 
「よお藤井!やっぱりここにいたな!」
「やっエッちゃん!今日もかわいいね また藤井にキスしたくなっちゃうよクスッ」
「本を受け取ったあとそのまま店内を彷徨いていたら、ナンパのように声を掛けられたんだ ナンパじゃなかったのが残念だったが、こうして部屋に連れ込むことに成功したプッ」

 ”まさか”が起きてしまった。恵風も笑っているしと、瑞月は笑って対応した。けれどそれは当たり前に本心ではない。誰かが背後で”油断は禁物”と言っている。それはあの記憶からの知らせではないだろうか。よりによって再び最悪な顔ぶれが揃ってしまった。この、幸せになる日に……。瑞月の落胆は計り知れない。けれど表には出してはいけない。
幸せへのチャンスを瑞月はまだ諦めてはいない。

「コンビニ行ってなんか買って来ようか?」
「あ!じゃあ俺も行く(チャンスだ!)」
「エッちゃん俺と行こうよ」
「ダメだよオータくん」
「ちょっと待ってて 準備してくるから」

 彼らが既にいつもと違うことに、瑞月はその時まだ気付いていない。

 第一幕 [ 予感 ]  終

🌱 第二幕 [ メクルメク世界へ… ]

 休日の朝から自転車カッ飛ばしてイッチャンまで来た甲斐があったと、上機嫌な虹生。その隣には輝く笑顔の恋人がいる幸せと、もうひとつの幸せも叶えられるかもしれないという期待一杯の旺汰。ふたりはイッチャン内のゲーセンに向かう途中だった。店内の雰囲気も安全で、腹が減っても楽々な移動範囲。飽きたらガチャ店徘徊と、ふたりはイッチャンが大好きだった。その当初の予定を吹っ飛ばし、結日にアタックして得た最高の幸せの幕が今開かれようとふたりの胸が弾む。

「お待たせーっなに食べたい?飲みモノどーする?」
「恵風、お前に任せる どうせお前に食い尽くされるんだ」
「ハハッエッちゃん、君、見掛けに寄らずの大食いちゃんなの?」
「じゃ、エッちゃん行こうか」
「藤井!お前はここに残れ エッちゃん、俺とコンビニデートしよう!いいじゃないかタマには なあ虹生」
「そうだよエッちゃん 今度はオレとデートしようね!クスッ」
「えっちょっとダメだって」
「ダメじゃない!ねえエッちゃん」
「瑞月、オータに任せたっていいじゃないか ただの買い物だぞ?」
「わたしは別にいいけど…」
「よし!行こうかエッちゃん」
「エーーッ!」

 こんなことは今までなかった。恵風のそばには自分があたりまえなのに。それが恵風にも見放され、茫然自失の瑞月。恵風がいないうえに、オトコしかここにはいない。恵風のために生きる自分がここにいる意味を、全く感じない。今日の幸せは一体どこに行ったんだ!やはり自分も後を追おう。と、思ったその時だった。オトコどもしかいないこの空間に、ひとつだけ瑞月の気を引くものが目に入った。その関心は簡単に瑞月の警戒心を緩ませてしまうものだった。

(ホラ、旺汰が彼女を外へ連れ出したぞ ”ゴー”だお兄ちゃん)
(ユイヒだ)
(じゃ、オレはナナオ)

『 クスッ… 』

「え?な、なに?え?わあああ!なに!?どうしたの!?結日!わっナナくん?わーーっ!!」

 結日が買った本に挟まれていたビラの、”不思議ブック”という見出しに気を取られていた時だ。結日は瑞月を突然押し倒して馬乗りになり、虹生は瑞月の両腕を体重掛けて抑え込んで来た。

(ウッカリしてた!クソウ!”不 思 議 ブ ッ ク”!!)

「ナナオ!俺は一体どうしたらいいんだ! ナ ン ニ モ 分からないぞ!!」
「大丈夫だユイヒ!旺汰がオレに ヤ ッ タ 通りすれば、行きつく先は同じだ!」
「恵風 悪く思うなよ!」

(ごめん恵風 俺がする掃除よりもきれいに片付けてくれたのに、徒にするようにしてしまって。お兄ちゃんはお前の恋人とこれから最高に仲良しになって、一 緒 に メ ク ル メ ク 世 界 に飛び立つんだ。) 

「結日!ナナくん!お前ら一体ナニ企んでるんだ!」
「フジイ、オマエはこれからユイヒと一緒にメク…メクリ……メクレ……アレ?」

「 《 メ ク ル メ ク 世 界 だ !! 》 」

「ソレ……に行くんだよ」
「!!…ヤダ!ヤダよ!!離せ!離してくれ!!エッちゃん タ ス ケ テ -- ッッ !! 」
「うるさい!おとなしくするんだ!!」〈ぺチン!〉
「アッ!」
「ナナオ、スマナイ窓を閉めてくれないか」
「オッケーじゃ、離れるよ」
「離せ結日!俺はエッちゃんの所に行く!」
「お前は黙って、俺といるんだ!!」〈ぺチン パチン〉
「アッ!ウッ!イヤだ!ヤメロ!離せ!!」
「ダメだ!絶対にもう離さないぞ瑞月! お 前 を も う 離 す モ ノ か --- ッ !! 」
《ひぃぃぃぃぃっっ!!》←ミズキ

(ドタン)ウッ…ヤメ……結…
(バタン)瑞月観念しろ抵抗してもムダだ ジックリ数年掛けて熟成された濃厚で芳醇な俺を教えてやる
(ドタン)ああっ!?ナ、ナニ言ってるんだ!アッヤメテ!ダメーーッ!
(バタン)・ ・ ・ ←結日

「ユイヒ、少し落ち着けフジイが強張るとオマエも辛くなるぞ」
「ナナくん、アンタナニ言ってんの!?」
「そ、そうか……じゃ、どうすれば」
「クスグルんだユイヒ!オレも手伝うぞ!!」

 アッハッハッハッハッハッハッハッ アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ ヒーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ・・ ←ミズキ

「こうして少し、弱らせるといいんだハァハァハァ…」
「なるほどな…ハァハァハァ…さすがだナナオ やはり”メクルメク世界にいる住人”だな」
「オレが知ってることを包み隠さずオマエに教えてあげるよ!ナンだったら、お 手 本 見せたってイーんダヨ! クスッ」
「お前はいいヤローだ!ヤローの中のヤローだ!!」

《カッッッ》←ふたりのヤローの友情が芽生えた光り

「よしっ次はどうすりゃあいいんだ?」
「焦るなユイヒ そうだな……次はやっぱりキスかな」
「そうか!ナナオ!早速”お手本”を頼む!」
「!!?」

 どちらも嫌だが、本格的な来襲が否めない相手に震える瑞月。

「あ…あああ……やめ…やめてくれ……」
「クスッ…オビエルフジイって結構カワイイね 諦めておとなしくしてた方がイイヨ……クスクスクス きっとキモチが変わるはずさ ユイヒ、オレがいいトコロまで進めてアゲルヨ……」

「 !! 」

 結日と入れ替わり、虹生が瑞月の上に来た。馬乗りだった結日と違い、虹生は瑞月に重なるように”上”になった。全身で感じるのは男体。瑞月はさらに恐怖感を増す。

「ナナくん落ち着け!俺とこんなコトしたら、オータくんが悲しむよ!君にも俺にもいいことはナイ!こんなふざけたマネはとっととやめにし…」
「フジイィィオマエって、毎日彼女とシテルの?ズルイなあ……」

 瑞月の唇を指でなぞる虹生の目が、いつもの彼ではないように虚ろだ。

「何を言って……ナナくん?お前 なんか、おかしくないか?」
「ナニがァ……アーン……」

 自分の心の熱に掠りもしない相手、ありえない相手からのオフザケなしの愛の行為を受ける不快と恐怖を今初めて知った瑞月だった。

「ホラ、もっとオレにベロちょうだいよ」
「ヤッ……ナ… ハ・・グッ……」
「ダメだなオマエ……もしかして、いっつもそんなヘタクソなキスしてるの?マッタク、オマエにも教えないとダメか?ホラ、こうだ!」〈グイッ〉
「アッッ ング!ンン!・・」
「もっとチカラ抜いて……そうだコレはどう?」
「!!……」
「どう?気持ちいい?コレ、嫌いなヤツもいるらしいけど……((フジイはどう?・・・気持ちいい?……クスクスクス…))」

ヤッ…  アッ……  ヤメ……
ダァメ……やめてあげない  どう?…気持ちいい?聞かせて……(( フジイ… ))

「ナナオ俺も混ぜてくれよ……何か……ひとりで寂しくなって来たぞ」
「アア残念せっかくソノ気になって来たのに ま、仕方ないこんなカンジだよユイヒ じゃ、交代しようか キミが終わったらまた続きしようかな……見てごらんよユイヒ……ホラ、フジイかわいいでしょ?クスッ」

 コレが彼の本当の姿なのだろうか。別人のようになってしまった虹生に、たった今瑞月はファーストチクビを虹生の指によって奪われた所だった。 
あのまま結日が割り込んで来ることなく続けられていたら、危うく”メクルメク世界”に取り籠まれていたかもしれない。

(彼(ナナオ)はキケンだ 非常にキケンだ。しっかりしろ俺!!さすがナナくんだ。オトコの弱い根の部分をよく知っている。普段の自分はただの虚栄だと、そう気付かせる的を付いた彼の誘惑(!!)彼はオトコのことを分かっている……非常にキケンだ!!)

(( そんなウスッペライモノ… オレが簡単に外してアゲルヨ・・・ ))

(そう考えてるような、彼の不敵な微笑み……。ああ……このまま俺が行ってしまったらどうしょう。……)

 瑞月は恐怖と不安で涙が溢れ、今にも零れそうだ。

「泣いてるのか?でもなあ瑞月、俺がこの日をどれだけ心待ちにしていたか、お前には分かるか? お前はもう 俺 の モ ノ !! 逃がさないぞ!!今日は泣こうが叫ぼうが止めないぞ 覚悟しろ瑞月!」

(ああエッちゃん 純白のミズキは、もしかしたら今朝までのことだったのかもしれない。こんなふたりのオトコに抑え込まれて、ミズキはもうダメかもしれない。ミズキは自分に負けてしまうかもしれない。)

「フジイ泣くな 大丈夫、歯医者に行くより怖くない!」
「瑞月!この前の恵風とのアレはナシだ!今からする、これこそが俺のファーストキス! 見ろ! 俺 の ク チ ビ ル を !! お前を求めているんだ お前に俺のこの、ピュアなウルツヤリップを受け取って欲しい!! この日の為に宿敵、我が妹の指導を受けて美容と健康に気を使って来たんだ! 俺 の ク チ ビ ル  お 前 に 捧 ぐ !!」

「!!」

「フジイ 彼の涙ぐましい努力を踏みにじっても笑ってもいけないよ オトコならちゃんと受け止めてあげるべきだ……ましてやトモダチだろ」

(ナナくんアンタの感覚おかしい!)

「ナナオ、キスから次に進みたくなってしまったら、どうすりゃあいいんだ? 本当に ナ ン ニ モ 分からないぞ?俺が抱き温めて来たものは、コイツに対しての混じりけのない愛だったんだ それを今、カラダごとで伝えようと……初 め て なんだ……」

(ヒィィィ!今はとりあえずナンニモ言わないから、ソレでヨシとしてもうやめようよ!)

 恐怖のあまり声が出ない瑞月は、ガクガクとしながらふたりのやり取りを聞き、またガクガクと震え上がる。悲しいことに安息の場はここには一寸も見当たらない。

「大丈夫だユイヒ まずはキスだ……さっき見てたでしょう?やってごらん その先はねきっとキミのカラダが教えてくれるはずさ フジイをそんなに想っているのならね」

(ああエッちゃん……ついにこの時が来てしまったらしい。ムリだ 逃げることも出来ない。こんなにもがいてももがいても、このふたりは容赦なく俺をくすぐりチカラをドンドン奪って行く。ミズキは…ミズキは……君のお兄ちゃんに自分の人生に思いもしなかった オ ト コ の 操 を奪われてしまう。ヤダヨ!行きたくない!そんな所に メ ク ル メ ク 世 界 になんて、行きたくなーーい!! エ ッ ち ゃ - - -  ん !!
エッちゃん ミズキは君とふたりでお花畑にいたかった ミズキは君との世界だけで良かった……)

 一筋の涙がキラキラと瑞月の頬を伝い流れた。

「きゃあ!ナニシテルノ!?ワタシのイナイアイダに!!」
「エッちゃん聞いてくれ!こんなコトになっても俺は君を愛しているのは変わらな…」
「ミズキのバカ!ウワキスルなんて、ヒドイジャナイ!よりによってユイとだなんて!”エッちゃんだけ”だなんて、ウソツキーッモウ!シラナイ!!」
「よしよしエッちゃんかわいそうに コッチにおいで慰めてあげる 君のお部屋に行こう?アンナモノ見ない方がいい」
「ぇえ!?ちょっとオータくんそりゃあな…」
「ユイヒ、キミのやりたいままに彼にぶつけてごらん? 大丈夫オレたちはそういうふうに出来ているんだから……待って旺汰オレも行く」
「ナナくん!」
「瑞月、やっとふたりきりになれたな とりあえずふたりでネドコに入ってダッコしてくれ!……してあげてもいいぞ……プッ」
(※ミズキの妄想)

(ハーッ!!やっぱりヤダーーーッッ!!)

「オオッ!?また暴れ出したぞ    瑞月!おとなしくするんだ!さもないと……」

ハーーッハッハッハッハッハッハッハッ ヒーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ・・・ 

「泣きじゃくるヤローを手籠めにするのは少々胸が痛むが……ナナオ……次を……!」
「スル?シチャウ? オッケーそれじゃあその為の準備をしようか……アレ?」
「どうしたんだナナオ」
「ないんだ」
「ないって ナンだ」
「イ ツ で も ド コ で も ア オ カ ン 対 応 の 七 つ 道 具 が入ってる 旺汰のカバンが!!」

「それってどういうことだ?」
「スケベな旺汰が自らセットして持ち歩き、忘れたことなど一度もなくてオレもビックリ思わず引いちゃった イツでもドコでもアオカン対応の七つ道具が入ったカバン……つまり…… ヤ バ イ ぞ藤井!ケツ出して泣いてる場合じゃない!エッちゃんが危ない!!……ってことだ!!」

「うっうっうっ あっあっあっ えっえっえっ・・・」

「アレは 男 女 兼 用 だ !! 旺汰はソコナシの”クソスケベ”なんだぞ! その旺汰が”最強セット”を持って行ってしまっていた!……ウッカリしてた」

「ちょっと待ってくれよ 続きはどうなる」
「ユイヒ、今日のレッスンはコレで終了だ! ”藤 井 を く す ぐ る” 忘れンなよォクスッ 緊急事態が発生してしまった 予定を変更してこれにて終了だ!次回をお楽しみに!」

「うっうっうっえぐっえぐっ ヤダよおジカイなんて……モウ…ヤダよおおお~~ え”っぢゃ~~~んんん・・・ひぐっえっえっえっ・・」
「しっかりしろ藤井っ!!」〈パン・パーーン〉←往復ビンタ
「ウッアッ!」

「いいコエだフジイ・・オトコの初めてってのは、こんなモノじゃないんだぞ!オレだってスケベ過ぎる旺汰に散々泣かされて、ここまでのオトコになったんだ!オマエの”初めて”はちゃんとオレが立ち会ってやるから、心配するな!……そして今度オマエを経由して彼女に渡すのは・・・ナンだったら直接でもイーんだよ!クスッ……楽しみだ!!だからユイヒ!オマエのことはオレがキッチリ指導してあげるよ!!」
「頼むぞナナオ!俺は一刻も早く、コイツとメクルメク世界の扉を一緒に開けたいんだ!」
「任せとけユイヒ!」

(オレも★赤ちゃんを作る練習★に参加したかったんだ。★赤ちゃんを作る練習会★ だ!!) 

《カッッッッッ!!》←ふたりのヤローの誓いの光り

「藤井!かわいいエッちゃんの一大事だ!聞いてるか!?エッちゃんのことを思い出せ! ・・トットとそんなモンしまってしまえ!いつまで出してる!ソレどころじゃなくなったんだぞ!!」

ハッッ!……エッエッちゃん?
そうだよ エッちゃんだ… ”オ レ た ち の”……
”俺たち”の?
そう ”オ レ た ち の か わ い い エ ッ ち ゃ ん” だ クスッ…

俺…たち…… なんだろう……なんか……違和感が……
フジイィ……”オ レ た ち の”……言ってごらん?

    違う……・・・

「 ”俺 の か わ い い エ ッ ち ゃ ん ” だ !!」

「チッ…」←ナナオ

(エッちゃんが危ない! カバンを持ったスケベは最強になるらしい 大変だ!!)

 第二幕 [ メクルメク世界へ… ]  終

🌱第三幕 [ 収束 ]

 邪悪なオトコどもによって開かれた社会の窓は、閉じたと同時にオノレを取り戻し瑞月は無事復活。だが安心したのも束の間、新たな問題に立ち向かうべく瑞月と虹生は外へ飛び出した。結日は部屋に残り、虹生に復習を言い渡された。

「藤井!エッちゃんが行きそうなコンビニってどこだ!」
「ええとコッチかな…」

 何ということだ。あんなに毎日チェックしていた、”ミズキの安心ガイド”が全く役に立たない。混乱が混乱を呼び、すっかり我を失う。
虹生の話では”旺汰のカバン”の中には、得体の知れないモノが色々入っているという。彼はその中のひとつを食べ物と勘違いしたことがあると、そう話した。
瑞月には全く分からない世界だ。
そんな怪しいモノで――

「オレのことを…」

 ブルッと来た瑞月は、最後まで話を聞くことが出来なかった。
この青空の下のどこかで、恵風が今危険にさらされていると思ったら涙で景色がぼやけて来る。しっかりするんだ瑞月!泣いてはダメだ!恵風の無事を最後まで諦めてはいけないのだ。

(ハッ!アレはデヴィッド号!ちょうど良い所に!)

ワーイお兄ちゃん元気?朝ぶりだね!ボクはおトイレお散歩してたんだ。
あースッキリした!フフッ ”ダイちゃんおめでとう とってもデッカイの出たよ”って褒められちゃった!ねえねえエッちゃんと一緒じゃないの?ダレ?そのオスお兄ちゃんのオトモダチ?そんなオスより、ボクはエッちゃんに会いたかったなーダメだよお兄ちゃん、エッちゃんと一緒じゃないと

「ダイちゃん、お前の大好きなエッちゃんが危ないんだ どうかお前のチカラを貸して欲しい」
「ア、そう言えばオレのポッケにこんなモノが……藤井、コレ使えないかな」
「コレは?」
「旺汰の昨日の靴下だ」
「……やっ…てみるよ ダイちゃんこのニオイを嗅いで……このニオイの主がお前の大好きなエッちゃんを連れ去ったワルイヤツだ ソイツを見つけなければエッちゃんは……」

ぇえ!?ボクの大好きなエッちゃんが! どれ?お兄ちゃ……・・うっわっっナニコレッ!!スッゴイスケベなニオイがして、鼻が壊れそうだよ

「ダメか……ナナくん、思いのほかダイちゃんへのダメージが……彼の今後が心配だ・・ おや?俺のポッケにそう言えば…」
「ソレは?」
「お前らが来る前にコッソリ失敬した、エッちゃんのネコちゃんヘアゴムだ チョットお借りしたんだ」
「オマエまさかそれで……なるほど……エッちゃんに黙っててあげるからソレ寄こせよ ナンだったらこの靴下と交換するのはどうだ?」
「アッ!ダイちゃん!!」

 デヴィッド号は瑞月からネコちゃんヘアゴムを奪い、走り出した。

ぇえ!?ボクの大好きな、かわいいエッちゃんが危ない目に!?ドコ?ドコにいるの?エッちゃん! エ ッ ちゃ ーー ん !!
それにしてもさあエッちゃんって、ホントいいニオイだよね。はあ…今すぐ赤ちゃんが欲しくなってきちゃうよ……。

いた!ダレ?あのエッちゃんと手を繋いでるスケベ!エッちゃん今から行くよ!待っててエッちゃん! ボクが助けてあげるからね!!

「 行けえ!デヴィッド号! ワルイスケベをやっつけるんだ!! 」

エ  ッ  ちゃ ーーー  ん  !!

「きゃあ」

お兄ちゃん ボクやっぱりワルイスケベより、エッちゃんの方がいいや! 
エッちゃん!ボクの赤ちゃんたくさん産んでね!お兄ちゃんと競争だ!!

「コレ!ダイちゃんダメでしょ! エッちゃんいつもいつもごめんね ダイちゃんはエッちゃんが本当に大好きなんだよ」←藤井お父さん

「旺汰!」
「虹生!どうしたんだ?……エッちゃんと相談してるうちに、こんなに買ってしまったよ お前の好物のホシイモもある……ぞ?」

『!!』

 虹生は旺汰にしがみつき、唇を交わした。普段の彼らの親密さを知ってはいても、その実際を見たことはない。人目も憚ることなく強引に見えたのは、虹生の中にそうしたくなる理由があったからなのだろか。虹生もなにか得たいの知れない作用で動かされていたのだろうか。まるで地獄の中にいたような出来事が、ふたりの姿によって瑞月の中で薄らいで行った。
恵風を見ると、周りにチョウチョが飛んでるようにニコニコしてる。何事もなかった様子に瑞月は安堵し、これまでの大騒ぎがまるでウソだったように感じた。 
なぜあんなに我を忘れたようになっていたのか。……
ハタと瑞月は感づく。

(コレは…… キ ケ ン な 結 日 マ ジ ッ ク  ……?)

 やはり彼は平時を狂わすナニカを持っているらしい。 

「エッちゃんなに買ったの?持ってあげる」
「ユイは?」
「あは、結日はウチで待ってる」

 瑞月たちは先刻のことを一口も出さず、”これからどうする?”そんな話をしながら鳥海家に向かって歩いた。

「なんかホッペタ赤くない?」
「ぇえ!そ、そう?なんでだろナー」

(ナナくん、さっきのアレは俺たちだけのナイショにしておこうね。もうあんなコトは二度とごめんだ!……家で結日はひとりで一体ナニをしているんだろう……(ブルッ・・))

 🌱~bonus~

 エッちゃん
 なに?オータくん
 君に話たいことがあるんだけど……
 何だろう……
 ・・手っ……を つ、繋いでもいいかな
 いいよ!繋ごうオータくん!
 ヤッターありがとうエッちゃん!実は俺、ジョシとこんなふうに歩いたことがないんだウレシイナー
 ヘーッそうなんだ わたしもミズキだけかなあ ついこの前からだよ
 ヘ~そうだったんだあ……ねえエッちゃん知ってる?
 なに?
 君のその”不思議なマジック”に掛からない方法
 なぁにそれ……
 虹生はスッカリ君のマジックにやられてしまったんだけどね、俺には秘策があって何とか大丈夫だったんだ ヤバイ!ってなった時、俺は”藤井を見る”ことにして君のマジックから逃れていた 虹生にも教えておくべきだったと、後の祭りさ……はっはっはっ・・でも、ちょっと困った副反応がコレにはあるんだ
 へえ…なに?
 あのね、君のマジックがハンパなくって、そばにいるだけで余波を浴びてしまう つまり、藤井のことが”なぜかかわいい藤井のミズキ”に見えてしまって、ヤーはっはっはっ・・俺、どうしちゃったんだろうって最初自分を疑ったモンだ……君のマジックってホンっとスゴイよね
 ふーんそうなの?
 そうなんだよ そして今…藤井がいない……コレはどういうことかと言うと……イイようで非常に……ヤ バ イ ということさ
 どうして?
 ”どうして”?クスッ……(ギュ)←エッちゃんと繋いでる旺汰の手
 ・・・
 エッちゃん……君ってかわいいね・・
 ……
 ねえエッちゃん知ってる?
 なに?
 俺が虹生からなんて言われてるか
 う~ん…なんだっけ?
 君からも言われたいなあ……君のお手々とってもスベスベしていて、気持ちがいいね((ナデナデ))
 あ!オータくん ほらトンボ!もうそんな時期なんだね……
 エッちゃん……君…本当にスベスベだねえ…きっと色んなトコロもスベスベ…そしてフワッフワなんだろうねえ……
 オータくん見て!カラスがゴミ食ってるよダメだよねえ
 ねえエッちゃんダッコしてい……
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