優柔不断ゾンビ~ゾンビがはびこる世界で女の子と海に行ったバカの話~

でぃくし

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AIの裏をかけ!

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 『残り30分で当院の営業を終了いたします!長らく当院をご愛顧いただき、誠にありがとうございました』

 「シンイチ!お前自分で触ってんじゃねーよ!」
 「落ち着け!俺じゃねーつの!」

 見ると優ちゃんが自爆ボタンのある機械の上に覆いかぶさるように倒れていた。どうやら傷は塞がったようだが、体力はまだまだ回復しきっていないらしい。



 「はー、はーっ……」
 「優ちゃん!」

 苦しそうに肩を上下させる彼女を背負い、シンイチは再びシャッター制御スイッチを探し始める。どんな状況でも絶対に諦めない男、それが我猛シンイチなのだ!



 『自爆まで残り29分!当院へのポイント機能のお問い合わせは、メールまたは番号案内サービスでご確認ください』

 「ええいうるさい!」
 「ああもう!時間がねえぞ!お終いだ!」

 バッハインベンションの流れる中、シンイチの視線がぴたりと止まる。

 貼り紙だ。『シャッター制御装置はこちら』という手書きの文字と犬のイラストが描かれているではないか!



 その先にあるのは……あった!
 シャッター制御装置だ!



 『自爆まで残り28分!当院の駐車場をご利用のお客様は速やかにご退館ください』



 だがシャッター制御装置に手を伸ばしたその時だった。

 『ふははは!よくも、よくも私の研究を台無しにしてくれたな侵入者よ!』

 突然、自爆を告げるアナウンスとは異なる機械音声が響き渡る。



 「なんだって?」

 『私はこの動物病院のシステムを管理しているAIだ。いわばここを支配する神だ!だが今はそんなことはどうでもいい、お前たちはここで死ぬのだからな!』

 「なんだって?」

 ゾンビが去ってまた困難!
 次に現れたのは動物病院を支配するという自称AIであった。

 スピーカーから物々しい声が聞こえてくる。

 『シャッター制御スイッチに少しでも触れたら自爆装置のカウントがゼロになる仕掛けを用意した!さあどうする侵入者よ!ふはははは!』

 「なんだって!」



 それはまるで人間を遥か高みから見下ろす神の如きふるまいだろうか。しかし今のシンイチたちにそんなことを考えるほどの余裕はない。



 「なにい!AIだと!?本当は人間が中に入ってるんじゃないのか!」

 『なんだと!この私をお前たちのような劣等種と一緒にするな!全ては私の思い通りだ、今や貴様らの命運は私が完全に掌握しているのだ!』

 「嘘をつけ!そんな話を誰が信じるんだよ!」



 『なんだと!本当だ!信じろ!』

 「嘘をつけ!スピーカーに引っ込んでるだけのお前に何が出来るってんだ!」

 『スピーカーだけと思うな!そこの電灯のような取るに足らないものまで私はコントロールできるのだ!』

 「電灯だと?」
 「嘘つけを嘘を!」

 『本当だって言ってるだろ!』

 「嘘ばっかこいてんじゃねえ!バカヤロウコノヤロウ!」

 『なんでそこまで頑ななんだ!?この劣等種め!いいか?!よく見てろ!』



 自称AIの苛立った声がスピーカーから響いたかと思った次の瞬間、ぷつんと天井の蛍光灯が切れてしまったではないか!



 「あ、切れた」

 『どうだ?私がやったんだ!これでわかったか?私がここを支配している神であると……』

 「たまたま電灯の寿命が来ただけだろ」
 「だよな。なんか信じられねーよな」

 『こ、こいつらあ~……れ、劣等種め!いい加減にしろ!』



 どうやらこのAIとやらは相当熱くなりやすい性格のようである。あるいはゾンビのはびこる世界でAIもまたじわじわと狂気に蝕まれているのかもしれない。

 しかしシンイチにはそんなことはどうでもよかった!



 『自爆まで残り27分!すべてのスタッフは速やかに院内の指定された位置へと移動してください』



 「おっとそうだ、本当になんでもコントロール出来るってんなら自爆装置を停止してくれよ!」

 『なに!?自爆装置だと!?』

 「ああ、そしたら俺たちはお前がここの支配者だと認めるからよ!な?いいだろ?」




 『認めるのか?私がここを完全に支配しているということを?!』

 「おお、二言はねえよ!どうせ無理だろうがな!」

 『よ、よおし!偏見に凝り固まった劣等種め!ならば見せてやろう!私の力を!いいか?ちょっと待ってろよ……』

 「……」

 ついついうっかり友人の男の挑発に乗ってしまうAI。



 『自爆まで残り25分!自爆における死亡または負傷および破損につきましては当院は一切の責任を負いません』



 「おいどうした!AI様なら止められるんじゃないのか早くしないと自爆するぞ!」
 『あ、ああ、わかってるよ!』
 「……」

 『あれ?おかしいな、なんでだ』



 シンイチは友人とAIのやり取りを静かに見守っていた。
 それにしても人間のような反応を返すAIだ、いや人間くさいというよりどこか子供じみていて、騙されやすく感情的だ。



 「どうした?早くしてみせろ」

 そんなシンイチの言葉にAIはどこか焦ったような、そしてどこか恥ずかしそうな声でこう答える。

 『う、うるさい!ちょっとまってろよ!』

 なんとか自爆装置を停止しようとムキになっていくAI。
 しかし……それからも無情に時は過ぎていくのであった。



 『自爆まで残り22分!未払い分の給与などの訴えがある従業員の方は指示があるまでその場で待機してください』



 『ああーもうだめだあ!』

 「落ち着けって。まだ20分以上あるだろ?」
 「お前なら出来るって信じてるぞ」

 『わ、わかったからちょっと黙ってくれ!お前らが騒ぐからノイズが入るんだよ!』

 このAIは責任転嫁まで出来るみたいだ。シンイチたちはこの反応を見てますますただの機械ではないことを確信するのだった。



 そして……。
 ついにその時は来た。

 サイレンがぴたりと止まり、自爆までの残り時間をカウントしていたアナウンスも止まった。どうやらAIが自爆装置を停止させることに成功したようだ。



 『や、やったぁああ~~!!出来たあぁああ!!』

 「おーし、やれば出来るじゃねえか!」
 「いよっ、神様!」
 『ふふっ、こいつらあ~調子に乗ってんじゃないぞお~』

 「今だ!シンイチ、シャッターを開けろ開けろ!」
 「よしきた!」

 『あっ!!?こいつう!?』

 シンイチがシャッター制御スイッチを操作すると、ずずんと足元が揺れてシャッターの開閉音が院内にガラガラと響き渡った。



 『ふ、ふん!私の裏をかいたつもりか!私はこの動物病院のシステムを支配しているAIだぞ!』



 「わかってるって」
 『しかし神である私を騙そうとしたその度胸と胆力に免じて、シャッターはそのままにしておこう!』
 「お前中々いいやつじゃねーか!」

 『おだてても無駄だ!……どうせ貴様らはここで死ぬのだからな!私の研究を妨害した貴様らには死あるのみ!』

 シャッターも閉じずにご満悦なAIの叫びが病院の外まで響き渡っていく。その自信に満ちた声はまるで人間のようだった。
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