いつの日かの誰か。

瀬戸 朱音

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ピンクのマスク

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  受験はなんとか合格していた。ただ、自分の受験番号を確認しているときに、女の子を見失ってしまっていた。

  中学の卒業式を終えて、春休みの期間は課題と女の子の事で数週間あったはずなのに、数日の気分ですぐに終わってしまった。

────入学式
  新入生が集まるあの場所ならきっと、女の子を見つけられると思っていた。一旦新しい教室で、新しい担任の話を聞く、パッと見た感じ、このクラスにあの子はいない。名前も知らないし、出身中学も知らないので、探すのには少し時間がかかるかもしれない。
  体育館に移動して、決められた席に座る。校長の話は思ったよりも早く終わり、新入生の点呼が始まった。「これなら、見つけられるかもしれない!」と思ったのもつかの間、僕のクラスが後ろの方だったのもあって前のクラスが全然見えなかった。


  一ヶ月ほど経ち、席の近かった男子と仲良くなった。彼にもその子の話をしたがまるで手がかりは見つからず、自分の中でもそれは本当に現実だったのかと疑いはじめるくらい何一つ情報を得ることはできなかった。
  ある日、手がかりを探してクラスの仲良くなった人に話をしていた時、1人の男子がこう言った。 
「マスクしてたなら、花粉症とかだったんじゃね?その時期になれば分かるだろ」
  確かに、しっかり覚えている顔の半分以上はマスクだった。
  それから毎日のように出来るだけその子のことを考えた。その時期になるまで、忘れてしまわないように。



  冬に入り風邪予防などでマスクをつける人が増えてきた。何ヶ月もあの子を探すためにチラチラと同学年の人を見ていたので、ほぼ全ての人の顔を覚えてしまった。だが、やはりマスクだけで大分印象が変わる。マスクをすると、目と眉しか見えないのでそこだけが強調されたみたいに見える。
  そう言えば彼女はピンクのマスクをしていた。最近は白以外にも何色ものマスクがあり、女子の中でピンクはあまり珍しいものでも無く、何人かの女子はピンクのマスクをしていた。だが、見た限りあの時見た子の姿はやはり見つけられない。


  そうこうしている間にはやくも一年が経ってしまった。これまでにあった学校のイベントもぼーっとしている内にすべて何もなく終わってしまった。
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