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3日目

第15話 三日目:チーズと牛乳@富良野チーズ工房

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 富良野で真っ先に向かったのは、「富良野チーズ工房」だ。
 ここではチーズや牛乳、それを使用したちょっとしたスイーツなどが販売されている。
 チーズやピッツァの手作り体験もできるのだが、時間の関係で参加できなかったのが残念だ。

 私と親友は、二階の直販コーナーに足を運ぶ。
 なんと。なんとそこでは、販売しているチーズの試食ができるのだ。
 試食ができたのは、ワインチェダーズ、メゾン・ドゥ・ピエール、セピアの三種類。

 「ワインチェダーズ」は「ふらのワイン(赤)」入りのナチュラルチーズで、ワインの着色により、チーズの表面が大理石のような模様が浮き出しているオシャレなものだ。
 ほんのりとワインの風味が香る、味もオシャレな一品。

 「メゾン・ドゥ・ピエール」は、白カビのソフトチーズだ。
 これは普通においしいな、くらいだった。

 そして最後は「セピア」。こちらは白カビのカマンベールチーズなのだが、いかすみパウダー入りなので、中のチーズが黒い。
 始めはその禍々しい見た目にひるんだが、おそるおそる口に入れた私と親友は目を見合わせる。

「おいしい!」
「うまぁ……! これはあとで買おう」
「そうだね、買おう」

 このみっつは、ネットショップなどでも取り扱いがあるので、是非ご賞味あれ。

 試食を済ませた私たちは店内を見て回る。

「ぽみー。ふらの牛乳っていうのが売ってるよ」
「おお! 飲んでみたい!」

 浦幌産牛乳のおかげですっかり牛乳好きになった私は、ノリノリで「ふらの牛乳」(と、スフレとチーズケーキ)を購入した。

 休憩所があったので、そこで牛乳をこくりと一口。

「……!!」

 牛乳は奥が深い。
 驚きと共に押し寄せる感動が、私から語彙力を奪い去る。

「……! ……!」
「! ……! ~!」

 私と親友は、無言でこの気持ちを分かち合った。

 北海道初日に飲んだ、「北海道牛乳カステラ」のコーヒー牛乳。
 二日目の朝食ビュッフェで飲んだ、浦幌産の牛乳。
 どちらもさっぱりとした甘みが特徴的だった。
 北海道産の牛乳は、みなそうなのだと思っていた。

 だが、違う。「ふらの牛乳」は、そういうのじゃない。
 こいつは、旨みで舌を溺れさせやがる。白カビチーズを牛乳に戻したような、円熟味と新鮮さが共存しているに近い、奇跡の味だ。

「酒飲みてえ」

 私が思わずそう呟くと、親友は「分かる」と頷いた。
 彼女の牛乳瓶はすでにスッカラカンだった。飲むの早すぎだろ。

 購入していたスフレとチーズケーキも食べたのだが、これらの味が今となっては思い出せない。それほどに、「ふらの牛乳」の衝撃が大きかった。
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