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1日目

第2話 一日目:海鮮丼屋「きたみなと」@新千歳空港

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 食べたいものはたくさんあった。だがやはり、北海道といえば海鮮だろう。
 私は「きたみなと」という、手巻きと茶漬けを楽しめる海鮮丼屋に入った。新千歳空港にはいくつか海鮮丼屋があったが、海鮮がたくさん載っていて、かつ値段がお手頃のところを探したときに、一番しっくり来たのがここだったのだ。

 私はメニューを開き、「究極丼」という名の、北海道中の海鮮をぶち込んだんじゃないかと思うほどワガママボディな海鮮丼を注文した。
 ぷりっぷりのホタテ、ウニ、カニ、イクラがドカーンと載っていて、その下に数の子やマグロ、ネギトロ、鯛なども入っていたと思う。
 
 もう意味が分からん。主役級のやつらがウニやホタテの土台役になってしまっているのだ。中学時代はエース級だったのに、高校ではレギュラーになれずベンチをあたためていた野球部を連想してしまい少し寂しくなりながら、海鮮丼を口に運ぶ。

 困った。うまい。特にウニが信じられないほどうまい。色も艶やかで、臭みが全くなく、新鮮だからか、さっぱりとした味の中でもしっかりとウニの旨みが主張している。

 他の具ももちろんうまい。確かにうまい。しかし、具が載りすぎていて、内陸県の私の舌では明らかにキャパオーバーだ。
 まるで性癖をぶちこみすぎて、原作の原型を留めていない同人誌のようだ、と私は思った。だがその性癖が全て私にブッ刺さるので、全身に矢を受けてもなお直立で最期を迎えた悪来典韋さながら、私はいかつい表情で箸を手に持ったまま息をし忘れていた。

 私の知っている海鮮丼はだいたい具が少ないので、食べ進めていくうちにご飯が余ってしまう。だから途中でお出汁を提供して、お茶漬けにすることを勧めるのではないのだろうか。
 それなのに「きたみなと」の海鮮丼は、具が多すぎてご飯が足りない。ご飯が足りないのにお出汁を提供されてしまい、流れでお茶漬けにしてしまってすぐ後悔した。

 お出汁は死ぬほどうまい。少し疲れてしまった胃を癒してくれる優しい味だった。
 だが、残っていた美味しい刺身が茹で上がってしまい味が落ちてしまった。こんなもったいないことを何故してしまったんだ私は。お茶漬けになんてせず、スープとして出汁を飲めばよかった。悲しい。
 だが、間違いなく、どれもこれも最高においしかった。

 今日という日のためにブラックホール級の胃を用意していたというのに、海鮮丼たった一杯ですでに満足感がすごい。恐るべし、北海道。
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