176 / 200
砂漠の国編
第176部分 ボードゲーム④
しおりを挟む
盤上のことは全てナターシャに任せて、ゲームは終盤戦に突入する。
「ハヤテ、相手の様子がおかしいよ。大駒をわざと取らせているみたい」
相手の大駒は司令官と英雄しかなくなっていた。
「もう隠すつもりはないか……」
ここまでくると相手の狙いは明確だ。
「ハヤテ、こっちの竜騎兵を犠牲にすれば、相手の英雄を取れるよ」
ナターシャにそう言われて、少し考える。
「……いや、英雄の駒は取らないでくれ」
多分、今は相手の英雄は取ったら、酷いことになる。
「分かった。なら、司令官の駒を狙う?」
こちらの砲兵隊の駒で相手の司令官の駒に、王手がかけられる。
何かしらの《緊急札》を使われるかもしれない。
しかし、相手に札を使わせることも重要だ。
「そうだね。狙いを司令官にしてくれるかい?」
「分かったよ。フィールレイさん、砲兵隊の駒を相手の司令官の駒の直線上に置いて」
指示を受けたフィールレイが駒を移動させる。
対して、王手がかけられているのに相手は司令官の駒を放置した。
そして、英雄の駒を動かす。
露骨な罠だ。
しかし、こちらの司令官の駒の正面に、敵の英雄の駒が来てしまったので取るしかない。
でも、取ると恐らく…………
「どうする、ハヤテ? 相手の英雄を取れるけど、これって絶対に罠だよね?」
「…………そうだね。だから相手の英雄は取らない。札で対処するよ」
俺は《自発札・布陣変更》を使用した。
これは二つの駒の場所を変える札だ。
「フィールレイ、司令官の駒と騎兵隊の駒の場所を変更してくれ!」
「分かった」と言い、駒の位置を変えようとする。
しかし、ここで問題が起きた。
「…………これはどうすればいいんだ?」
フィールレイは司令官の駒を持ち上げた状態で停止する。
「えっ……あっ!」
二つの駒の場所を変更したい。
それなのに騎兵隊の駒を動かせない。
「フィールレイ、一旦、司令官の駒を置けないか?」
俺に言われて、フィールレイは司令官の駒を置こうとしたが、その瞬間、警告音のようなものが鳴り響いた。
『その場所には置けない』
巨大な蛇人が宣言する。
「じゃあ、二つの駒をどうやって動かすんだよ!」
『…………』
黙りやがった…………
俺とナターシャで持ち上げるか?
いや、あんなでかい駒、魔法を使えない俺たちには無理だ。
一体どうする?
俺が対処方法を考えている時だった。
部屋の壁の一部が凄い音と共に崩れ、穴が開いた。
「今のは『波動砲』? ってことは…………」
空いた穴の中から人影が二つ、現れる。
「初めからこうすればよかったんじゃ。馬鹿正直に順路を守る必要なんてなかったの」
「何を得意気になっている。爆睡するお前を私が見捨てなかったことに感謝しろ」
「おっ、ハヤテたちも来ておるの」
リザとアイラだ
まったく、最高のタイミングだよ。
「なんじゃ、この場所は? ハヤテ、何をしておる?」
「説明したいこともあるけど、まずは協力してくれるか?」
アイラは理由も聞かずに「分かった」と言ってくれた。
「アイラ、フィールレイの目の前の駒を持ち上げられるか?」
「簡単じゃ」
アイラは騎兵隊の駒を持ち上げる。
空いたマスの所にフィールレイは司令官の駒を置いた。
「フィールレイ、アイラに騎兵隊の駒の置く場所を教えてやってくれ」
「分かった。…………アイラとの共同作業…………」
フィールレイは変な笑顔になっていた。
「……おぬしの頭の上に置いても良いかの?」
「それがアイラの愛なら受け止める!」
「…………」
アイラはドン引きした。
俺も同感だ。
「まったく、おぬしは…………じゃが、ハヤテを助けてくれたみたいじゃの。そのことに関しては感謝する」
アイラがお礼を言うと、フィールレイは視線を逸らした。
恐らく、報酬(アイラの服一着)のことが脳裏を過ったのだろう。
「…………なんじゃ、おぬしらしくない反応じゃの? まさか…………」
アイラは何かに気付いたようだった。
彼女も相当に勘は鋭い。
俺とフィールレイの不健全な契約に気付いたのかもしれない。
「ハヤテに惚れたか。窮地を乗り越えて、親睦を深めたか? 吊り橋効果というやつかの?」
アイラは心配そうに言う。
どうやらバレてい無さそうだ。
アイラの問いに対して、フィールレイは急にスン……、となり、「いや、それは絶対にない」と冷静に強く否定した。
そこまで拒絶されるとちょっと傷つくな。
「ハヤテ、相手の様子がおかしいよ。大駒をわざと取らせているみたい」
相手の大駒は司令官と英雄しかなくなっていた。
「もう隠すつもりはないか……」
ここまでくると相手の狙いは明確だ。
「ハヤテ、こっちの竜騎兵を犠牲にすれば、相手の英雄を取れるよ」
ナターシャにそう言われて、少し考える。
「……いや、英雄の駒は取らないでくれ」
多分、今は相手の英雄は取ったら、酷いことになる。
「分かった。なら、司令官の駒を狙う?」
こちらの砲兵隊の駒で相手の司令官の駒に、王手がかけられる。
何かしらの《緊急札》を使われるかもしれない。
しかし、相手に札を使わせることも重要だ。
「そうだね。狙いを司令官にしてくれるかい?」
「分かったよ。フィールレイさん、砲兵隊の駒を相手の司令官の駒の直線上に置いて」
指示を受けたフィールレイが駒を移動させる。
対して、王手がかけられているのに相手は司令官の駒を放置した。
そして、英雄の駒を動かす。
露骨な罠だ。
しかし、こちらの司令官の駒の正面に、敵の英雄の駒が来てしまったので取るしかない。
でも、取ると恐らく…………
「どうする、ハヤテ? 相手の英雄を取れるけど、これって絶対に罠だよね?」
「…………そうだね。だから相手の英雄は取らない。札で対処するよ」
俺は《自発札・布陣変更》を使用した。
これは二つの駒の場所を変える札だ。
「フィールレイ、司令官の駒と騎兵隊の駒の場所を変更してくれ!」
「分かった」と言い、駒の位置を変えようとする。
しかし、ここで問題が起きた。
「…………これはどうすればいいんだ?」
フィールレイは司令官の駒を持ち上げた状態で停止する。
「えっ……あっ!」
二つの駒の場所を変更したい。
それなのに騎兵隊の駒を動かせない。
「フィールレイ、一旦、司令官の駒を置けないか?」
俺に言われて、フィールレイは司令官の駒を置こうとしたが、その瞬間、警告音のようなものが鳴り響いた。
『その場所には置けない』
巨大な蛇人が宣言する。
「じゃあ、二つの駒をどうやって動かすんだよ!」
『…………』
黙りやがった…………
俺とナターシャで持ち上げるか?
いや、あんなでかい駒、魔法を使えない俺たちには無理だ。
一体どうする?
俺が対処方法を考えている時だった。
部屋の壁の一部が凄い音と共に崩れ、穴が開いた。
「今のは『波動砲』? ってことは…………」
空いた穴の中から人影が二つ、現れる。
「初めからこうすればよかったんじゃ。馬鹿正直に順路を守る必要なんてなかったの」
「何を得意気になっている。爆睡するお前を私が見捨てなかったことに感謝しろ」
「おっ、ハヤテたちも来ておるの」
リザとアイラだ
まったく、最高のタイミングだよ。
「なんじゃ、この場所は? ハヤテ、何をしておる?」
「説明したいこともあるけど、まずは協力してくれるか?」
アイラは理由も聞かずに「分かった」と言ってくれた。
「アイラ、フィールレイの目の前の駒を持ち上げられるか?」
「簡単じゃ」
アイラは騎兵隊の駒を持ち上げる。
空いたマスの所にフィールレイは司令官の駒を置いた。
「フィールレイ、アイラに騎兵隊の駒の置く場所を教えてやってくれ」
「分かった。…………アイラとの共同作業…………」
フィールレイは変な笑顔になっていた。
「……おぬしの頭の上に置いても良いかの?」
「それがアイラの愛なら受け止める!」
「…………」
アイラはドン引きした。
俺も同感だ。
「まったく、おぬしは…………じゃが、ハヤテを助けてくれたみたいじゃの。そのことに関しては感謝する」
アイラがお礼を言うと、フィールレイは視線を逸らした。
恐らく、報酬(アイラの服一着)のことが脳裏を過ったのだろう。
「…………なんじゃ、おぬしらしくない反応じゃの? まさか…………」
アイラは何かに気付いたようだった。
彼女も相当に勘は鋭い。
俺とフィールレイの不健全な契約に気付いたのかもしれない。
「ハヤテに惚れたか。窮地を乗り越えて、親睦を深めたか? 吊り橋効果というやつかの?」
アイラは心配そうに言う。
どうやらバレてい無さそうだ。
アイラの問いに対して、フィールレイは急にスン……、となり、「いや、それは絶対にない」と冷静に強く否定した。
そこまで拒絶されるとちょっと傷つくな。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる