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砂漠の国編

第176部分 ボードゲーム④

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 盤上のことは全てナターシャに任せて、ゲームは終盤戦に突入する。

「ハヤテ、相手の様子がおかしいよ。大駒をわざと取らせているみたい」

 相手の大駒は司令官と英雄しかなくなっていた。

「もう隠すつもりはないか……」

 ここまでくると相手の狙いは明確だ。

「ハヤテ、こっちの竜騎兵を犠牲にすれば、相手の英雄を取れるよ」

 ナターシャにそう言われて、少し考える。 

「……いや、英雄の駒は取らないでくれ」

 多分、今は相手の英雄は取ったら、酷いことになる。

「分かった。なら、司令官の駒を狙う?」

 こちらの砲兵隊の駒で相手の司令官の駒に、王手がかけられる。

 何かしらの《緊急札》を使われるかもしれない。
 しかし、相手に札を使わせることも重要だ。

「そうだね。狙いを司令官にしてくれるかい?」

「分かったよ。フィールレイさん、砲兵隊の駒を相手の司令官の駒の直線上に置いて」

 指示を受けたフィールレイが駒を移動させる。

 対して、王手がかけられているのに相手は司令官の駒を放置した。
 そして、英雄の駒を動かす。

 露骨な罠だ。
 しかし、こちらの司令官の駒の正面に、敵の英雄の駒が来てしまったので取るしかない。

 でも、取ると恐らく…………

「どうする、ハヤテ? 相手の英雄を取れるけど、これって絶対に罠だよね?」

「…………そうだね。だから相手の英雄は取らない。札で対処するよ」

 俺は《自発札・布陣変更》を使用した。

 これは二つの駒の場所を変える札だ。

「フィールレイ、司令官の駒と騎兵隊の駒の場所を変更してくれ!」

「分かった」と言い、駒の位置を変えようとする。

 しかし、ここで問題が起きた。

「…………これはどうすればいいんだ?」

 フィールレイは司令官の駒を持ち上げた状態で停止する。

「えっ……あっ!」

 二つの駒の場所を変更したい。
 それなのに騎兵隊の駒を動かせない。

「フィールレイ、一旦、司令官の駒を置けないか?」

 俺に言われて、フィールレイは司令官の駒を置こうとしたが、その瞬間、警告音のようなものが鳴り響いた。

『その場所には置けない』

 巨大な蛇人が宣言する。

「じゃあ、二つの駒をどうやって動かすんだよ!」

『…………』

 黙りやがった…………

 俺とナターシャで持ち上げるか?
 いや、あんなでかい駒、魔法を使えない俺たちには無理だ。

 一体どうする?
 

 俺が対処方法を考えている時だった。
 部屋の壁の一部が凄い音と共に崩れ、穴が開いた。

「今のは『波動砲』? ってことは…………」

 空いた穴の中から人影が二つ、現れる。

「初めからこうすればよかったんじゃ。馬鹿正直に順路を守る必要なんてなかったの」

「何を得意気になっている。爆睡するお前を私が見捨てなかったことに感謝しろ」

「おっ、ハヤテたちも来ておるの」

 リザとアイラだ
 まったく、最高のタイミングだよ。

「なんじゃ、この場所は? ハヤテ、何をしておる?」

「説明したいこともあるけど、まずは協力してくれるか?」

 アイラは理由も聞かずに「分かった」と言ってくれた。

「アイラ、フィールレイの目の前の駒を持ち上げられるか?」

「簡単じゃ」

 アイラは騎兵隊の駒を持ち上げる。

 空いたマスの所にフィールレイは司令官の駒を置いた。

「フィールレイ、アイラに騎兵隊の駒の置く場所を教えてやってくれ」

「分かった。…………アイラとの共同作業…………」

 フィールレイは変な笑顔になっていた。

「……おぬしの頭の上に置いても良いかの?」

「それがアイラの愛なら受け止める!」

「…………」

 アイラはドン引きした。
 俺も同感だ。

「まったく、おぬしは…………じゃが、ハヤテを助けてくれたみたいじゃの。そのことに関しては感謝する」

 アイラがお礼を言うと、フィールレイは視線を逸らした。
 恐らく、報酬(アイラの服一着)のことが脳裏を過ったのだろう。

「…………なんじゃ、おぬしらしくない反応じゃの? まさか…………」

 アイラは何かに気付いたようだった。
 彼女も相当に勘は鋭い。

 俺とフィールレイの不健全な契約に気付いたのかもしれない。

「ハヤテに惚れたか。窮地を乗り越えて、親睦を深めたか? 吊り橋効果というやつかの?」

 アイラは心配そうに言う。
 どうやらバレてい無さそうだ。

 アイラの問いに対して、フィールレイは急にスン……、となり、「いや、それは絶対にない」と冷静に強く否定した。

 そこまで拒絶されるとちょっと傷つくな。
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