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砂漠の国編
第175部分 ボードゲーム③
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俺の手札は二枚。
相手は一枚。
手札も盤上もこっちが有利だが、気は抜けない。
また好都合ドローをされる可能性がある。
「それに司令官と英雄の駒は慎重に使わないと……」
司令官は将棋の玉やチェスのキングと同じ動き、役割のある駒だ。
全包囲に一マスしか進めない駒で取られたら負ける。
そして、英雄はチェスで言うクイーン+ナイトの動きが出来る超強力な駒だ。
これを取られたら、ゲームが一気に不利になる。
結局、俺は色々なリスクを考え、歩兵隊を動かすことにした。
これはかなり頭を使いそうだ。
まず、必死に最善手を探す。
その上でカードプールを思い出し、使われる可能性のある札を予想しながら、戦わないといけない。
「二つのゲームを同時にやっている気分だ。頭がクラクラする……」
慣れれば、出来るようになるかもしれない。
しかし、いきなりやれと言われて出来るものではない。
『我は騎兵隊を前進させて、汝の砲兵隊を撃破』
「えっ? あっ!」
しまった!
これは凡ミスだ。
相手にカードも使わせずに一方的にこちらの駒を取られてしまった。
「ハヤテ、大丈夫?」
ナターシャはそう言いながら、自分の水筒とハンカチを渡してくれた。
「凄い汗。それにもうずっと水も飲まずにやってるよ」
ナターシャに言われて、自分の現状を自覚した。
勝負はすでに中盤戦、ここまで来るのにどれだけ時間を使っただろう?
少なくとも一時間は経過している。
その間、ずっと盤面とカードのことを考えて集中していたってことか。
それを自覚した瞬間、急に耳鳴りがしてきた。
ナターシャに渡された水筒の水を一気に飲み干した。
「ありがとう。君のおかげで少しは頭が回りそうだよ」
と言ったものの少し頭が回った程度で勝てる相手じゃない。
敗北、それが頭を過った。
「……ねぇ、ハヤテ、もしよかったら、盤上は私に任せてくれるかな?」
「ナターシャが駒取りゲームを?」
「うん、駒の種類は違うけど、昔、同じような駒取りゲーム、得意だったの。盤上での最善手は私が見つけるから、ハヤテはそれを折り込んだ上で作戦を考えて。そうすれば、負担が減ると思う」
このまま盤上とカード、二つのことを俺がやっていても勝ち目はない。
だったら、勝てる可能性に賭けるべきだろう。
「分かった。最善手を考えるのは君に任せるよ」
「ありがとう」
俺はこの駒取りゲームのルールと駒の動かし方を教える。
ナターシャは真剣な表情で盤上を見つめた。
俺が見たことのないナターシャの表情だ。
「普通に駒を進めるなら、こっちの第二竜騎兵隊で相手の第二砲兵隊を取るのが最善手だよ」
「分かった…………」
俺は起きうる可能性を考えて上で、ナターシャの言った最善手を打つことにした。
「フィールレイ、頼む!」
「任せろ」
フィールレイが竜騎兵隊の駒を相手の砲兵隊の駒に叩きつけようとした時だった。
『《緊急札・反攻》を発動。攻めて来た敵の駒を破壊する』
フィールレイが叩きつけた竜騎兵隊の駒が逆に砕け散った。
「ごめん、ハヤテ…………」
ナターシャが申し訳なさそうにする。
「大丈夫、君のせいじゃないよ。それにこうなる可能性も知っていた。《誘発札・特攻》を発動。竜騎兵が破壊された時、破壊した相手の駒も道連れにする」
飛び散った破片が残っていた砲兵隊へ襲い掛かった。
砲兵隊の駒は砕け散る。
これで残っている相手の大駒は司令官、英雄、それに竜騎兵兵隊と砲兵隊が一体ずつ。
こっちは司令官、英雄、騎兵隊、竜騎兵が一体ずつ、それに砲兵隊が二体残っている。
その代わり歩兵隊は相手が六体で、こっちは四体だけど力のある大駒を多く持っている方が有利なはずだ。
「んっ、ちょっと待てよ……」
盤上のことをナターシャ任せたおかげで思考に余裕が出来た。
このゲームの展開の違和感を覚える。
でも、どこだ?
何がおかしい?
そして、俺は巨大な蛇人族が一番初めに《自発札・兵種変更》で歩兵隊を対象にしなかったことを思い出した。
普通なら一番弱い歩兵隊の駒の兵種を変更するはずだ。
それをしなかったのは明確な狙いがあるからだろう。
「そうだ、そうだよ。というか、これは俺の望んだ展開じゃないか。その為にあの札を入れたんじゃないか」
冷静になって、俺がどれだけ余裕がなかったかを自覚した。
ナターシャに盤上を任せなかったら、このゲームは負けていただろう。
今、俺の手札にあの札はない。
だったら、時間を稼がないといけないだろう。
「ナターシャ、一緒に勝とうか」
「もちろんだよ」
俺たちがそんなことを言っていると
「おい、私だって頑張っているだろ」
と下からフィールレイが言ってきた。
報酬の為にやっていると思ったが、案外、乗り気なのかもしれない。
「そういえば、報酬のアイラの服は洗濯前のが良い」
……いや、だたのクレイジーサイコレズか。
相手は一枚。
手札も盤上もこっちが有利だが、気は抜けない。
また好都合ドローをされる可能性がある。
「それに司令官と英雄の駒は慎重に使わないと……」
司令官は将棋の玉やチェスのキングと同じ動き、役割のある駒だ。
全包囲に一マスしか進めない駒で取られたら負ける。
そして、英雄はチェスで言うクイーン+ナイトの動きが出来る超強力な駒だ。
これを取られたら、ゲームが一気に不利になる。
結局、俺は色々なリスクを考え、歩兵隊を動かすことにした。
これはかなり頭を使いそうだ。
まず、必死に最善手を探す。
その上でカードプールを思い出し、使われる可能性のある札を予想しながら、戦わないといけない。
「二つのゲームを同時にやっている気分だ。頭がクラクラする……」
慣れれば、出来るようになるかもしれない。
しかし、いきなりやれと言われて出来るものではない。
『我は騎兵隊を前進させて、汝の砲兵隊を撃破』
「えっ? あっ!」
しまった!
これは凡ミスだ。
相手にカードも使わせずに一方的にこちらの駒を取られてしまった。
「ハヤテ、大丈夫?」
ナターシャはそう言いながら、自分の水筒とハンカチを渡してくれた。
「凄い汗。それにもうずっと水も飲まずにやってるよ」
ナターシャに言われて、自分の現状を自覚した。
勝負はすでに中盤戦、ここまで来るのにどれだけ時間を使っただろう?
少なくとも一時間は経過している。
その間、ずっと盤面とカードのことを考えて集中していたってことか。
それを自覚した瞬間、急に耳鳴りがしてきた。
ナターシャに渡された水筒の水を一気に飲み干した。
「ありがとう。君のおかげで少しは頭が回りそうだよ」
と言ったものの少し頭が回った程度で勝てる相手じゃない。
敗北、それが頭を過った。
「……ねぇ、ハヤテ、もしよかったら、盤上は私に任せてくれるかな?」
「ナターシャが駒取りゲームを?」
「うん、駒の種類は違うけど、昔、同じような駒取りゲーム、得意だったの。盤上での最善手は私が見つけるから、ハヤテはそれを折り込んだ上で作戦を考えて。そうすれば、負担が減ると思う」
このまま盤上とカード、二つのことを俺がやっていても勝ち目はない。
だったら、勝てる可能性に賭けるべきだろう。
「分かった。最善手を考えるのは君に任せるよ」
「ありがとう」
俺はこの駒取りゲームのルールと駒の動かし方を教える。
ナターシャは真剣な表情で盤上を見つめた。
俺が見たことのないナターシャの表情だ。
「普通に駒を進めるなら、こっちの第二竜騎兵隊で相手の第二砲兵隊を取るのが最善手だよ」
「分かった…………」
俺は起きうる可能性を考えて上で、ナターシャの言った最善手を打つことにした。
「フィールレイ、頼む!」
「任せろ」
フィールレイが竜騎兵隊の駒を相手の砲兵隊の駒に叩きつけようとした時だった。
『《緊急札・反攻》を発動。攻めて来た敵の駒を破壊する』
フィールレイが叩きつけた竜騎兵隊の駒が逆に砕け散った。
「ごめん、ハヤテ…………」
ナターシャが申し訳なさそうにする。
「大丈夫、君のせいじゃないよ。それにこうなる可能性も知っていた。《誘発札・特攻》を発動。竜騎兵が破壊された時、破壊した相手の駒も道連れにする」
飛び散った破片が残っていた砲兵隊へ襲い掛かった。
砲兵隊の駒は砕け散る。
これで残っている相手の大駒は司令官、英雄、それに竜騎兵兵隊と砲兵隊が一体ずつ。
こっちは司令官、英雄、騎兵隊、竜騎兵が一体ずつ、それに砲兵隊が二体残っている。
その代わり歩兵隊は相手が六体で、こっちは四体だけど力のある大駒を多く持っている方が有利なはずだ。
「んっ、ちょっと待てよ……」
盤上のことをナターシャ任せたおかげで思考に余裕が出来た。
このゲームの展開の違和感を覚える。
でも、どこだ?
何がおかしい?
そして、俺は巨大な蛇人族が一番初めに《自発札・兵種変更》で歩兵隊を対象にしなかったことを思い出した。
普通なら一番弱い歩兵隊の駒の兵種を変更するはずだ。
それをしなかったのは明確な狙いがあるからだろう。
「そうだ、そうだよ。というか、これは俺の望んだ展開じゃないか。その為にあの札を入れたんじゃないか」
冷静になって、俺がどれだけ余裕がなかったかを自覚した。
ナターシャに盤上を任せなかったら、このゲームは負けていただろう。
今、俺の手札にあの札はない。
だったら、時間を稼がないといけないだろう。
「ナターシャ、一緒に勝とうか」
「もちろんだよ」
俺たちがそんなことを言っていると
「おい、私だって頑張っているだろ」
と下からフィールレイが言ってきた。
報酬の為にやっていると思ったが、案外、乗り気なのかもしれない。
「そういえば、報酬のアイラの服は洗濯前のが良い」
……いや、だたのクレイジーサイコレズか。
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