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レイドア防衛編

第137部分 『狂戦士ガンウォール』

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※引き続き、ローランの視点となります。
 ご了承ください。



 竜人の外見の変化。

 それはアイラと戦った時と同じだ。
 竜人が本気になった時の状態。

「まったく竜人っていうのはとんでもないねぇ」
 瓦礫の中からドラズさんが現れた。

「良かった。無事で……」

 違う。
 無事じゃない。
 左腕がだらりとしていた。
 恐らく折れている。

「少しは楽しめた。それは認めてやる」
 ガンウォールは残虐な笑いを浮かべた。

「分からないねぇ。なんでそれだけの力を持った種族が魔人に支配されているだい?」

 ドラズさんの問いかけに、ガンウォールは眼を見開いた。

「支配されているんじゃねぇよ。都合のいいように使っているだけだ。奴らの持つ技術はこの大陸とは比べ物にならねぇからな。奴らの技術を吸収したら、魔人も殺す」

「本当にそんなことが出来るのかねぇ。魔人はあんたの浅はかな考えなんて、お見通しじゃないかい? その上であんたは利用されてるのさ」

「口だけはまだ達者だな。そろそろ死ねや、土竜が!」

 体中が痛い。
 リスネに治してもらったのにまたボロボロだ。

 でも、倒れている場合じゃない。
 ドラズさんをやらせるわけにはいかないんだ。
 この中でガンウォールに致命傷を与えられるのはドラズさんだけ。

 リスネにドラズさんの左腕を治療してもらわないと…………

「『鉄壁金剛』!」

「もうそれじゃ、止まらねぇよ!」

 ガンウォールの攻撃力が上がっている。
 受け止めきれない……

 私はドラズさん共々、吹き飛ばされた。

「助かったよ。大丈夫かい?」

「何とか……」

 目の前を見るとガンウォールがゆっくりと近づいてくる。
 体が動かない。

「拘束魔法『土獄金剛』!」

 リスネがガンウォールの動きを止める。

「さっきから鬱陶しいな!」

 しかし、ガンウォールは簡単に拘束を解いてしまった。
 そして、攻撃の対象がリスネに向く。

 守りに行きたいが間に合わない。

「まずは一匹、だ」

「させない。魔陰流守法ノ四『ハクセンゲ』!」

 ディアス君はまたガンウォールの大剣を受け流した。
 
「妙な剣術だな。それにお前の武器、刀ってやつだな」

「刀を知っているの?」
 ディアス君は驚いていた。

「……余計なことを言った。どうでもいいだろ。どうせ死ぬんだ」

 ガンウォールは大振りを止めて、連撃でディアス君を襲う。
 ディアス君は攻法も守法も使う間が無い。

 それにディアス君ではガンウォールの『竜装』を突破できない。

「リスネ、ドラズさんを頼む」

「待って、あなただって……」

「友人だからって特別扱いしている場合じゃない! 勝つ為の選択肢をしろ!」

 私はリスネの返答を待たずにガンウォールの前に立った。

「ディアス君、力不足は自覚している。それでも一緒に戦わせてくれ」

 ディアス君は微笑んだ。

「ありがとうございます。ローランさんのことはハヤテさんが話してくれました。冷静に場況を把握できる頼もしい方だと聞いています」

 頼もしい方か。
 ハヤテ、それは過大評価だよ。
 私は凡人だ。

 それでも逃げるわけにはいかない!
 ここで逃げたら、ここで折れたら、次にハヤテたちを会う時、どんな顔をしたらいいんだ!

「下等種族が俺と戦えると思っているんじゃねぇぞ!」

 ガンウォールは大剣を大振りする。
 それをディアス君が受け流す。
 連撃が来るようなら私が前に出る。

 私もディアス君も攻め手はない。

 しかし、負けないことに徹底すれば、出来ることはある!

 ディアス君も私の意図を分かってくれた。
 うまく連携し、ガンウォールの攻撃を耐える。

「鬱陶しいな! けどよ、お前らの狙いなんて分かってんだよ!」

 ガンウォールはリスネとドラズさんに視線を向ける。
 片手を前に突き出した。

 あの動きはまずい!

 私はリスネたちとガンウォールの間に入る。

「防御魔法『土壁』多重!」

 可能な限りの『土壁』を展開した。

「そんなもんで防げると思うなよ、『波動』!」

「『鉄壁金剛』!!」

 土壁は簡単に壊れ、波動の衝撃に襲われる。
 ありったけの魔力を大盾と体に込めた。

 私が飛ばされれば、リスネたちにも攻撃が当たる。
 それだけはさせない!

 やがて衝撃は収まった。
 良かった、私は『波動』を……

「原型があることは褒めてやるよ」

 いつの間にか接近していたガンウォールは私の腹を蹴り飛ばす

「ローラン!」

 リスネが受け止めてくれた。
 衝撃でリスネが倒れる。

「よくもローランさんを……」

 ディアス君がガンウォールに単身で挑むが、

「もうお前の動きは分かったよ」
 
 ガンウォールは連撃でディアス君を圧倒し、最後には私と同じように蹴り飛ばされた。

「さて、四人仲良く死んでもらおうか」

 竜人族の力を見せつけられた。
 埋めることのできない絶対的な差だ。

 ドラズさんの治療はまだ終わっていない。

 戦わないといけない。
 それなのに視界がぼやける。

 死、それが脳裏に浮かんだ。



「私の仲間と恩人に何をしてくれているんですか!」



 元気の良いその声が、私たちを死から遠ざける。

 彼女は空から落ちて来た。
 ガンウォールに臆することなく、対峙し、二本の刀を抜く。

「あなた、昨日はよくもアイラをやってくれましたね! それに私の大切な人たちを……絶対に許しませんから!」

 香は堂々とガンウォールに宣戦布告した。
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