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レイドア防衛編

第124部分 竜人軍襲来

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 俺は屋敷に帰らず、ギルドが用意した簡易休憩所で寝ていた。

「んっ…………」

 半分、目を覚ました時、俺は抱き枕を抱えていた。

 …………抱き枕?
 いや、そんなものを用意した覚えは…………

「やぁ、起きたかい?」

「ローラン!?」

 俺が抱き抱えていたのは薄着のローランだった。

「えっ!? なんで!? 一番の常識人のローランが!?」

「あー、それはだな。くじ引きの結果だな」
「くじ引き?」

 どういうことだ?
 話が見えてこない。

「ベッドが不足しているんだよ」

 そう言われて、休憩所を見ると人で溢れていた。
 昨日の戦闘後、ほとんどの者がここに来たらしい。

 結果、ベッドが不足し、一つのベッドに二~三人が寝ている。

「寝ている君を見つけた二人が喧嘩を始めたんだ」

 その二人が誰なのか聞かなくても分かってしまった。

「で、結局、くじ引きになって私が君のベッドを引き当てたわけだ。向こうで三人は寝ている」

 ローランの指差した先でリザたちが寝ていた。

「無欲の勝利という奴かな? 抽選漏れをした三人の視線がとても痛かったけどね」
 ローランは涼しい顔をで言う。

 んっ?
 三人って、一人増えてない?

「どれくらい寝ていたんだろう?」

「四時間ぐらいかな?」

「静かということはまだ魔王軍は来ていなんだね」

 ローランは頷いた。

「ちょっと様子を見に行こうか」

「なら私も」とローランが同行する。

 街に出ると各所が昨日の攻撃で崩壊していた。
 この様子だとかなりの被害も出ていそうだ。

 作戦本部に到着するとリスネさん、それとエルメックさんがいた。

「ハヤテさん、まだ休んでいていいのに」

「なんだか落ち着かなくってね」

「昨日の件は本当に感謝する」
 エルメックさんが頭を下げる。
 部下たちは驚いていた。

「や、止めてください。あなたは、このレイドアの防衛司令官なんですから」

「地位が高いからといって、頭を下げられないようでは誰もついてこないだろう。君たちがいなければ、昨日で戦いは終わっていた。恐らく、同じ方法でガイエス城塞は為す術もなく、陥落したのだろう」

「でも、あんな奇襲、二度と成功させない。それにこのレイドアには固定砲弾が多く備え付けられているわ。昨日の戦いのせいで全てが健在とは言えないけど、地上の戦いなら、こっちが有利よ!」

 リスネさんは鼓舞するように言う。

「迎撃兵器ばかりを当てにしないでくれるかな?」

 その声はヒルデさんだった。

「無事だったんですね」

「あの程度でやられるほど我らのパーティは弱くないさ。と言っても昨日の戦いではほとんど良いところがなかったがな」
 ヒルデさんはムスッとする。

「まぁ、君の所が近距離戦が得意な子たちばかりだからね」

 ヒルデさんの後ろから、エドワーズさんが現れる。

「私たちは昨日、十分戦ったから今日は休暇をもらえるかな?」

 エドワーズさんが冗談っぽく言う。

「ごめんなさいね。休みの申請はこの戦いが終わるまで通らないわよ」

 リスネさんが苦笑しながら言った。

「それは困ったね」とエドワーズさんが返す。

「まったくあなたがいると窮地のはずなのにどうも力が抜けるな」

 ヒルデさんが以前、俺が思ったことと同じことを言った。

「頼れる先輩なんて言われたら、照れるな」

「一体、どう聞き間違えたら、そう思うのやら…………」
 ヒルデさんは呆れていた。



 昼前には夜戦を戦った冒険者や傭兵たちが所定の位置に着く。

 フィールレイは今日、竜人軍が来ると言っていた。

 しかし、未だに竜人の軍は現れない。

 もしかしたら、俺たちを休ませない為の虚言だったのか、と思い始めていた頃だった。

 レイドアの西の方で鐘が鳴った。

 敵襲を知らせる鐘だ。
 レイドアの中央の最も高い建物にいた俺たちにもその姿は視認できた。

「一万前後ってところかしらね?」

 リスネさんは何かしらの探索魔法を使ったようで敵の数をそう断言した。

 一万対三千。

 しかも基本的にはリザードマンの方が強靭だ。
 それにアイラやフィールレイのような特異な存在もいるだろう。

「司令官、攻撃命令は!?」

 焦る若い兵士がエルメックさんに言う。

「焦るな、射程外だ。まだ引きつけろ」

 竜人軍はゆっくりと確実に進んでくる。
 その動きを緩慢だとは思えなかった。
 むしろ重厚さを感じる。

 俺たちの意識が西の防壁に集中している時だった。


 東の防壁でも敵襲の鐘がなる。

「挟撃!?」
 リスネさんが叫んだ。

 東の空を確認すると飛行生物が多数接近していた。

「ワイバーン、いや、ドレイクか? まさか…………」
 俺は思わず口にしていた。

 ドレイクの群れはレイドアの遥か上空を素通りする。

「どういうことだ?」

 エルメックさんは困惑していた。

「俺に散々、甘い奴だとか言って、本当に甘いのはどっちだよ…………!」

 俺はアイラが何をしようとしているか分かった。
 そして、それがアイラにとってどれだけ危険なことかも理解した。

「リスネさん、お願いがあるんだ!」

 俺の願いは間違っていることだと思う。
 だけど、仲間を、アイラを見捨てるなんてできなかった。
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