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奪還編
第44部分 初めての敵地
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「介錯をお願いします」
香は床に正座する。
「いや、何度も同じネタをしなくていいから」
「うぅぅぅ…………リザちゃんに嵌められました」
「本当に何があったんだい?」
リザを見る限り、悪いことが起きたわけでは無さそうだった。
前向きな表情をしている。
「ハヤテのことで…………」
「さて、ゆっくりしていられませんね!」
リザの言葉を香が強引に遮った。
本当に何をしていた?
まぁ、言いたくないなら深堀はしないけどさ…………
「私は香君が一番、まともだと思っていたが、もしかして一番の地雷なのか?」
レリアーナさんは香の奇行を見て、そんなことを言った。
「そ、そんなことはありませんよね!?」
香は同意を求めて、俺を見る。
ねぇ、なんで刀に手をかけているの?
俺が否定したら、何をする気だ!?
「ハヤテ君が答えなくても、何となく答えは分かった気がするな」
レリアーナさんは察していた。
「うぅ…………違うのに。私はハヤテやリザちゃんのことを思って…………」
香は落ち込むが、こっちはリザと違って、すぐに戻るだろう。
それに早く街を出るのには賛成だ。
もう嫌な奴には会いたくない。
宿屋を出るとリザがまた暗い顔をする。
ドミードが現れないが、心配そうだった。
俺はリザの頭を撫でた。
「心配しなくてもリザは俺が守るから大丈夫だよ。だから、俺のことはリザが守ってくれよ。何しろ、俺自身の戦闘力はその辺の兵士より低いだろうから」
リザはぎこちなく笑った。
「うん、ハヤテは私が守る」
朝よりは気持ちが上に向いているのは事実だ。
この先、どう転ぶか分からないが、目先の問題を解決するのが大事だろう。
「出発だ。目的地はえーっと…………」
なんだっけ?
『竜使いのアイラ』の居城の名前。
「『ジュラディーズ』だ」
「そう、『ジュラディーズ』に向かおうか」
ガイエス城塞都市を出発する。
ここより西に西方連合が所有する村も町も関所も砦もない。
ここから先は完全な敵地だ。
間違いなく、明確な『敵』が待ち受けている。
俺たちは人間領と魔人領の境界線とされる『ルエ川』の手前で足を止めた。
ここからのルートについて考える。
「最短ルートはこのイセル街道だ」
レリアーナさんは広げた地図を指差した。
「しかし、ここは敵も守備兵を置いているだろう。軍ならともかく四人で突破は難しい」
「それに俺たちの存在がバレたら、王女様の身に危険が及ぶかもしれませんね。馬鹿正直に正面から行くべきではないでしょう。…………一度、『ルエ川』を上流まで上がって、こっちの『アシル川』から『ジュラディーズ』へ近づけませんか?」
「止めた方が良い。情報によるとその川の周辺には敵の町や村があるらしい。敵軍もいるだろうし、何より敵とはいえ、武器を持たない者を傷付けたくない」
「そうなると後は…………この森ですね」
「その森は…………」
レリアーナさんは良い顔をしなかった。
「ここも敵が駐留しているんですか?」
「いや、敵はいない。その森は『クライスト魔樹海』、方位磁針はもちろん各探索魔法もおかしくなる魔境だ」
魔境……
だとしても、敵がいない、というのはこちらにとっては好都合だ。
方向を見失わない手段があれば、一番安全に『ジュラディーズ』へ近づける。
『魔狼の群れ』『黒鳥の群れ』を使えば、完全に進行方向を失うことはないだろう。
それに…………
「リザ、どうだ?」
「魔樹海だって関係ない。森での行動なら任せてくれ」
リザは即答だった。
レリアーナさんも『クライスト魔樹海』を通ることに納得し、俺たちの進路は決まった。
香は床に正座する。
「いや、何度も同じネタをしなくていいから」
「うぅぅぅ…………リザちゃんに嵌められました」
「本当に何があったんだい?」
リザを見る限り、悪いことが起きたわけでは無さそうだった。
前向きな表情をしている。
「ハヤテのことで…………」
「さて、ゆっくりしていられませんね!」
リザの言葉を香が強引に遮った。
本当に何をしていた?
まぁ、言いたくないなら深堀はしないけどさ…………
「私は香君が一番、まともだと思っていたが、もしかして一番の地雷なのか?」
レリアーナさんは香の奇行を見て、そんなことを言った。
「そ、そんなことはありませんよね!?」
香は同意を求めて、俺を見る。
ねぇ、なんで刀に手をかけているの?
俺が否定したら、何をする気だ!?
「ハヤテ君が答えなくても、何となく答えは分かった気がするな」
レリアーナさんは察していた。
「うぅ…………違うのに。私はハヤテやリザちゃんのことを思って…………」
香は落ち込むが、こっちはリザと違って、すぐに戻るだろう。
それに早く街を出るのには賛成だ。
もう嫌な奴には会いたくない。
宿屋を出るとリザがまた暗い顔をする。
ドミードが現れないが、心配そうだった。
俺はリザの頭を撫でた。
「心配しなくてもリザは俺が守るから大丈夫だよ。だから、俺のことはリザが守ってくれよ。何しろ、俺自身の戦闘力はその辺の兵士より低いだろうから」
リザはぎこちなく笑った。
「うん、ハヤテは私が守る」
朝よりは気持ちが上に向いているのは事実だ。
この先、どう転ぶか分からないが、目先の問題を解決するのが大事だろう。
「出発だ。目的地はえーっと…………」
なんだっけ?
『竜使いのアイラ』の居城の名前。
「『ジュラディーズ』だ」
「そう、『ジュラディーズ』に向かおうか」
ガイエス城塞都市を出発する。
ここより西に西方連合が所有する村も町も関所も砦もない。
ここから先は完全な敵地だ。
間違いなく、明確な『敵』が待ち受けている。
俺たちは人間領と魔人領の境界線とされる『ルエ川』の手前で足を止めた。
ここからのルートについて考える。
「最短ルートはこのイセル街道だ」
レリアーナさんは広げた地図を指差した。
「しかし、ここは敵も守備兵を置いているだろう。軍ならともかく四人で突破は難しい」
「それに俺たちの存在がバレたら、王女様の身に危険が及ぶかもしれませんね。馬鹿正直に正面から行くべきではないでしょう。…………一度、『ルエ川』を上流まで上がって、こっちの『アシル川』から『ジュラディーズ』へ近づけませんか?」
「止めた方が良い。情報によるとその川の周辺には敵の町や村があるらしい。敵軍もいるだろうし、何より敵とはいえ、武器を持たない者を傷付けたくない」
「そうなると後は…………この森ですね」
「その森は…………」
レリアーナさんは良い顔をしなかった。
「ここも敵が駐留しているんですか?」
「いや、敵はいない。その森は『クライスト魔樹海』、方位磁針はもちろん各探索魔法もおかしくなる魔境だ」
魔境……
だとしても、敵がいない、というのはこちらにとっては好都合だ。
方向を見失わない手段があれば、一番安全に『ジュラディーズ』へ近づける。
『魔狼の群れ』『黒鳥の群れ』を使えば、完全に進行方向を失うことはないだろう。
それに…………
「リザ、どうだ?」
「魔樹海だって関係ない。森での行動なら任せてくれ」
リザは即答だった。
レリアーナさんも『クライスト魔樹海』を通ることに納得し、俺たちの進路は決まった。
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