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異国の女剣客編
第28部分 色々あっての最終日
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九日目、夕食の後、俺とリザは工房の裏にある滝にいた。
「あれ、何か意味があるのか?」
リザが首を傾げる。
香は滝行の最中だった。
「技術的な向上はない。目的は精神集中だよ」
俺も大会の前に海や川をボーっと眺めていることはある。
勝負をする前にはそういう時間が必要だ。
明日、香は自分の全てを出し切る。
その上で負けるなら仕方ない。
でも、俺はやっぱり勝って欲しかった。
明日のことが気になっていたからだろう。
俺は真夜中に起きてしまった。
「あれ?」
ベッドの中に誰かがいる。
「リザ、自分のベッドで寝てくれよ…………」
俺はほとんど寝た状態で呟いた。
「すいません、起こしちゃいましたか?」
その声に俺は覚醒した。
「か、香!?」
「…………私じゃ駄目ですか?」
香は半目状態で俺を見る。
「いや、こういうことをするのはリザだと思って…………」
「私で悪かったですね」
香はムスッとする。
「悪いとは言ってないよ。でも、意外だった…………明日のことが気になって眠れない?」
「はい…………」
「そうなんだ…………」
俺たちは別に何か話すわけではなかった。
無言のまま、時間が過ぎる。
多分、香は優しい言葉や励ましの言葉が欲しいわけじゃない。
安心したかっただけだ。
その為なら協力する。
しばらくすると香は寝てしまった。
「良かった。…………でも、これは理性が試されるな」
香は俺の右腕をしっかりと掴んだまま、寝てしまった。
色々なものの感触がある。
それでも幸い、睡魔が勝ってくれたようで寝ることは出来た。
そして、十日目、最終日。
今日は雨が降っていた。
「あの一つ、お願いをしてもいいですか?」
戦いの前に香が言う。
「なんですか?」とディアス君が返す。
「刀を二本、使ってもいいですか?」
「別に構いませんけど…………」
ディアス君は困惑していた。
「リザ、香は刀を二本、使えると思うか?」
「…………」
リザは何も返答しなかった。
朝からご立腹である。
「リザさん、機嫌直してよ。香とは本当に何もなかったって」
それは事実である。
本当に朝まで添い寝をしただけだ。
「別に怒ってない」
いや、それ、怒っている時のやつだろ。
「どうすれば、許してくれる?」
「だから、怒ってない。でも、そうだな。今日は私と添い寝をしてくれれば、忘れる」
「ああ、添い寝ぐらいならいいが…………」
「別にアレを入れてしまっても構わないよ?」
「そうか。ならば、期待に応えると…………するわけないだろ!」
「ハヤテ、チキン。そもそも、香におっぱい押し付けられて、何もしないとかどうなんだ?」
「今後の関係を考えたら、裸で迫られても拒否するから!」
一歩間違えると、悲しみの向こうへ辿り着きそうな行動は避けたい。
「ハヤテらしいな。まぁいい。今夜の添い寝と今こうやって、ハヤテの胡坐の上に乗っていることで昨晩のことは聞かないことにする」
もうすでにほぼ説明した後にそう言われても…………
「…………話を戻そうか。香は二本、刀を使えると思う?」
香がまだジンブで剣術を研磨していた頃、普通の木刀限定ではあるが、二刀流を扱っていた。
それをしなくなったのは魔刀の扱いを始めてからだ。
魔力操作の苦手な香は二本の魔刀を使うことが出来なかった。
戦闘スタイルで言えば、二刀流が香の本来の姿だった。
「完璧に使うことは香の魔力操作能力じゃ絶対に無理。で、ディアスに勝てるレベルで使えるか、正直、分からない。でも、香はそれで戦うと決めたんだから、あとは見守るしかない」
「そうか」と言い、俺も二人の戦いを見守る。
香は二本の刀を持ち構える。
二人は動かない。
雨の音だけが道場に響く。
ディアス君が先に動いた。
香はディアス君の一撃を刀一本、右腕一本で受けた。
そして、空かさず反撃に転じる。
「リザ、香の魔力操作はどう?」
「乱暴、雑、でも悪くない」
香もディアス君も昨日までは奇麗な剣道だった。
しかし、今の香の剣は違う。
戦うことに特化したスタイルだ。
香は笑っていた。
「なぜ香もディアス君も攻法や守法を使わない?」
「使えないんだ。ディアスは攻法や守法に転ずる一瞬の隙を香に突かれるのを嫌がってる。香は刀を二本持ったから、既存の魔陰流を使えない」
お互いに決定打のない状態で打ち合い。
当然、泥仕合になる。
しかし、泥仕合なら香が有利だ。香のスタミナは常人を遥かに超えている。
このままディアス君の体力を削り切れると思った。
しかし、ディアス君が捨て身に近い形で香に斬り込む。
香が仰け反った。その一瞬の隙に
「魔陰流奥義『カクブギョウ』!」
最大の大技を許してしまった。
負けたか、と思ってしまった。
「まだ名前もありませんけど、行きます!」
香は二本の木刀を下段に構えた。
両者がぶつかる。
この場合、片腕でディアス君の攻勢を受ける香が凄いのだろうか。
それとも香の手数を刀一本で受けきるディアス君が凄いのだろうか。
次元の違う戦いを見せられている。
ぶつかり合った両者。
初めに崩れたのはディアス君だった。
そこからの展開はあっという間で、香の連撃がディアスを襲う。
ディアス君は倒れた。
壮絶な打ち合いの末に立っていたのは香だった。
「勝った…………」
「香さんの勝ちです…………もう、僕には魔力が残っていません」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。かなり効きましたけど」
ディアス君は立ち上がり、苦笑した。
「ヒヤヒヤした」と言いながら、リザは香に近づく。
「やった! やりました、リザちゃん!」
香はリザを抱き締めた。
「くっつくな汗くさい」
「えっ! そんなに私って汗くさいですか!?」
なぜ、俺を見る。
というか、近い近い。
「俺はあんまり気にならないけど」
「女の子の臭いを嗅ぐとか、ハヤテ、変態」
リザが蔑みの眼で俺を見る。
俺は一体どうしろと?
「いや~~、本当に勝っちまうとはね」
ドラズさんの声がした。
「約束だ。ついてきな」
「あれ、何か意味があるのか?」
リザが首を傾げる。
香は滝行の最中だった。
「技術的な向上はない。目的は精神集中だよ」
俺も大会の前に海や川をボーっと眺めていることはある。
勝負をする前にはそういう時間が必要だ。
明日、香は自分の全てを出し切る。
その上で負けるなら仕方ない。
でも、俺はやっぱり勝って欲しかった。
明日のことが気になっていたからだろう。
俺は真夜中に起きてしまった。
「あれ?」
ベッドの中に誰かがいる。
「リザ、自分のベッドで寝てくれよ…………」
俺はほとんど寝た状態で呟いた。
「すいません、起こしちゃいましたか?」
その声に俺は覚醒した。
「か、香!?」
「…………私じゃ駄目ですか?」
香は半目状態で俺を見る。
「いや、こういうことをするのはリザだと思って…………」
「私で悪かったですね」
香はムスッとする。
「悪いとは言ってないよ。でも、意外だった…………明日のことが気になって眠れない?」
「はい…………」
「そうなんだ…………」
俺たちは別に何か話すわけではなかった。
無言のまま、時間が過ぎる。
多分、香は優しい言葉や励ましの言葉が欲しいわけじゃない。
安心したかっただけだ。
その為なら協力する。
しばらくすると香は寝てしまった。
「良かった。…………でも、これは理性が試されるな」
香は俺の右腕をしっかりと掴んだまま、寝てしまった。
色々なものの感触がある。
それでも幸い、睡魔が勝ってくれたようで寝ることは出来た。
そして、十日目、最終日。
今日は雨が降っていた。
「あの一つ、お願いをしてもいいですか?」
戦いの前に香が言う。
「なんですか?」とディアス君が返す。
「刀を二本、使ってもいいですか?」
「別に構いませんけど…………」
ディアス君は困惑していた。
「リザ、香は刀を二本、使えると思うか?」
「…………」
リザは何も返答しなかった。
朝からご立腹である。
「リザさん、機嫌直してよ。香とは本当に何もなかったって」
それは事実である。
本当に朝まで添い寝をしただけだ。
「別に怒ってない」
いや、それ、怒っている時のやつだろ。
「どうすれば、許してくれる?」
「だから、怒ってない。でも、そうだな。今日は私と添い寝をしてくれれば、忘れる」
「ああ、添い寝ぐらいならいいが…………」
「別にアレを入れてしまっても構わないよ?」
「そうか。ならば、期待に応えると…………するわけないだろ!」
「ハヤテ、チキン。そもそも、香におっぱい押し付けられて、何もしないとかどうなんだ?」
「今後の関係を考えたら、裸で迫られても拒否するから!」
一歩間違えると、悲しみの向こうへ辿り着きそうな行動は避けたい。
「ハヤテらしいな。まぁいい。今夜の添い寝と今こうやって、ハヤテの胡坐の上に乗っていることで昨晩のことは聞かないことにする」
もうすでにほぼ説明した後にそう言われても…………
「…………話を戻そうか。香は二本、刀を使えると思う?」
香がまだジンブで剣術を研磨していた頃、普通の木刀限定ではあるが、二刀流を扱っていた。
それをしなくなったのは魔刀の扱いを始めてからだ。
魔力操作の苦手な香は二本の魔刀を使うことが出来なかった。
戦闘スタイルで言えば、二刀流が香の本来の姿だった。
「完璧に使うことは香の魔力操作能力じゃ絶対に無理。で、ディアスに勝てるレベルで使えるか、正直、分からない。でも、香はそれで戦うと決めたんだから、あとは見守るしかない」
「そうか」と言い、俺も二人の戦いを見守る。
香は二本の刀を持ち構える。
二人は動かない。
雨の音だけが道場に響く。
ディアス君が先に動いた。
香はディアス君の一撃を刀一本、右腕一本で受けた。
そして、空かさず反撃に転じる。
「リザ、香の魔力操作はどう?」
「乱暴、雑、でも悪くない」
香もディアス君も昨日までは奇麗な剣道だった。
しかし、今の香の剣は違う。
戦うことに特化したスタイルだ。
香は笑っていた。
「なぜ香もディアス君も攻法や守法を使わない?」
「使えないんだ。ディアスは攻法や守法に転ずる一瞬の隙を香に突かれるのを嫌がってる。香は刀を二本持ったから、既存の魔陰流を使えない」
お互いに決定打のない状態で打ち合い。
当然、泥仕合になる。
しかし、泥仕合なら香が有利だ。香のスタミナは常人を遥かに超えている。
このままディアス君の体力を削り切れると思った。
しかし、ディアス君が捨て身に近い形で香に斬り込む。
香が仰け反った。その一瞬の隙に
「魔陰流奥義『カクブギョウ』!」
最大の大技を許してしまった。
負けたか、と思ってしまった。
「まだ名前もありませんけど、行きます!」
香は二本の木刀を下段に構えた。
両者がぶつかる。
この場合、片腕でディアス君の攻勢を受ける香が凄いのだろうか。
それとも香の手数を刀一本で受けきるディアス君が凄いのだろうか。
次元の違う戦いを見せられている。
ぶつかり合った両者。
初めに崩れたのはディアス君だった。
そこからの展開はあっという間で、香の連撃がディアスを襲う。
ディアス君は倒れた。
壮絶な打ち合いの末に立っていたのは香だった。
「勝った…………」
「香さんの勝ちです…………もう、僕には魔力が残っていません」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。かなり効きましたけど」
ディアス君は立ち上がり、苦笑した。
「ヒヤヒヤした」と言いながら、リザは香に近づく。
「やった! やりました、リザちゃん!」
香はリザを抱き締めた。
「くっつくな汗くさい」
「えっ! そんなに私って汗くさいですか!?」
なぜ、俺を見る。
というか、近い近い。
「俺はあんまり気にならないけど」
「女の子の臭いを嗅ぐとか、ハヤテ、変態」
リザが蔑みの眼で俺を見る。
俺は一体どうしろと?
「いや~~、本当に勝っちまうとはね」
ドラズさんの声がした。
「約束だ。ついてきな」
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