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異国の女剣客編
第24部分 同調(シンクロ)
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二日目、香は午前中に魔力が尽きるまでディアス君に挑んだ。
今日はもう終わりかと思ったが、午後になると香はまたディアス君に挑む。
「凄い回復力だ」とリザが言う。
しかし、いくら回復しても勝てそうな気が全くしなかった。
進展のないまま、三日が過ぎる。
残された期間はあと七日だ。
「ちょっと、素振りをしてきますね」
夕食が終わった後に香は外に出て行った。
「相当、思いつめているな」
俺の言葉に対して、リザが、
「空回りしている」と言う。
それには同意見だった。
初めのうち、香は前向きだったが、ここまで勝てないとさすがに焦りが見える。
「リザ、俺に考えがあるんだ。協力してくれるか」
「ハヤテの頼みで、香の為なら拒否する理由がない」
「ありがとう。でも、やろうとしていることを聞いて欲しいんだ」
俺は考えていることを説明した。
それと同時に起こりうる問題も説明する。
「うん、私は問題ない。香が良い、って言ったら、やってもらって構わない」
その上でリザは承諾してくれた。
次の日、ディアス君に挑もうとする香を呼び止める。
「なんですか? 私には時間がないんですけど?」
香はイライラしていた。
思うようにいかない現状に焦りがあるのだろう。
「香、これは提案なんだけど、ちょっと特訓をしてみないか?」
「特訓ですか? そんなにすぐ成果が出る特訓があるんですか?」
「それは分からない。でも、このままじゃ、ディアス君には勝てないのは香も分かっているだろ?」
「…………はい。でも、何をしたらいいのですか?」
「私は武術に関しては分からない」
リザが言う。
「けど、魔力に関しては香はもちろん、ディアスより得意。三日間、二人の戦いを見たけど、香はやっぱり魔力操作が下手過ぎ。0と1しかできない。だから、動きの繋ぎ目に隙が出来る。ディアスにそこを狙われている。もっと細かい魔力操作を身に着けるべき」
「でも、やり方が分かりません」
「大丈夫、私が教える」
「リザちゃんがですか?」
「なんだ? 不満か?」
「いえ、不満なわけじゃありません。でも、エルフは元々魔法に長けているじゃないですか。種族差があると思うんです」
「それはある。いくら、香が特訓しても私みたいに自然魔法を扱るとは思えない。けど、魔力操作の上達は出来る。香の剣の技術とか純粋な身体能力はもう伸びづらい。でも魔力の扱い方は別、まだまだ伸びる。極端な言い方すれば、一時間の前後では別人くらい変化がある」
テストで90点の科目をあと10点伸ばすのは難しい。時間もかかるし、伸びる保証はない。
しかし、10点しか取れていない科目なら、伸びしろは大きい。香が短時間で勝つ為にはそれしかない気がする。
香もそれを理解したようで「お願いします」とリザの手を取った。
「で、ここからはやることを説明するね。もし、聞いてやりたくないなら、断ってくれて構わないよ」
俺は召喚盤を展開し、リザと香のカードをドローする。
「まず初めに出来るか分からない、と言っておくよ。で、やろうとしていることは『同調』」
「『同調』?」
「ミストローンのシステムの一つで『パーソン』カードを重ねて、新しいカードを召喚する方法なんだけど、この世界でそれをやったら、文字通り『同調』出来るかな、って考えたんだ」
「ハヤテが私たちとやっているリンクみたいなものですか?」
「成功すれば、そうなると思う。で、その場合、リザと香の記憶が共有されることになると思う。俺と同じようにね」
「私はいいですけど、リザちゃんは良いんですか?」
香はあっさりと承諾する。
「もうハヤテから説明は受けた。私は構わない」
話は簡単にまとまった。
「じゃあ、さっそく良いかい?」
「いつでも」
「はい」
と二人が返事をしたので俺は二枚のカードを重ねた。
俺からは変化が分からない。
「どうだ、リザ?」
「うん、ハヤテの時と同じみたいに香の記憶が入ってきた。香も結構、苦労していたんだな、って思った」
「とりあえず、第一段階は成功だ。香の方は…………」
泣いていた。
「ど、どうしたの!?」
「い、いえ、リザちゃんの境遇を知ったら、何だか、自然と…………」
香は溢れ出した涙を拭う。
「私のことを思って泣いてくれるのは嬉しい。でも、同情はいらない。私は今、幸せ。笑っていられる」
「ハヤテに遭えたのは本当に奇跡だったんですね」
「うん、だからハヤテを取られたら、泣く。それが誰でも」
「………………」
「でもそれが香だったら、泣いた後に祝福する。香は信頼できる人」
「 『同調』したら、隠し事は出来ませんね」
と香は苦笑する。
「『同調』する前から信頼していたし、知ってた」
二人が仲良くなるのは良いことだ。
…………でも、そういう話は俺がいないところでやってくるかな!?
コメントに困るんだけど!
「まぁ、当分、ハヤテは私たちに何もしない。チキンで、童貞は防御力高すぎ」
そういうことは思っても言わないでくれるかな!?
「そうですね」
香も「そうですね」じゃない!
「とにかく、上手くいってよかったよ」
俺は頬の筋肉をヒクつかせながら、無理やり笑った。
「で、どう? 感覚の共有とかは出来そう?」
「香、身体能力強化の魔法、使ってくれ」
「分かりました」
香が身体能力強化を発動した瞬間、リザは顔を歪めた。
「なるほど、確かに香の感覚が分かった。それにしても酷い魔力の使い方だ。濁流みたいな魔力の流れだ」
「そんな酷いこと言わなくいいじゃないですか! それに魔力の流れって何ですか?」
「……………………」
リザは「今日のご飯は野菜だけ」と言われたぐらい絶望の表情になった。
「無言はやめてください! せめて罵詈雑言をください!」
「そんな懇願は聞き入れない。やることが決まった。桶を借りてこよう。魔力操作の特訓だ」
今日はもう終わりかと思ったが、午後になると香はまたディアス君に挑む。
「凄い回復力だ」とリザが言う。
しかし、いくら回復しても勝てそうな気が全くしなかった。
進展のないまま、三日が過ぎる。
残された期間はあと七日だ。
「ちょっと、素振りをしてきますね」
夕食が終わった後に香は外に出て行った。
「相当、思いつめているな」
俺の言葉に対して、リザが、
「空回りしている」と言う。
それには同意見だった。
初めのうち、香は前向きだったが、ここまで勝てないとさすがに焦りが見える。
「リザ、俺に考えがあるんだ。協力してくれるか」
「ハヤテの頼みで、香の為なら拒否する理由がない」
「ありがとう。でも、やろうとしていることを聞いて欲しいんだ」
俺は考えていることを説明した。
それと同時に起こりうる問題も説明する。
「うん、私は問題ない。香が良い、って言ったら、やってもらって構わない」
その上でリザは承諾してくれた。
次の日、ディアス君に挑もうとする香を呼び止める。
「なんですか? 私には時間がないんですけど?」
香はイライラしていた。
思うようにいかない現状に焦りがあるのだろう。
「香、これは提案なんだけど、ちょっと特訓をしてみないか?」
「特訓ですか? そんなにすぐ成果が出る特訓があるんですか?」
「それは分からない。でも、このままじゃ、ディアス君には勝てないのは香も分かっているだろ?」
「…………はい。でも、何をしたらいいのですか?」
「私は武術に関しては分からない」
リザが言う。
「けど、魔力に関しては香はもちろん、ディアスより得意。三日間、二人の戦いを見たけど、香はやっぱり魔力操作が下手過ぎ。0と1しかできない。だから、動きの繋ぎ目に隙が出来る。ディアスにそこを狙われている。もっと細かい魔力操作を身に着けるべき」
「でも、やり方が分かりません」
「大丈夫、私が教える」
「リザちゃんがですか?」
「なんだ? 不満か?」
「いえ、不満なわけじゃありません。でも、エルフは元々魔法に長けているじゃないですか。種族差があると思うんです」
「それはある。いくら、香が特訓しても私みたいに自然魔法を扱るとは思えない。けど、魔力操作の上達は出来る。香の剣の技術とか純粋な身体能力はもう伸びづらい。でも魔力の扱い方は別、まだまだ伸びる。極端な言い方すれば、一時間の前後では別人くらい変化がある」
テストで90点の科目をあと10点伸ばすのは難しい。時間もかかるし、伸びる保証はない。
しかし、10点しか取れていない科目なら、伸びしろは大きい。香が短時間で勝つ為にはそれしかない気がする。
香もそれを理解したようで「お願いします」とリザの手を取った。
「で、ここからはやることを説明するね。もし、聞いてやりたくないなら、断ってくれて構わないよ」
俺は召喚盤を展開し、リザと香のカードをドローする。
「まず初めに出来るか分からない、と言っておくよ。で、やろうとしていることは『同調』」
「『同調』?」
「ミストローンのシステムの一つで『パーソン』カードを重ねて、新しいカードを召喚する方法なんだけど、この世界でそれをやったら、文字通り『同調』出来るかな、って考えたんだ」
「ハヤテが私たちとやっているリンクみたいなものですか?」
「成功すれば、そうなると思う。で、その場合、リザと香の記憶が共有されることになると思う。俺と同じようにね」
「私はいいですけど、リザちゃんは良いんですか?」
香はあっさりと承諾する。
「もうハヤテから説明は受けた。私は構わない」
話は簡単にまとまった。
「じゃあ、さっそく良いかい?」
「いつでも」
「はい」
と二人が返事をしたので俺は二枚のカードを重ねた。
俺からは変化が分からない。
「どうだ、リザ?」
「うん、ハヤテの時と同じみたいに香の記憶が入ってきた。香も結構、苦労していたんだな、って思った」
「とりあえず、第一段階は成功だ。香の方は…………」
泣いていた。
「ど、どうしたの!?」
「い、いえ、リザちゃんの境遇を知ったら、何だか、自然と…………」
香は溢れ出した涙を拭う。
「私のことを思って泣いてくれるのは嬉しい。でも、同情はいらない。私は今、幸せ。笑っていられる」
「ハヤテに遭えたのは本当に奇跡だったんですね」
「うん、だからハヤテを取られたら、泣く。それが誰でも」
「………………」
「でもそれが香だったら、泣いた後に祝福する。香は信頼できる人」
「 『同調』したら、隠し事は出来ませんね」
と香は苦笑する。
「『同調』する前から信頼していたし、知ってた」
二人が仲良くなるのは良いことだ。
…………でも、そういう話は俺がいないところでやってくるかな!?
コメントに困るんだけど!
「まぁ、当分、ハヤテは私たちに何もしない。チキンで、童貞は防御力高すぎ」
そういうことは思っても言わないでくれるかな!?
「そうですね」
香も「そうですね」じゃない!
「とにかく、上手くいってよかったよ」
俺は頬の筋肉をヒクつかせながら、無理やり笑った。
「で、どう? 感覚の共有とかは出来そう?」
「香、身体能力強化の魔法、使ってくれ」
「分かりました」
香が身体能力強化を発動した瞬間、リザは顔を歪めた。
「なるほど、確かに香の感覚が分かった。それにしても酷い魔力の使い方だ。濁流みたいな魔力の流れだ」
「そんな酷いこと言わなくいいじゃないですか! それに魔力の流れって何ですか?」
「……………………」
リザは「今日のご飯は野菜だけ」と言われたぐらい絶望の表情になった。
「無言はやめてください! せめて罵詈雑言をください!」
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