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白き死神と赤き竜の物語
※イレギュラ討伐〜変異ケルピー〜後編
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「極度の元素切れを起こしておる。3日は目覚めんじゃろうな」
「……それって大丈夫なのかよ!?」
「普通なら死ぬが、シロは普通ではないからのう。ただ回復には時間がかかる」
あれから村にたどり着くと、何故かうちの冒険者の宿の主人であり、冒険者ギルドの頭であるヴァイスが村長と一緒に俺たちを待っていた。
状況を見るやすぐに俺たちを村の宿に移動させ、シロをベッドに寝かせてヴァイスが診察した結果、そのような状態とのことだ。
アイリスは部屋の壁に背を預けて考え込むように腕を組み、おもむろに口を開いた。
「外部から元素を送り込むのはどう?」
「ふむ、良い考えじゃ。旧き癒しの術じゃな」
「なんでもいいから、どうすりゃいいんだ!?」
ただでさえシロは細っこい小柄な体に似合わず信じられない程に大食いだ。
そんな彼が3日間も飲まず食わずで眠り続けて無事であるとは到底思えなかった。
「確かに、3日たてば体内元素は戻るじゃろうが衰弱してしまうじゃろうから、それを試した方が良いのう」
「どうやるんだ!?!?」
「接吻じゃ」
……?
見た目は若いがギルドマスターは相当な年月を生きていると風の噂で聞いた。
彼は狐の半獣人のようだが、どうも違うという話もあるし、普通の人では知らぬような古い知識も持っている。
こちらが真面目な話をしているのに、いきなりおとぎ話のような手段を取らせるとは、ついにボケたのか??
「ついにボケたのか?」
「お主は思った事を口に出す癖をやめた方がいいのう」
「レオン、理にかなってるんだよ口付けで体内に元素を分け与えるのって」
アイリスのフォローにヴァイスは得意げに頷く。
「わしはとある理由で元素を扱えぬし、アイリスは治癒で元素力をかなり消耗しておる。レオン、お主の役目じゃ」
「そ……え……は……???」
「じゃあそういうわけだからよろしく」
それだけ言って混乱している俺を置いてアイリスとヴァイスはさっさと部屋を出ていってしまった。
覚悟を決めねばならないらしい。
シロのことは、実を言うと好きだ。
俺が冒険者になるキッカケをくれたのも、俺の命を救ってくれたのも彼だ。
だから俺は彼を、この命に代えてでも護り続けると心に誓った。
想いを伝えることはまだしたことがないが、それより先に治療とはいえ唇を奪う羽目になるとは思わなかったが……そう言ってもいられない。
「シロ……ごめんな……」
相変わらずシロは美しい顔で、まるで死んでいるのか、もしくは精巧に作られた人形のように静かに目を閉じて横たわっているのを、覆い被さって間近で見る。
緊張からか全身汗でびっしょりになる思いで、ゆっくりと自らの唇を、シロの薄く桜色をした唇に重ねた。
ふわりとシロの匂いがした。甘くて、優しくて、蕩けそうな匂い。
元素の扱いは得意じゃないが、何となく感覚的にどうすればいいのかは分かっていた。俺の中の『ウル』がうまく元素を調節してくれるのを感じる。
柔らかな唇を舌でそっとなぞり、ゆっくりと半開きのシロの口内へ舌先を差し込んでゆくと、彼の舌に触れた。
舌と舌が触れたところから元素が通じ合うのを感じ、そのまま深く絡める。
唾液が混じり合って、ぴちゃぴちゃと音を立てた。ゾクゾクと肌が粟立つ。
正直すぎる俺の体がしっかりと反応してしまっているが、これはそういうのじゃない……そもそも相手は意識が無い……と必死で自分に言い聞かせながら愛しい人との口付けに没頭した。
気がつくと俺自身の元素の大半を注ぎ込んだのか、酷く体が重く感じてきた。
名残惜しく唇を離すと、唾液が糸を引いて酷く扇情的だった。
同時にシロが、ゆっくりと目を開いた。
………
大好きな人が僕の名前を呼んでいる気がした。
目を開くと、そこには泣きそうな顔で真っ赤になりながら間近で僕を見ている、大好きな人が居た。
「シロ……」
「レオン、ありがとう。助けてくれて」
「あ……ったりめェだろ……」
そう言ってレオンはガバッと勢いよく、寝転がったままの僕に覆い被さるようにして抱きしめた。
春の日差しのような彼の暖かさが僕の体を包み込んで、僕はひどく安心した。
何十年ぶりかわからない、涙が僕の頬を伝っていった。
今回の報酬:一人あたり金貨3枚
「……それって大丈夫なのかよ!?」
「普通なら死ぬが、シロは普通ではないからのう。ただ回復には時間がかかる」
あれから村にたどり着くと、何故かうちの冒険者の宿の主人であり、冒険者ギルドの頭であるヴァイスが村長と一緒に俺たちを待っていた。
状況を見るやすぐに俺たちを村の宿に移動させ、シロをベッドに寝かせてヴァイスが診察した結果、そのような状態とのことだ。
アイリスは部屋の壁に背を預けて考え込むように腕を組み、おもむろに口を開いた。
「外部から元素を送り込むのはどう?」
「ふむ、良い考えじゃ。旧き癒しの術じゃな」
「なんでもいいから、どうすりゃいいんだ!?」
ただでさえシロは細っこい小柄な体に似合わず信じられない程に大食いだ。
そんな彼が3日間も飲まず食わずで眠り続けて無事であるとは到底思えなかった。
「確かに、3日たてば体内元素は戻るじゃろうが衰弱してしまうじゃろうから、それを試した方が良いのう」
「どうやるんだ!?!?」
「接吻じゃ」
……?
見た目は若いがギルドマスターは相当な年月を生きていると風の噂で聞いた。
彼は狐の半獣人のようだが、どうも違うという話もあるし、普通の人では知らぬような古い知識も持っている。
こちらが真面目な話をしているのに、いきなりおとぎ話のような手段を取らせるとは、ついにボケたのか??
「ついにボケたのか?」
「お主は思った事を口に出す癖をやめた方がいいのう」
「レオン、理にかなってるんだよ口付けで体内に元素を分け与えるのって」
アイリスのフォローにヴァイスは得意げに頷く。
「わしはとある理由で元素を扱えぬし、アイリスは治癒で元素力をかなり消耗しておる。レオン、お主の役目じゃ」
「そ……え……は……???」
「じゃあそういうわけだからよろしく」
それだけ言って混乱している俺を置いてアイリスとヴァイスはさっさと部屋を出ていってしまった。
覚悟を決めねばならないらしい。
シロのことは、実を言うと好きだ。
俺が冒険者になるキッカケをくれたのも、俺の命を救ってくれたのも彼だ。
だから俺は彼を、この命に代えてでも護り続けると心に誓った。
想いを伝えることはまだしたことがないが、それより先に治療とはいえ唇を奪う羽目になるとは思わなかったが……そう言ってもいられない。
「シロ……ごめんな……」
相変わらずシロは美しい顔で、まるで死んでいるのか、もしくは精巧に作られた人形のように静かに目を閉じて横たわっているのを、覆い被さって間近で見る。
緊張からか全身汗でびっしょりになる思いで、ゆっくりと自らの唇を、シロの薄く桜色をした唇に重ねた。
ふわりとシロの匂いがした。甘くて、優しくて、蕩けそうな匂い。
元素の扱いは得意じゃないが、何となく感覚的にどうすればいいのかは分かっていた。俺の中の『ウル』がうまく元素を調節してくれるのを感じる。
柔らかな唇を舌でそっとなぞり、ゆっくりと半開きのシロの口内へ舌先を差し込んでゆくと、彼の舌に触れた。
舌と舌が触れたところから元素が通じ合うのを感じ、そのまま深く絡める。
唾液が混じり合って、ぴちゃぴちゃと音を立てた。ゾクゾクと肌が粟立つ。
正直すぎる俺の体がしっかりと反応してしまっているが、これはそういうのじゃない……そもそも相手は意識が無い……と必死で自分に言い聞かせながら愛しい人との口付けに没頭した。
気がつくと俺自身の元素の大半を注ぎ込んだのか、酷く体が重く感じてきた。
名残惜しく唇を離すと、唾液が糸を引いて酷く扇情的だった。
同時にシロが、ゆっくりと目を開いた。
………
大好きな人が僕の名前を呼んでいる気がした。
目を開くと、そこには泣きそうな顔で真っ赤になりながら間近で僕を見ている、大好きな人が居た。
「シロ……」
「レオン、ありがとう。助けてくれて」
「あ……ったりめェだろ……」
そう言ってレオンはガバッと勢いよく、寝転がったままの僕に覆い被さるようにして抱きしめた。
春の日差しのような彼の暖かさが僕の体を包み込んで、僕はひどく安心した。
何十年ぶりかわからない、涙が僕の頬を伝っていった。
今回の報酬:一人あたり金貨3枚
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