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18.

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「…はぁっ…はぁ」

息を切らしながら
山を駆け登る

そんなに大した距離じゃ
なかったはずなのに、

さっきより何倍も
時間が掛かった様な気がした

身体の震えが止まらないせいで、
いつもより足も遅い気がする

早く…早く

菖蒲の顔が見たいのに、


走って走って走って…

俺の今までの人生で、
こんなに必死になって
走った事はなかっただろう

嫌な予感がして、仕方がない


やっと、家に辿り着いた頃には

俺は玄関に倒れ込むように
膝を付いていた

「菖…蒲…」

玄関より一番遠い場所から
3分の1くらい、炎が燃え広がっている

早く…早く、菖蒲を見付けないと


家の中が煙で充満していて
強く咳き込む

一応 口を手で塞いでいるが、
もうあまり意味がなさそうだった

喉が渇いて、張り付いて、
上手く声が出せない

煙で涙が滲む



「菖…蒲…」

身体がガクガクになりながらも、
土足のまま片っ端から部屋に入って
菖蒲を探す

そして、玄関から廊下を少し進んだ
リビングに菖蒲は居た

「…なんで」


菖蒲は、天井の柱から
首を吊っていた

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