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17.
しおりを挟む-翌日
少ない荷物をまとめた俺は、
菖蒲に向き合っていた
「…じゃあ、また来るから」
「うん。焦らなくて良いからね」
菖蒲が柔らかく微笑む
「なんなら、ここでの事忘れて良いんだからね?…君には、君の世界がある訳だし」
「忘れねぇわ。…まだボケてないし」
「ふふっ…ありがとう」
「そういえば…さ、菖蒲のLINEとか連絡先
教えて欲しいんだけど」
「…私、そういうの やってないんだよね。まだ しばらくは、ここに居る予定だし、また気が向いた時に、会いに来てくれれば良いから」
「…分かった」
「…またな」
「うん、またね。色々手伝ってくれて、ありがとう」
しばらく会えなくなる菖蒲を
出来るだけ目に焼き付けようと
何度か後ろを振り返ると、
笑って大きく手を振ってくれた
初めて ここに来た夜は
暗くて気付かなかったけど、
菖蒲の家がある山の上から
真っ直ぐに下りて行くと
小さな駅がある
その駅から しばらく
電車に揺られていれば、
その内 見覚えのある駅に着くはずだ
…家に帰ったら、
まずは大学をどうするか考えないとな
これから自分のやるべき事を思うと
少し緊張してくる
それを和らげる様に
俺は小さく息を吐いた
駅に着いた所で
改札を通ろうと鞄を漁る
「あれ?」
…パスケースがない
鞄・スボンのポケット
くまなく探すが
やっぱり見付からない
「…忘れて来たかな」
仕方なく、来た道を戻る
あれだけ大袈裟に別れておいて、
すぐ戻るとか かっこ悪いな俺…
菖蒲になんて言おう-
そんな事を考えていると、
ふと異様な匂いがする事に気が付いた
…なんだ?これ
まるで、何かが 焼けるような-
ドクンと心臓が鳴る
まさか…
顔を上げて、家がある方向に
必死で目を凝らした
-燃えてる
家が、燃えてる
「っ…菖蒲!!!」
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