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12.

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「…ありえねぇ」

「働かざる者、食うべからず」

真夏だったら、確実に死んでた


冬を迎え、少し冷たい風が
身体を撫でているにも関わらず

こめかみから汗がつたい続ける


「収穫するだけなんだから、
まだ楽でしょ」
「楽って言ったって、量が多過ぎるだろ…」

大根の葉を掴んで引っこ抜く

「ちょっと!乱暴に扱わないで!!
売る物もあるんだから!!!」

「はいはい、すみませんでしたー」


インドアで運動なんて
まるでして来なかった俺は、

すぐに息絶え絶えになる

「じゃ、午前中は これで終わりね」
「午前中は…って、午後もやるのかよ…」
「当たり前でしょ」
「はぁ…」

こんな重労働させられるなんて
聞いてねぇ…


「お前、なんで
こんな事やってるんだよ」

「最低限、食べる物は確保しなきゃでしょ。あと…暇だったから。街で働くのも嫌だし」

「街で働いた方が楽だと思うけどな」
「人とあんまり関わりたくないの」
「…それは分かるけど」

無断外泊・無断欠席した事を思い出して
深い溜め息を吐く

帰ったら色々面倒臭ぇだろうなぁ…

親と学校になんて言い訳しようか…


日常から逃げて来たのは良いものの、

ふとした瞬間に
また現実を思い出して

心が重くなる

“学校に行かなきゃいけない”
“家に帰らなきゃいけない”

それが、今の俺に課せられてる義務


なぜなら、俺はまだ
親の援助を受けているのだから

所詮まだガキで
一人では、生きていけないのだから


金銭的な理由で

一人で生きられないというのは
酷く もどかしいし、

自分がいかに
無力なのかが思い知らされる


あんなクソ親に
いくら大口叩いたって

結局俺は、彼女に生かされているのだ

「…ダサいな、俺」

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