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7.

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「あー…ここ、どこだろ」

電車を何時間も乗り継ぎ
“もう先に続く電車がない”と言われ

電車を降りて、着いた場所は
一言で言うと…“闇”だった


真っ暗だ
つまり、灯りが何もない

そして こんな田舎町…というか
山の中に店なんて、あるはずもない

店がなければ、人の気配もない


「さて、どうするかな…」

都会の灯りに慣れた瞳で
闇の中を歩くのは 中々大変で、

瞳を凝らしても 凝らしても
辺りが はっきりと見える事はなかった


「ふー…」

…駄目だな、
周りの様子が全く見えない

どちらに行けば良いのかも分からず
途方に暮れ、

「流石にヤバイかな…」
と、瞳を閉じて 天を仰ぐ

そして、瞳を開き
広がる光景に 俺は息を呑んだ

真っ暗な闇が、
まるで嘘だったかの様な


満天の星だった



「…綺麗でしょう?」
「ああ…凄く綺麗だ」
「都会にはない景色よ」
「そうだな、こんなにも星がはっきり見える事は…って、…は?」

すぐ横から声がした事に
今更ながら気が付く

…ここ、山ん中だよな?

確認の為、声がした方向に
顔を向けたが 人の気配はない

「幻聴か…」

相当疲れてるな、俺…


「現実よ、馬鹿」

べしっと頭を叩かれた衝撃が来て
「いってぇ」と思わず声が出る

本物の感触だ

-けど、

「…誰、お前」


「私は、菖蒲。菖蒲姫とお呼びなさい」


それが、俺と
この変な女…菖蒲との出逢いだった

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