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しおりを挟むどっちにしろ命か、命と同等のものを潰される覚悟なんてあるわけない。
「なぁ、夏実は、相手が俺で良かったのか?」
「なによ! 文句あるなら今のうちに言っときなさいよね! 聞くだけなら聞いてやるから!」
「もんく、つーか……頼みがあるんだけどいいか?」
「はいはい、何でもどうぞ。冗談抜きで夫婦になるならどんな性癖だって受け入れてあげるわよ」
ちっくっしょー。
勝ち誇った言い方がきにくわねぇ。だが、ありがたい事に、こっちにも都合が良い。
「だったら、お言葉に甘えさせてもらうが、アソコの毛は毎日きちんと処理してくれ」
「……は?」
「や、だからさ。俺、生理的に無理なんだって! なんつーか、吐き気がするんだよ! だからさ、生えてないのが当たり前みたいな二次元に逃げ込んだんだよ!」
「それってつまり、そのアソコの毛のことだよね?」
「あぁ、そうだよ! テメェが必死に隠したがってる剛毛のことだよ! パンツ脱いでもモザイクの必要性すらねぇくれぇダークマターがアフロディーテになってんだろ!?」
どちくしょー。
最悪の場合、トラウマレベルが一気に跳ね上がり一生役立たずになるかもしれない。
これじゃ玉を潰されなくても、たいして変わらねぇぞ!
俺がトラウマにを抱えるようになっちまった原因は恵おばさんにある――
当時おふくろが入院していたこともあり。
俺のめんどうは、恵さんがみてくれていた。
その際。一緒に風呂に入った時についつい素朴な疑問を口にしちまったことがあるのだ。
『なんでめぐみおばさんの、おまたはアフロになってるの?』
そして、『大人になるとみんなこうなるのよ』そう諭されてしまい。
後々になってからひどく後悔した。
今なら分かってしまうからだ。
恵おばさんと夏実が俺と一緒に暮らすようになった要因。
それは利害の一致である。
住む場所を探していた恵おばさんに対し。親父は、おふくろの治療費を稼ぐために海外赴任しようと考えていた。
そこで問題点となっていたのが息子の存在だ。
おふくろが入院しちまってからなんて、ほぼ放置状態だった。
そんな時におふくろを頼ってきたのが恵おばさん。
ある意味、双方にとって都合が良く。話しは一気にまとまったのだ。
そして恵おばさんは、めちゃくちゃハードな生活を余儀なくされていた。
朝早く起きて俺達の食事を用意し昼間はパート。
合間を見つけては病院に通い、おふくろの着替えや身の回りの世話をし。
帰ってきたら夕食の支度を含む家事全てをこなしていた。
そんな目の回るような日々の中だ。
自分自身に対し手入れが行き届いていなかったとしても仕方がなかったと思う。
それなのに。今、思い返しても吐き気がしてしまうのだ。
「あ、あのさ、正直なところ。あんたがそーゆー趣味だったってのは意外だけどさ……」
「毎日きちんと処理してくれんのか?」
「や、そうじゃなくってさ。コレってさ。実はさ、『良いよねぇ、あんたは処理する必要なくって』とかってゆー嫌味言われるのが嫌なだけだったりするんだよね……」
「はぁ、なに言ってんのお前?」
「だから! 高一にもなって生えてないとか言われるのがやなの!」
「嘘言ってんじゃねぇ! そんな都市伝説レベルの人間が居るわきゃねぇじゃねぇか!」
だいたい、下半身まくっろくろすけだった恵おばさんの娘が無毛とかありえねぇんだよ!
「しょうがないでしょ! 少なくともココに一人居るんだから」
「マジで?」
「マジよ」
先ほどまでとは違った意味で俺の視線は夏実のパンツに釘付けだった。
ゴクリ、と喉をならした音がやたらとでかく感じた。
「も、もう一度確認するが。ほほ、ほんとうに、はえてないのか?」
「た、たぶん……」
ここしばらくの間。顔を見ずに話をしてきたからなのだろうか?
震えた声に、不安以外のものが混じっていることに気付いちまった。
そしてそれは、こすり合わせている太もも同様であり。
見られるのは恥ずかしい。
でも。それが相手にとっての理想と知れば試して見たくもなる、と言ったところなのだろう。
つい先ほどまで、縮みあがっていたはずの身体が信じられない勢いで活性化していく。
見たい、すごく見てみたい!
驚くくらい心臓はドクドクと踊り。
全身から汗が吹き出しているみたいに熱い。
まるで自分以外の意思につき動かされてるみたいだ。
希少価値ってもんは、こんなにも人をわくわくさせるもんなのか!?
薄い布の向こう側にあるであろう奇跡を拝みたくて気が狂いそうだ!
「あぁ、あのさ、その、せっかく喜んでくれてるとこ、悪いんだけどさ」
「たっ、たのむ! 何でもするから見せてくれ!」
「あ、うん、だからそれは、ね。きちんと見せてあげるからさ」
「ほ、本当に本当だな!?」
「えっ、とさ、だからさ。その前に、どうしても確認しておきたいことがあるんだよね」
ったく、なんでリアルの女って生き物はめんどくせーんだよ!
どーせ、結婚するなら早いか遅いかだけの話しじゃねぇか!
「だーかーらーっ! もし生えてきちゃても、あにきは、さ、その、きちんと私のこと好きでいてくれるのかなって」
「へ……?」
忘れてた。
そうだよ、コイツは恵おばさんの娘じゃん!
ただ単に、生え始める時期が遅かっただけだった。
そんな落ちが目に浮かぶ。
「んもー! なによそれ!」
よっぽど落胆した顔を見せちまってるのだろう。
せっかくのいい流れが急停止。それどころか突き刺さる怒気をひしひしと感じる。
「やっぱ、あにきは私のことなんて何とも思ってなかったんだ!?」
「いや、」
そんなことはない、と言うのは簡単なはずなのに。
続く言葉は出なかった。
ちあきのこととか、江藤さんのこととかが気になった部分も確かにある。
でも、それ以上に何かが欠落してる気がしてしまったのだ。
「もういい!」
そう、言うが早いか夏実は立ち上がると、机に歩みより引き出しからなにやら取り出す。
「笑いたければ笑いなさいよ!」
泣きすがるような声で、原稿用紙を突きつけてきた。
それは、小学一年生の時に書いた作文でタイトルは【しょうらいのゆめ】。
気を失わないように、パンツをチラチラ見ながらも、書かれた内容を要約すると。
『おにいちゃんのおよめさんになりたい』である。
こいつがあのバカみたいな勘違いをした原因だったということか。
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