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しおりを挟む理屈は分からないが、俺は異常なまでに眠りを欲する体になっちまい。
それと引き換えに素晴らしい夢が見れるようになったのだ。
そこで、人形を処分するか否かでもめていて――俺は、もう少しだけ夢を見させてほしいというスタイルを貫いていたんだった。
なにせ本当に人形の呪いか何かだったとした場合。廃棄して呪いが解けるのかどうか分からないし。
正直なところ、捨てるには惜しい夢だったりもするからだ。
「や、だからって。燃やしたところで現状が好転するとは限らないだろ?」
「また、それ~」
「そうよ一樹君。夏美の事は置いといたとしても。さすがに今のままじゃ心配だわ」
「ちょっ! お母さん、私の事はどうでもいいって、いくらなんでもあんまりなんじゃない!」
「なに言ってるの。実際のところはどうであれ、原因が夏美のせいって可能性は否定できないんだら、もっと協力的な態度を見せなさい!」
「してるじゃない!」
「は~~~。ごめんね一樹君。こんな可愛くない娘で」
「いえ、それよりも、夏美が原因ってどういうことですか?」
「やだ、それも忘れちゃったの、夏美が一樹君に呪いかけたのよ」
言われてみれば、そうだった!
なんか話せば話すほど靄が晴れていくような気分だ。
それなのになんだ、この非協力的な態度は?
常識とか倫理観とかトラウマとかさぁ……もう、どうでもいいじゃねぇか。
おばさんが喜んでくれるなら安いもんだろ?
「いーかげんにしろよな! たかがエロイパンツ一つでなんとかなるなら安いもんじゃねぇか!」
「ちょ! バカ、そんなことできるわけないでしょ!」
「なんで、できねぇんだよ! てめぇだって恵おばさんのこと泣かせたくねぇって言ってたじゃねぇか! ありゃウソだったんかよ!?」
「んなわけないじゃない!」
「だったら、試してみりゃいいじゃねぇか!」
「だって……」
「『だって』、何だよ!?」
「旦那さんになる人にしか見せないって決めてるの!」
めんどくせー。
たかがパンツ一つでそこまで言うか。
だが、まぁいい。
そっちがその気なら、こっちにだって手はある。
なにせ、このバカはムキになると見境なく反発しようとするからな。
あとは、それを上手く利用してやればいいだけの話し。
「あぁ、そうかよ。だったら俺がお前の旦那になる! それで文句ねぇんだろ!?」
「なっ、ば、バカバカバカバカバカ! どさくさにまぎれて、なにわけのわかんないこと言ってんのよ!?」
「てめぇが、旦那にしか見せねぇーつぅから、旦那になるって言ったまでじゃねぇか! ごたくはいぃから早くしやがれ!」
「な、な、なにバカなこと言ってんのよ!? す、少しは状況考えてもの言いなさいよね!?」
「んなもん、こっちのセリフだ! 明日目覚めるかどうかもわかんねぇんだぞ! だったら手当たり次第何でも試すしかねぇじゃねぇか!? それに、だ! 相手の母親前にして妹のパンツみながら娘さんと結婚させて下さいとか言うヤツの気持考えやがれ! こんなバカ。未来永劫、俺ぐれぇしかいねぇんだぞ!」
しばし沈黙が続いていた。どうやら作戦は順調なようだ。
正直なところエロイパンツを見た程度でこの状態が改善するなんて思っちゃいねぇ。
ただ単に、恵おばさんが提案したことを実現したいだけだ。
何かしら打開策を実践することで恵おばさんの気持が――そう、例え一時的だけでも軽くなるならじゅうぶんだった。
「――いわないでよ」
「んぁ? なんだって?」
「無理なこと言わないでって言ってるの!」
「はぁ? なんで無理なんだよ! むしろどこに問題があるか教えてもらいてぇくらいだわ!」
「問題もなにも問題だらけじゃない!」
「だから、なにが問題だっつーんだよ!?」
「なんでもかんでもエロゲーと一緒にしないでよね! リアルじゃ兄妹は結婚できないの! いい加減、ちょっとは……少しくらいこの世界と向き合ってよ!」
予定通りというか、やっぱりだったというべきか。
どうやらコイツは、いまだに自分が勘違いしていることに気付いてない。
取り立てて説明するまでもないと思って放置してきたが、よもやこんな形で使える日がくるとは思わなかった。
昔の人は物を大切にしたとかって聞いたことあるが……どうやら、くだらんネタも同じらしい。
大切に保管しておけば、それなりに価値が出るみたいだからな!
「だったら! 俺と、お前が結婚するのに何も問題がねぇっ証明したら、お前は俺と結婚してもいいっつーんだな!?」
「あー、そうよ! してやろうじゃない! 結婚でも何でもしてやるわよ!」
おっしゃー!
『何でも』いただきましたー!
想定以上の収穫だ!
これでもう全てやりたい放題である。
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