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プロローグ
【03】今日の今日こそはしっかりと叱っていただかないと
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「おい、丸山 啓介!」
一日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴って数分、僕のクラスには一人の女子生徒の僕を呼ぶ声が響き渡る。
その女子生徒、その名は大塚 響。例の上杉の幼馴染だ。一年生ながら風紀委員長を務め、定期テストは入学から一位をキープし続ける、規律や正義にうるさい真面目な黒髪少女。
しかし、そんな風紀委員長の実態は、いつも僕が最新刊を出すたびに「風紀を乱している」だの「不適切な表現がある」だの、いちいちケチをつけてくるクレーマー。
でも、今月は最新刊を出していないはず。周期的には今月に出る予定なのは、そうなんだけど、僕のデビュー作は完結しちゃったから、今は、新しい作品の企画にお困り中なんだ。
だから、そのことを彼女に伝える。
「今月は最新刊、出してないよ」
「そんなんことは知っている。私が問題にしてるのはこっち」
どうせ今度は最新刊を出してないことに難癖つけにきたのかなとか思ってたけど、どうも違ったらしく、教室の外にいる彼女は右手に持っていた携帯を教室の外から一番遠いところにいる僕に見せつけるかのように突き出した。
でも、やっぱり、僕らがいるのは教室の外とそこからもっとも遠い場所。いくら突き出したって、スマホの画面なんて見えやしない。
だけど、まぁなんのことを彼女が怒ってるのかぐらいは、だいたい予想がつく。これでも、半年ちょっとぐらいは彼女とバトルをしてきたんだ。彼女がくることをどうやってたか察知して、逃げていった上杉ほどじゃなくても、なんとなくは彼女のことを理解してきたと思う。それが良いことかどうかはわかんないけどね。
「それ、ファンアートでしょ。俺は関係ないじゃん」
彼女が突き出してるスマホに映し出されてるのは、多分ちょっとえっちな二次創作だ。ただ、だからといって、書いちゃいけない部分とかそういうのはなく、普通のバニーガール衣装。そりゃ、胸は強調されてるし、お尻も大きく書かれてるけど、R18になるほどのものじゃないし、実際、投稿されてるSNSでも通常の投稿と変わらず表示されているだろう。でも、彼女は怒るのだ。なぜなら――
「関係ないわけないでしょ。アナタはこれを自分のアカウントでシェアしたのよ。そのせいで私たちまで目を通すことになっちゃったじゃない。アナタは学校の中では有名人なの。少しはその自覚をもって、風紀を守りなさい」
彼女、大塚 響は、僕の活動や僕自身を否定したいわけじゃない。ただ、学校の風紀を守り、自分の正義を追いたいだけなのである。元々、上杉からも、「来年さ、俺のアレが入学してくるんだけど、アイツ、悪気があるわけじゃないんだよ。それだけは先に言っておくわ」とわざわざ説明を受けていた。この時は、僕が彼の幼馴染という存在に嫉妬するのではないかという心配だと思っていたのだが、そういうわけではなく、こういうことだったのだろう。
「だから、ちょっときなさい。行くわよ、会長のところに」
だとしても、こういう乱暴なところはどうかと思うな。
自分の主張を言い切った彼女は、人の教室へと入っていき、一番遠いところにいた僕へ手をかける。そして、そのまんま首のところを掴むと僕を引っ張っていった。
「今日の今日こそはしっかりと叱っていただかないと」
僕を引っ張る最中、彼女はそう呟いた。
これまでの経験上、彼女は僕を生徒会室に連れて行くのだろう。しかし、彼女によって連れて行かれた回数はすでに七回。今のところ、その七回中一度も、僕が叱られたことはたったの一度もないのであった。
彼女の表面は正義を追い求める風紀委員長。でも、彼女の本当の正体はただのポンコツなのではないかと僕は思う。
一日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴って数分、僕のクラスには一人の女子生徒の僕を呼ぶ声が響き渡る。
その女子生徒、その名は大塚 響。例の上杉の幼馴染だ。一年生ながら風紀委員長を務め、定期テストは入学から一位をキープし続ける、規律や正義にうるさい真面目な黒髪少女。
しかし、そんな風紀委員長の実態は、いつも僕が最新刊を出すたびに「風紀を乱している」だの「不適切な表現がある」だの、いちいちケチをつけてくるクレーマー。
でも、今月は最新刊を出していないはず。周期的には今月に出る予定なのは、そうなんだけど、僕のデビュー作は完結しちゃったから、今は、新しい作品の企画にお困り中なんだ。
だから、そのことを彼女に伝える。
「今月は最新刊、出してないよ」
「そんなんことは知っている。私が問題にしてるのはこっち」
どうせ今度は最新刊を出してないことに難癖つけにきたのかなとか思ってたけど、どうも違ったらしく、教室の外にいる彼女は右手に持っていた携帯を教室の外から一番遠いところにいる僕に見せつけるかのように突き出した。
でも、やっぱり、僕らがいるのは教室の外とそこからもっとも遠い場所。いくら突き出したって、スマホの画面なんて見えやしない。
だけど、まぁなんのことを彼女が怒ってるのかぐらいは、だいたい予想がつく。これでも、半年ちょっとぐらいは彼女とバトルをしてきたんだ。彼女がくることをどうやってたか察知して、逃げていった上杉ほどじゃなくても、なんとなくは彼女のことを理解してきたと思う。それが良いことかどうかはわかんないけどね。
「それ、ファンアートでしょ。俺は関係ないじゃん」
彼女が突き出してるスマホに映し出されてるのは、多分ちょっとえっちな二次創作だ。ただ、だからといって、書いちゃいけない部分とかそういうのはなく、普通のバニーガール衣装。そりゃ、胸は強調されてるし、お尻も大きく書かれてるけど、R18になるほどのものじゃないし、実際、投稿されてるSNSでも通常の投稿と変わらず表示されているだろう。でも、彼女は怒るのだ。なぜなら――
「関係ないわけないでしょ。アナタはこれを自分のアカウントでシェアしたのよ。そのせいで私たちまで目を通すことになっちゃったじゃない。アナタは学校の中では有名人なの。少しはその自覚をもって、風紀を守りなさい」
彼女、大塚 響は、僕の活動や僕自身を否定したいわけじゃない。ただ、学校の風紀を守り、自分の正義を追いたいだけなのである。元々、上杉からも、「来年さ、俺のアレが入学してくるんだけど、アイツ、悪気があるわけじゃないんだよ。それだけは先に言っておくわ」とわざわざ説明を受けていた。この時は、僕が彼の幼馴染という存在に嫉妬するのではないかという心配だと思っていたのだが、そういうわけではなく、こういうことだったのだろう。
「だから、ちょっときなさい。行くわよ、会長のところに」
だとしても、こういう乱暴なところはどうかと思うな。
自分の主張を言い切った彼女は、人の教室へと入っていき、一番遠いところにいた僕へ手をかける。そして、そのまんま首のところを掴むと僕を引っ張っていった。
「今日の今日こそはしっかりと叱っていただかないと」
僕を引っ張る最中、彼女はそう呟いた。
これまでの経験上、彼女は僕を生徒会室に連れて行くのだろう。しかし、彼女によって連れて行かれた回数はすでに七回。今のところ、その七回中一度も、僕が叱られたことはたったの一度もないのであった。
彼女の表面は正義を追い求める風紀委員長。でも、彼女の本当の正体はただのポンコツなのではないかと僕は思う。
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