毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳でツンデレな幼馴染は僕にはいない。

ただの男子高校生

文字の大きさ
上 下
2 / 5
プロローグ

【02】普通にしてれば、ちょっとはカッコいい部類なのに

しおりを挟む
 家から電車で五駅、全部でかかる時間は約三十分ちょい。僕の通っている高校は、めちゃくちゃ頭がいいわけじゃないけど、まぁそれなりにできなくはないかなって感じの一応、進学枠だ。そしてその高校の中で階段を登って三階、廊下の奥から二番目、2-Cの教室、そこの窓際一番後ろ、そんな主人公席、そこが僕の席。

 でも、主人公席だからと言って、前や隣なんかに幼馴染がいるわけじゃない。そこにいるのは、高校に入ってから仲良くなった上杉うえすぎ りょうと、ついこの前仲良くなったばっかりの高山たかやま 恵美えみさんだ。本当は彼らでさえ、強引に幼馴染という括りにして、愛しい存在へとしたかったけど、ちょっとそれはキツかったかな。妹とか姉とかと違って、もう、高校生になっちゃうと幼馴染は作れないんだよね。

 ただ、だからといって幼馴染になれない彼らが嫌いなわけではないし、冷たい態度をとるわけでもない。普通に友達として大事だと思っている。僕の人間関係は、幼馴染がいないという観点を除けば、かなり恵まれている方なんじゃないかな。たまに変な人たちもいるけどね。

「おい、その目の調子じゃあ今日も架空の幼馴染ちゃんの夢見て泣いてきたのかよ」
「ほんと、丸山くんは丸山くんだよね。普通にしてれば、ちょっとはカッコいい部類なのに、性癖が……ね」

 その証拠に席の近い彼と彼女は、登校してわずかな僕に泣いた跡があるということを、すかさず確認し、言葉をかけてくれる。

 ちなみに、僕が幼馴染愛好家であり、ライトノベル作家の「啓介ゼロスリー」であることは周知の事実だ。クラスの奴らはもちろん、学年の違う先輩や後輩にだって知らない者はいないだろう。なんなら、前の生徒会長には「学校の風紀を乱しかねない要注意人物」というレッテルを貼られ、風紀委員たちから監視対象とされているのだ。まぁ、簡単にいってしまえば、一瞬の有名人ってやつなのだろう。あまり深いことは考えずに、そうやって、ポジティブにいこう。

 でも――

「別に性癖が普通でも、幼馴染がいて、イケメンな上杉には勝てないよ」

 ――それも束の間、僕は、言葉をかけてくれた彼らへといじけながらも言葉を返した。理由は簡単、それは悲しき現実に気づいたから。上杉との男としての差、その事実に僕は気づいてしまったのだ。だから、つい数秒前に「ポジティブにいこう」と宣言したくせにいじけしまう。

 上杉はイケメンだ。学年、いや、学校一のイケメンだろう。しかも、彼のムカつくところは顔が良いだけじゃない。顔に加えて、運動も勉強もできる。そして、さらに家が隣の「幼馴染」が同じ高校にいるという欲張り四点セットなのだ。そんな彼のことを、心の中で「犯罪者」と呼んでいるぐらいには嫉妬している。もしも、僕がデスゲーム系の小説を書くものなら、彼をモチーフにした登場人物を真っ先に、もっとも残酷な殺し方で殺すだろう。

 けど、上杉は、やっぱり同性から見てもカッコいいから許してあげている。それに、シンプルに良いやつなのだ。性格も良いんだよな。ほんと、コイツ犯罪者だと思うわ。死ね。

「幼馴染なんてそんな良いもんじゃないよ。啓介だって、俺のアレに絡まれて痛い目みてるでしょ?」

 僕のいじけ言葉に、上杉は自分の椅子に跨りながら否定してくる。
 
 「俺のアレ」というフレーズは羨ましいなってめっちゃ思うけど、それぐらいで、彼の幼馴染の否定が間違っているわけじゃない。彼の幼馴染は、僕がわざわざ今語らなくても、そのうち出てくると思う。けど、それでもまぁ簡単にいっちゃうと、変なやつなんだ。僕ほどではないかもしれないけど、僕ほどといってもあながち間違いではないぐらいには、ちょっと変わった子なんだよね。

 だが――

「そりゃそうだけど、上杉にとってあの子は幼馴染なわけじゃん。ってことは、親に怒られて泣いてるところを見たことがあったり、一緒にお風呂に入ってまだ可愛いらしいぺったんこツルツルの体を見たことがあったりするわけでしょ。なら、いいじゃん、別に」

 僕はあの子の幼馴染ではない。でも、上杉はあの子の幼馴染なのだ。なら、多少変だとしても問題はない。

「いや、まぁそうだけどさ……どう思うよ、高山」
「えっ、わたしっ?」

 逃げ場がなくなり、言葉に詰まりが出てきた上杉は、相槌を打ちながらもスマホを触っていた高山さんへとキラーパスを出す。

 高山さんは普通の女子高生。同じクラスの陸上部の子と仲がいいけれど、普段のこの時間は陸上部は朝練。それで、朝にいつも一人でスマホをいじっている彼女と席が近い僕らは話をするようになった。まぁ、きっかけの八十パーセントぐらいは上杉だ。

「まぁ女子からすると、上杉くんの幼馴染が羨ましいよね。私も上杉くんと家が隣だったらなーって思うよ」

 高山さんは特別、上杉へと好意を抱いているわけでもないが、カッコいい彼への憧れは普通にあると思っている。けど、今こうやって、話をしている高山さんには女子から鋭い視線が向けられているのも事実。彼女としては色々複雑な感情ではあろう。

「いや、俺もあいつじゃなくて、高山が隣ならよかったよ」

 上杉が高山さんの方を見ながら、超スーパーつよつよイケメンボイスでこういった。しかし、これはただの天然だ。決して、彼が女たらしなわけではない。

 高山さんもその事実に気づいており、最初は顔を少し紅めて照れていたが、今では「ははっ」と周りの女子たちを気にしながら、苦笑いでかわしている。

 こんな風に僕らは、イケメン、ラノベ作家、普通の女子高生、そんなちょっと変わった三人組で朝を過ごす。

 でも、問題はここから。これからはそれを語っていこう。

 放課後の時間は、女帝と呼ばれる生徒会長と正義を追い求める風紀委員のお話だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...