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プロローグ
【02】普通にしてれば、ちょっとはカッコいい部類なのに
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家から電車で五駅、全部でかかる時間は約三十分ちょい。僕の通っている高校は、めちゃくちゃ頭がいいわけじゃないけど、まぁそれなりにできなくはないかなって感じの一応、進学枠だ。そしてその高校の中で階段を登って三階、廊下の奥から二番目、2-Cの教室、そこの窓際一番後ろ、そんな主人公席、そこが僕の席。
でも、主人公席だからと言って、前や隣なんかに幼馴染がいるわけじゃない。そこにいるのは、高校に入ってから仲良くなった上杉 涼と、ついこの前仲良くなったばっかりの高山 恵美さんだ。本当は彼らでさえ、強引に幼馴染という括りにして、愛しい存在へとしたかったけど、ちょっとそれはキツかったかな。妹とか姉とかと違って、もう、高校生になっちゃうと幼馴染は作れないんだよね。
ただ、だからといって幼馴染になれない彼らが嫌いなわけではないし、冷たい態度をとるわけでもない。普通に友達として大事だと思っている。僕の人間関係は、幼馴染がいないという観点を除けば、かなり恵まれている方なんじゃないかな。たまに変な人たちもいるけどね。
「おい、その目の調子じゃあ今日も架空の幼馴染ちゃんの夢見て泣いてきたのかよ」
「ほんと、丸山くんは丸山くんだよね。普通にしてれば、ちょっとはカッコいい部類なのに、性癖が……ね」
その証拠に席の近い彼と彼女は、登校してわずかな僕に泣いた跡があるということを、すかさず確認し、言葉をかけてくれる。
ちなみに、僕が幼馴染愛好家であり、ライトノベル作家の「啓介ゼロスリー」であることは周知の事実だ。クラスの奴らはもちろん、学年の違う先輩や後輩にだって知らない者はいないだろう。なんなら、前の生徒会長には「学校の風紀を乱しかねない要注意人物」というレッテルを貼られ、風紀委員たちから監視対象とされているのだ。まぁ、簡単にいってしまえば、一瞬の有名人ってやつなのだろう。あまり深いことは考えずに、そうやって、ポジティブにいこう。
でも――
「別に性癖が普通でも、幼馴染がいて、イケメンな上杉には勝てないよ」
――それも束の間、僕は、言葉をかけてくれた彼らへといじけながらも言葉を返した。理由は簡単、それは悲しき現実に気づいたから。上杉との男としての差、その事実に僕は気づいてしまったのだ。だから、つい数秒前に「ポジティブにいこう」と宣言したくせにいじけしまう。
上杉はイケメンだ。学年、いや、学校一のイケメンだろう。しかも、彼のムカつくところは顔が良いだけじゃない。顔に加えて、運動も勉強もできる。そして、さらに家が隣の「幼馴染」が同じ高校にいるという欲張り四点セットなのだ。そんな彼のことを、心の中で「犯罪者」と呼んでいるぐらいには嫉妬している。もしも、僕がデスゲーム系の小説を書くものなら、彼をモチーフにした登場人物を真っ先に、もっとも残酷な殺し方で殺すだろう。
けど、上杉は、やっぱり同性から見てもカッコいいから許してあげている。それに、シンプルに良いやつなのだ。性格も良いんだよな。ほんと、コイツ犯罪者だと思うわ。死ね。
「幼馴染なんてそんな良いもんじゃないよ。啓介だって、俺のアレに絡まれて痛い目みてるでしょ?」
僕のいじけ言葉に、上杉は自分の椅子に跨りながら否定してくる。
「俺のアレ」というフレーズは羨ましいなってめっちゃ思うけど、それぐらいで、彼の幼馴染の否定が間違っているわけじゃない。彼の幼馴染は、僕がわざわざ今語らなくても、そのうち出てくると思う。けど、それでもまぁ簡単にいっちゃうと、変なやつなんだ。僕ほどではないかもしれないけど、僕ほどといってもあながち間違いではないぐらいには、ちょっと変わった子なんだよね。
だが――
「そりゃそうだけど、上杉にとってあの子は幼馴染なわけじゃん。ってことは、親に怒られて泣いてるところを見たことがあったり、一緒にお風呂に入ってまだ可愛いらしいぺったんこツルツルの体を見たことがあったりするわけでしょ。なら、いいじゃん、別に」
僕はあの子の幼馴染ではない。でも、上杉はあの子の幼馴染なのだ。なら、多少変だとしても問題はない。
「いや、まぁそうだけどさ……どう思うよ、高山」
「えっ、わたしっ?」
逃げ場がなくなり、言葉に詰まりが出てきた上杉は、相槌を打ちながらもスマホを触っていた高山さんへとキラーパスを出す。
高山さんは普通の女子高生。同じクラスの陸上部の子と仲がいいけれど、普段のこの時間は陸上部は朝練。それで、朝にいつも一人でスマホをいじっている彼女と席が近い僕らは話をするようになった。まぁ、きっかけの八十パーセントぐらいは上杉だ。
「まぁ女子からすると、上杉くんの幼馴染が羨ましいよね。私も上杉くんと家が隣だったらなーって思うよ」
高山さんは特別、上杉へと好意を抱いているわけでもないが、カッコいい彼への憧れは普通にあると思っている。けど、今こうやって、話をしている高山さんには女子から鋭い視線が向けられているのも事実。彼女としては色々複雑な感情ではあろう。
「いや、俺もあいつじゃなくて、高山が隣ならよかったよ」
上杉が高山さんの方を見ながら、超スーパーつよつよイケメンボイスでこういった。しかし、これはただの天然だ。決して、彼が女たらしなわけではない。
高山さんもその事実に気づいており、最初は顔を少し紅めて照れていたが、今では「ははっ」と周りの女子たちを気にしながら、苦笑いでかわしている。
こんな風に僕らは、イケメン、ラノベ作家、普通の女子高生、そんなちょっと変わった三人組で朝を過ごす。
でも、問題はここから。これからはそれを語っていこう。
放課後の時間は、女帝と呼ばれる生徒会長と正義を追い求める風紀委員のお話だ。
でも、主人公席だからと言って、前や隣なんかに幼馴染がいるわけじゃない。そこにいるのは、高校に入ってから仲良くなった上杉 涼と、ついこの前仲良くなったばっかりの高山 恵美さんだ。本当は彼らでさえ、強引に幼馴染という括りにして、愛しい存在へとしたかったけど、ちょっとそれはキツかったかな。妹とか姉とかと違って、もう、高校生になっちゃうと幼馴染は作れないんだよね。
ただ、だからといって幼馴染になれない彼らが嫌いなわけではないし、冷たい態度をとるわけでもない。普通に友達として大事だと思っている。僕の人間関係は、幼馴染がいないという観点を除けば、かなり恵まれている方なんじゃないかな。たまに変な人たちもいるけどね。
「おい、その目の調子じゃあ今日も架空の幼馴染ちゃんの夢見て泣いてきたのかよ」
「ほんと、丸山くんは丸山くんだよね。普通にしてれば、ちょっとはカッコいい部類なのに、性癖が……ね」
その証拠に席の近い彼と彼女は、登校してわずかな僕に泣いた跡があるということを、すかさず確認し、言葉をかけてくれる。
ちなみに、僕が幼馴染愛好家であり、ライトノベル作家の「啓介ゼロスリー」であることは周知の事実だ。クラスの奴らはもちろん、学年の違う先輩や後輩にだって知らない者はいないだろう。なんなら、前の生徒会長には「学校の風紀を乱しかねない要注意人物」というレッテルを貼られ、風紀委員たちから監視対象とされているのだ。まぁ、簡単にいってしまえば、一瞬の有名人ってやつなのだろう。あまり深いことは考えずに、そうやって、ポジティブにいこう。
でも――
「別に性癖が普通でも、幼馴染がいて、イケメンな上杉には勝てないよ」
――それも束の間、僕は、言葉をかけてくれた彼らへといじけながらも言葉を返した。理由は簡単、それは悲しき現実に気づいたから。上杉との男としての差、その事実に僕は気づいてしまったのだ。だから、つい数秒前に「ポジティブにいこう」と宣言したくせにいじけしまう。
上杉はイケメンだ。学年、いや、学校一のイケメンだろう。しかも、彼のムカつくところは顔が良いだけじゃない。顔に加えて、運動も勉強もできる。そして、さらに家が隣の「幼馴染」が同じ高校にいるという欲張り四点セットなのだ。そんな彼のことを、心の中で「犯罪者」と呼んでいるぐらいには嫉妬している。もしも、僕がデスゲーム系の小説を書くものなら、彼をモチーフにした登場人物を真っ先に、もっとも残酷な殺し方で殺すだろう。
けど、上杉は、やっぱり同性から見てもカッコいいから許してあげている。それに、シンプルに良いやつなのだ。性格も良いんだよな。ほんと、コイツ犯罪者だと思うわ。死ね。
「幼馴染なんてそんな良いもんじゃないよ。啓介だって、俺のアレに絡まれて痛い目みてるでしょ?」
僕のいじけ言葉に、上杉は自分の椅子に跨りながら否定してくる。
「俺のアレ」というフレーズは羨ましいなってめっちゃ思うけど、それぐらいで、彼の幼馴染の否定が間違っているわけじゃない。彼の幼馴染は、僕がわざわざ今語らなくても、そのうち出てくると思う。けど、それでもまぁ簡単にいっちゃうと、変なやつなんだ。僕ほどではないかもしれないけど、僕ほどといってもあながち間違いではないぐらいには、ちょっと変わった子なんだよね。
だが――
「そりゃそうだけど、上杉にとってあの子は幼馴染なわけじゃん。ってことは、親に怒られて泣いてるところを見たことがあったり、一緒にお風呂に入ってまだ可愛いらしいぺったんこツルツルの体を見たことがあったりするわけでしょ。なら、いいじゃん、別に」
僕はあの子の幼馴染ではない。でも、上杉はあの子の幼馴染なのだ。なら、多少変だとしても問題はない。
「いや、まぁそうだけどさ……どう思うよ、高山」
「えっ、わたしっ?」
逃げ場がなくなり、言葉に詰まりが出てきた上杉は、相槌を打ちながらもスマホを触っていた高山さんへとキラーパスを出す。
高山さんは普通の女子高生。同じクラスの陸上部の子と仲がいいけれど、普段のこの時間は陸上部は朝練。それで、朝にいつも一人でスマホをいじっている彼女と席が近い僕らは話をするようになった。まぁ、きっかけの八十パーセントぐらいは上杉だ。
「まぁ女子からすると、上杉くんの幼馴染が羨ましいよね。私も上杉くんと家が隣だったらなーって思うよ」
高山さんは特別、上杉へと好意を抱いているわけでもないが、カッコいい彼への憧れは普通にあると思っている。けど、今こうやって、話をしている高山さんには女子から鋭い視線が向けられているのも事実。彼女としては色々複雑な感情ではあろう。
「いや、俺もあいつじゃなくて、高山が隣ならよかったよ」
上杉が高山さんの方を見ながら、超スーパーつよつよイケメンボイスでこういった。しかし、これはただの天然だ。決して、彼が女たらしなわけではない。
高山さんもその事実に気づいており、最初は顔を少し紅めて照れていたが、今では「ははっ」と周りの女子たちを気にしながら、苦笑いでかわしている。
こんな風に僕らは、イケメン、ラノベ作家、普通の女子高生、そんなちょっと変わった三人組で朝を過ごす。
でも、問題はここから。これからはそれを語っていこう。
放課後の時間は、女帝と呼ばれる生徒会長と正義を追い求める風紀委員のお話だ。
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