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プロローグ
【01】この私が、朝ご飯を作ってあげてるんだからはやく食べなさいよ
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「啓介、もう朝だよ。この私が、朝ご飯を作ってあげてるんだからはやく食べなさいよ」
体が揺れる。遠くから声が聞こえる。「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」のテンプレかと思うセリフが。
僕はうっすらと意識を覚醒させ、視界を開く。
すると、そこには、おたまを片手に、ピンク色の可愛いエプロン、黒髪とすらりとした体型に似合わない大きな膨らみ。
僕は確信した。これは確実に「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」だ。
でも、それに気づいた時、僕は同時に別のことにも気づいた。「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」だと僕が今、この現状において確信をするということは、これは「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」ではない。僕が見ている「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」は幻想、すなわち、夢なのだと――
――――――
「あああああああああああ」
僕は叫び声をあげる。ベッドの上で、愛用している笠原かさはら 波なみちゃんの抱き枕に泣きながらしがみつく。
「なんで、俺には『毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染』がいないんだぁああああ」
意識を覚醒させた視界の先に女の子がいるわけでも、意識を覚醒させたその朝にご飯が用意されているわけでもなく、僕はただの一人暮らしの高校生のライトノベル作家で、重度の幼馴染愛好家、というか幼馴染中毒者。
こうやって、週に一回は、様々な幼馴染の夢を見ては泣き叫ぶ生活をもう二年は続けているのだ。もう、自分では、精神障害の域ではないかと思うが、知り合いの精神科医の女医にそのことを相談したら、苦笑いされた。
「自分で朝ごはん作るか」
本当はもうちょっと泣いていたい精神状態だけど、これ以上、泣いても幼馴染は現れないし、学校に遅刻して怒ってくれる幼馴染もいない。ただ、生活指導のおじさんに怒られるだけ。そこに価値も、ロマンも、愛も、勇気もない。当たり前の現実が僕を襲うだけ。
だから、僕はそんな何もない当たり前の現実から逃げるために、物語の世界へとのめり込んだ。空想、非現実、存在しない幼馴染、なんでもありな夢を現実へと変えてくれる最高の世界に。
『隣に住む幼馴染が可愛いすぎて僕は生きていけない』
これが僕のデビュー作、通称『幼僕』。そんなに他の作家たちに比べて、文章力とか構成力とか、その辺のライトノベルを書く上での才能があったわけじゃないけど、こうやって、一人で僕が生きているぐらいには、まぁまぁ売れてくれた。
やっぱ、みんな「幼馴染」が好きなんだなって思ったよ。少し、同じ想いをもつ同士が集まってくれたのは、嬉しさもあったし。自分が「可愛い」と思うものを同じように「可愛い」と言ってくれる、それが思ったよりも快感だった。
でも、僕はこうやって物語を書く側にいるのは、そこまで好きじゃない。断然、読む側が好きだ。漫画家、作家、脚本家、そんな僕じゃない他人が考えた「最強の幼馴染」、それが僕を幸福で満たしてくれる。
けど、僕は「最強の幼馴染」を決めれない。色々な「幼馴染」に目を映りしちゃうんだ。
金髪、黒髪、青髪、ピンク髪に、ロング、ツインテ、ポニテ、ショート、巨乳貧乳、眼鏡、リボン、年下年上と同級生、ツンデレヤンデレ天然に、世話好き真面目清楚でヤンキーな、天才秀才才色兼備、バスケ部と文芸部と陸上部、そして、生徒会。
この中から選び放題。どれだけ選んだっていいし、どれだけ選ばなくてもいい。幼馴染の可能性は無限大だ。だから、僕は書くのが好きじゃない。というか、書けない。幼馴染のキャラ設定を、選べないからね。
っていうわけで、今は次回作の企画にお困り中さ。本当に何書いていいんだかわからなくて、担当編集にも毎日、怒られている。
でも、僕は小説を、ラノベを、物語を作らなければならない。なぜなら――
――ふふっ、そうだね、理由は簡単だよ。「幼馴染のグッズを買わなきゃいけないから」、そのためにはお金がいるんだ。
僕の部屋の中、どこにでもあるアパートの一室、そこには幼馴染キャラたちのグッズで埋め尽くされている。
体が揺れる。遠くから声が聞こえる。「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」のテンプレかと思うセリフが。
僕はうっすらと意識を覚醒させ、視界を開く。
すると、そこには、おたまを片手に、ピンク色の可愛いエプロン、黒髪とすらりとした体型に似合わない大きな膨らみ。
僕は確信した。これは確実に「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」だ。
でも、それに気づいた時、僕は同時に別のことにも気づいた。「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」だと僕が今、この現状において確信をするということは、これは「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」ではない。僕が見ている「毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染」は幻想、すなわち、夢なのだと――
――――――
「あああああああああああ」
僕は叫び声をあげる。ベッドの上で、愛用している笠原かさはら 波なみちゃんの抱き枕に泣きながらしがみつく。
「なんで、俺には『毎朝、朝ごはんを作ってくれる巨乳な黒髪ツンデレ幼馴染』がいないんだぁああああ」
意識を覚醒させた視界の先に女の子がいるわけでも、意識を覚醒させたその朝にご飯が用意されているわけでもなく、僕はただの一人暮らしの高校生のライトノベル作家で、重度の幼馴染愛好家、というか幼馴染中毒者。
こうやって、週に一回は、様々な幼馴染の夢を見ては泣き叫ぶ生活をもう二年は続けているのだ。もう、自分では、精神障害の域ではないかと思うが、知り合いの精神科医の女医にそのことを相談したら、苦笑いされた。
「自分で朝ごはん作るか」
本当はもうちょっと泣いていたい精神状態だけど、これ以上、泣いても幼馴染は現れないし、学校に遅刻して怒ってくれる幼馴染もいない。ただ、生活指導のおじさんに怒られるだけ。そこに価値も、ロマンも、愛も、勇気もない。当たり前の現実が僕を襲うだけ。
だから、僕はそんな何もない当たり前の現実から逃げるために、物語の世界へとのめり込んだ。空想、非現実、存在しない幼馴染、なんでもありな夢を現実へと変えてくれる最高の世界に。
『隣に住む幼馴染が可愛いすぎて僕は生きていけない』
これが僕のデビュー作、通称『幼僕』。そんなに他の作家たちに比べて、文章力とか構成力とか、その辺のライトノベルを書く上での才能があったわけじゃないけど、こうやって、一人で僕が生きているぐらいには、まぁまぁ売れてくれた。
やっぱ、みんな「幼馴染」が好きなんだなって思ったよ。少し、同じ想いをもつ同士が集まってくれたのは、嬉しさもあったし。自分が「可愛い」と思うものを同じように「可愛い」と言ってくれる、それが思ったよりも快感だった。
でも、僕はこうやって物語を書く側にいるのは、そこまで好きじゃない。断然、読む側が好きだ。漫画家、作家、脚本家、そんな僕じゃない他人が考えた「最強の幼馴染」、それが僕を幸福で満たしてくれる。
けど、僕は「最強の幼馴染」を決めれない。色々な「幼馴染」に目を映りしちゃうんだ。
金髪、黒髪、青髪、ピンク髪に、ロング、ツインテ、ポニテ、ショート、巨乳貧乳、眼鏡、リボン、年下年上と同級生、ツンデレヤンデレ天然に、世話好き真面目清楚でヤンキーな、天才秀才才色兼備、バスケ部と文芸部と陸上部、そして、生徒会。
この中から選び放題。どれだけ選んだっていいし、どれだけ選ばなくてもいい。幼馴染の可能性は無限大だ。だから、僕は書くのが好きじゃない。というか、書けない。幼馴染のキャラ設定を、選べないからね。
っていうわけで、今は次回作の企画にお困り中さ。本当に何書いていいんだかわからなくて、担当編集にも毎日、怒られている。
でも、僕は小説を、ラノベを、物語を作らなければならない。なぜなら――
――ふふっ、そうだね、理由は簡単だよ。「幼馴染のグッズを買わなきゃいけないから」、そのためにはお金がいるんだ。
僕の部屋の中、どこにでもあるアパートの一室、そこには幼馴染キャラたちのグッズで埋め尽くされている。
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