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異変
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しおりを挟む羽のように体が軽い。
纏った精霊の力は風花の意思に反応してその体を思い描いた場所へ運ぶ。
手の中に作り出した剣を握って、風花は空を駆けた。
その切先が歪みの体を次々と斬りつけていく。
繰り出された攻撃は、身に届く前にすべて消し飛ばした。
視線一つで光を操り、風を纏う。
伸ばされた蔦を炎で焼き切って、水を散らして空気を湿らせた。
地面から土を巻き上げ草を編み、攻撃が生徒に及ぶ前に阻む。
「おーいで」
ぱちん、指を鳴らす。
顔を出したのは荘厳なオーラを纏った大地の精霊だった。
その場の誰もが息を呑み、我が目を疑う。
精霊が挨拶をする様に風花の体をくるりと周り、その身に擦り寄った。
風花の儚い美貌に、均整の取れた雄々しい体が絡み合う。
絵に描いたような光景に、皆、戦いを忘れた。
「ふう!」
ライルの焦ったような声が風花の耳に届く。
安心させるように風花はその顔に微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ」
大丈夫。
俺はまだ、るぅの傍にいる。
風花は大地の精霊に守護を頼むと、歪みに再び向き合った。
歪みの体はすでにボロボロで、その場に留まっているのがやっとのようだった。
脚を削ぎ、地面に伏せたその体に雷を落とす。
一際大きく鳴いて、歪みはその体を空気に溶かした。
「後はお願いね」
風花の言葉に、精霊がその場の残滓を払う。
戦闘の痕跡が消えていく。
元に戻った地面と、清浄な空気。
精霊の姿が消え、キラキラと空気に混じった魔素が輝いたのを見届けると、風花はライルの元へと戻った。
「るぅ」
「ふう!」
痛いほどに抱きしめられて、風花はライルの魔素を胸いっぱいに吸い込んだ。
心の昂りが穏やかになる。
とくん、と鼓動が混ざり合ったような感覚に包まれて、風花は自分の中の気持ちに気が付いた。
この人の、傍にいたい。
これからもずっと。
るぅが、好き。
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