風に凪ぐ花

みん

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異変

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「ふ、ふう……?」
「なぁに?」

 自分を見上げるライルの目が驚きに見開かれている。
 風花は微笑んで顔をライルへと傾けた。

 ライルに付けられた特別な名を呼ばれる度に、体中の魔素が震えているのがわかる。
 精霊が契約主に召喚されるように、魔素がライルの元へと自分を運んだ事実が、更に風花の心を高鳴らせていた。

「るぅ」

 風花は歪みを突き飛ばすように手を振って、一足飛びにライルの正面に舞い降りた。
 手を伸ばして、その頭を両手で包み込む。
 そして導かれるように、風花はライルの額に口付けた。

 それは精霊が、祝福を与えるように。

「……っ」

 ライルの体が大きくびくりと跳ねた。
 風花とライルとの確かな繋がりが、大気に浸透する。
 冴え渡った魔素が、その場を支配するように呼応した。

「ちょっと、待っててね」

 満ち足りた体と心を高く浮かせて、風花はくるりと歪みへと向き直った。
 ライルが風花へと手を伸ばす。
 風花は安心させるように口元の笑みを深めた。


 正面に、強い悪意を湛えた歪み。
 踏み鳴らす脚も、聳える角も、風花の敵ではない。

 高揚した気分の中、風花はそれでも心の中に一つだけ怒りを宿していた。

「どこに出るのも君たちの勝手だけど……」


 ブラウンの瞳が、風の色を帯びる。


「誰の許可を得てるぅに手を出してるの?」


 言葉と共に繰り出された刃は、一瞬で歪みの角を切り落とした。

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