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過去との邂逅
(幕間)生徒代表運営官補佐の誤算2
しおりを挟むそして。
木陰から聞こえてくる会話に、ノアハは心をかき乱されてただ立ち尽くすことしか出来なかった。
彼の、ライルの、守るなんて言葉、初めて聞いた。
向けられたのは自分ではない。
風花という少年だ。
ノアハは今までライルに守ってもらいたいと思ったことはなかった。
ライルの側にありたいと、ライルを助けるのは自分であると自負はしていたが、ライルに守ってもらいたいとは思わない。
ノアハのライルに対する感情は、決して恋といったものではない。
強いて言うなれば家族愛のようなものである。
正直、風花のことは面白くないと思う。
ライルの守る、という言葉を聞いて、大事な息子が嫁に取られたような感覚かもしれない、とノアハは思い立った。
だとするならば、なんと。
「見苦しいものですねえ」
思わず口から漏れ出た心の声に、目の前の二つの影が振り向いた。
「ノアハ」
ライルの声にライルははっとして口に指先をあてた。
「……だれ?」
訝しむような風花の瞳とかち合う。
風花はそっとライルの後ろに身を潜めた。
今の言葉が風花に誤解を招くように伝わったことは明白だ。
ファーストコンタクトが最悪になったと、ノアハは自分の失態を恥じた。
「お初にお目にかかります。ノアハ=ミルズエースと申します。生徒代表運営官の補佐を務めております。以後、お見知り置きを」
少しでも心象を良くしようと笑顔で名乗りをあげる。
風花はライルの後ろから出ては来なかった。
想像していたよりも警戒心が強いらしい。
それも当然かもしれない。
噂になるほどの能力を持ちながら、風花は今まで団体生活をしたことがないという話だ。
好奇の視線に晒されて、意図しない悪意にも晒されたのだろう。
風花の心情を推し量ってか、ライル複雑そうに眉を歪めて風花の頭を撫でた。
「ふう。こいつは俺の乳兄弟だ。何かと世話になっている。顔を見せてやれ」
ライルに促されて風花は、おそるおそる顔を出した。
「……かぞく?」
「ふっ……ああ、そうだな、家族だ」
ライルは風花の問いに微笑んで答えた。
「……風花です。よろしく……」
ノアハはおずおずと差し出された風花の手をそっと包み込んだ。
信頼するライルの言葉を信じ、ノアハを受け入れようとしているのだ。
なんて。
「私が見苦しく嫉妬してしまうほどに、あなたは健気な方ですね。これから、ライルをよろしくお願いします」
出来る限り優しく語りかけると、風花は一緒きょとんとした表情を見せたあと、恥ずかしそうに少しだけ微笑んだ。
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