風に凪ぐ花

みん

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潜入と出会い

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 訓練場の端に移動し、カルネとスィールは、各々の武器を見せ合った。

「カルネはやっぱり槍?」
「そうね。昔から棒術を学んできたから、しっくりくるわ」

 カルネは手の中で槍をくるりと一回転させた。
 スィールは腰に下げた袋から小さな玉を取り出す。
 小指の先ほどの大きさだ。
 指先で摘んだ一粒を、スィールは手の中でころころと遊ばせた。

「俺はこれを使うんだ。いろんな種類があるんだけど、一括りで言うと爆薬かな」

 風花は爆薬と呼ばれた玉をまじまじと見つめた。
 中から微かに魔力が読み取れる。

「ふぅーん。魔力を起爆薬でコーティングして固めてあるんだね」
「そうそう。俺の家って薬屋だから、薬作るついでに煎じてる。小さな歪みだったら襲われても吹き飛ばせるからさ」

 普通の人間は魔力を直接見ることは出来ないが、風花も二人も失念していた。
 なるほどねえー、と風花が納得の相槌を打つ。
 うんうん、とうなづいていると、二人の視線を受けていることに風花は気付いた。

「? なに?」
「風花の武器は? 武器庫には入らなかったけど、行宗先生の質問でも手を挙げてなかったよね?」

 当然の疑問だ。
 カルネの言葉に風花はなんと言うべきか悩んだ。

「私も気になりますねぇ。君の武器」
「!」

 はっと身構えると行宗がいた。
 カルネとスィールも突然現れた行宗に驚いて固まっている。
 行宗はまっすぐに風花を見ていた。
 見すかすような目だ。

「実技の時間に担当教師を使い物にならなくしたのは君でしょう」

 疑問ではない問いかけだった。
 風花はなにも言えずに唇を噛んだ。
 行宗の眼鏡の奥の目が興味を伴って細められる。

「私は目が悪い分、大気の魔力の流れを読み取ることが出来ます。分かりますよ、君の周りは揺らいでいる」

 行宗は理解しているのだろう。見えているといった方が正しいのか。
 カルネとスィールは首を傾げていたが、行宗の目は風花の周りではなく、風花の体の中を見ていた。

(隠せないかー……というか、隠しても意味ない?)

 風花は諦めてため息を吐いた。
 いずれみんな知ることになるのだ。閉鎖空間での噂の伝達は早い。
 それに、ばれたところで事の本質を理解するには、及ばないだろう。

 風花は指をぱちんと鳴らした。

「俺の武器だよー」

 風花の前には精霊力を固めた真っ白な剣が浮かんでいた。

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