16 / 52
潜入と出会い
11
しおりを挟む
訓練場の端に移動し、カルネとスィールは、各々の武器を見せ合った。
「カルネはやっぱり槍?」
「そうね。昔から棒術を学んできたから、しっくりくるわ」
カルネは手の中で槍をくるりと一回転させた。
スィールは腰に下げた袋から小さな玉を取り出す。
小指の先ほどの大きさだ。
指先で摘んだ一粒を、スィールは手の中でころころと遊ばせた。
「俺はこれを使うんだ。いろんな種類があるんだけど、一括りで言うと爆薬かな」
風花は爆薬と呼ばれた玉をまじまじと見つめた。
中から微かに魔力が読み取れる。
「ふぅーん。魔力を起爆薬でコーティングして固めてあるんだね」
「そうそう。俺の家って薬屋だから、薬作るついでに煎じてる。小さな歪みだったら襲われても吹き飛ばせるからさ」
普通の人間は魔力を直接見ることは出来ないが、風花も二人も失念していた。
なるほどねえー、と風花が納得の相槌を打つ。
うんうん、とうなづいていると、二人の視線を受けていることに風花は気付いた。
「? なに?」
「風花の武器は? 武器庫には入らなかったけど、行宗先生の質問でも手を挙げてなかったよね?」
当然の疑問だ。
カルネの言葉に風花はなんと言うべきか悩んだ。
「私も気になりますねぇ。君の武器」
「!」
はっと身構えると行宗がいた。
カルネとスィールも突然現れた行宗に驚いて固まっている。
行宗はまっすぐに風花を見ていた。
見すかすような目だ。
「実技の時間に担当教師を使い物にならなくしたのは君でしょう」
疑問ではない問いかけだった。
風花はなにも言えずに唇を噛んだ。
行宗の眼鏡の奥の目が興味を伴って細められる。
「私は目が悪い分、大気の魔力の流れを読み取ることが出来ます。分かりますよ、君の周りは揺らいでいる」
行宗は理解しているのだろう。見えているといった方が正しいのか。
カルネとスィールは首を傾げていたが、行宗の目は風花の周りではなく、風花の体の中を見ていた。
(隠せないかー……というか、隠しても意味ない?)
風花は諦めてため息を吐いた。
いずれみんな知ることになるのだ。閉鎖空間での噂の伝達は早い。
それに、ばれたところで事の本質を理解するには、及ばないだろう。
風花は指をぱちんと鳴らした。
「俺の武器だよー」
風花の前には精霊力を固めた真っ白な剣が浮かんでいた。
「カルネはやっぱり槍?」
「そうね。昔から棒術を学んできたから、しっくりくるわ」
カルネは手の中で槍をくるりと一回転させた。
スィールは腰に下げた袋から小さな玉を取り出す。
小指の先ほどの大きさだ。
指先で摘んだ一粒を、スィールは手の中でころころと遊ばせた。
「俺はこれを使うんだ。いろんな種類があるんだけど、一括りで言うと爆薬かな」
風花は爆薬と呼ばれた玉をまじまじと見つめた。
中から微かに魔力が読み取れる。
「ふぅーん。魔力を起爆薬でコーティングして固めてあるんだね」
「そうそう。俺の家って薬屋だから、薬作るついでに煎じてる。小さな歪みだったら襲われても吹き飛ばせるからさ」
普通の人間は魔力を直接見ることは出来ないが、風花も二人も失念していた。
なるほどねえー、と風花が納得の相槌を打つ。
うんうん、とうなづいていると、二人の視線を受けていることに風花は気付いた。
「? なに?」
「風花の武器は? 武器庫には入らなかったけど、行宗先生の質問でも手を挙げてなかったよね?」
当然の疑問だ。
カルネの言葉に風花はなんと言うべきか悩んだ。
「私も気になりますねぇ。君の武器」
「!」
はっと身構えると行宗がいた。
カルネとスィールも突然現れた行宗に驚いて固まっている。
行宗はまっすぐに風花を見ていた。
見すかすような目だ。
「実技の時間に担当教師を使い物にならなくしたのは君でしょう」
疑問ではない問いかけだった。
風花はなにも言えずに唇を噛んだ。
行宗の眼鏡の奥の目が興味を伴って細められる。
「私は目が悪い分、大気の魔力の流れを読み取ることが出来ます。分かりますよ、君の周りは揺らいでいる」
行宗は理解しているのだろう。見えているといった方が正しいのか。
カルネとスィールは首を傾げていたが、行宗の目は風花の周りではなく、風花の体の中を見ていた。
(隠せないかー……というか、隠しても意味ない?)
風花は諦めてため息を吐いた。
いずれみんな知ることになるのだ。閉鎖空間での噂の伝達は早い。
それに、ばれたところで事の本質を理解するには、及ばないだろう。
風花は指をぱちんと鳴らした。
「俺の武器だよー」
風花の前には精霊力を固めた真っ白な剣が浮かんでいた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

龍神様の神使
石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。
しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。
そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。
※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
英雄の帰還。その後に
亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。
低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。
「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」
5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。
──
相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。
押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。
舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
BL団地妻on vacation
夕凪
BL
BL団地妻第二弾。
団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。
頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。
なんでも許せる人向けです。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる