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潜入と出会い
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しおりを挟む「風花はお昼とかどうしてるの?」
午前の講義を終えたカルネは、早速とばかりに風花をランチに誘った。
風花は首を傾げる。
「食べてないけど……」
「えぇ?!」
悲痛な声を上げたのはスィールだった。
「よ、よく夜までもつね……」
ここにきて風花は、重要なことを思い出した。
普通の人間は食物を摂取してエネルギーを補給するのだ。
(あちゃー……)
風花は内心しまったと思いながら話を合わせた。
「俺、少食だから、あんまり食べられないんだー。でも今日は一緒に食べようかなー」
風花は限りなく精霊に近い生物であるが故に、大気中の魔力を皮膚から摂取することでも生命の維持が出来た。
それ故に両親から放置されていても生きてこられた訳であるが、それは一般の常識の範囲外だ。
その分風花は、食物から栄養を摂取しすぎると、吐いて戻してしまう癖があった。
「そうなの? じゃあ今日は食堂に行こうね!」
「うん」
風花は、気にされないようになるべく昼食を食べることに決めた。
(食堂ってなんだろう)
一つの疑問を抱いたまま。
結論から言えば、食堂はすごいところであった。
食堂は、教室棟と寮の中間に位置していた。
風花はこんなにも同年代の人間がひしめいている場所を知らない。
先日の入学式は盛大に行われたが、参加していたのは一部の教師と初学年の生徒だけであった。
初学年から最終学年まで、果ては教師まで利用する食堂は、教室棟の規模と同等と思われた。
大テーブルから小テーブルまで、一つひとつの空間が大きく取られている。
食堂は朝から夜まで利用時間に制限はなく、夕方に自習で利用している学生も多くいた。
寮部屋に台所は設けられていたが、圧倒的に寮を利用する学生が多いのは、その自由度の高さ故であった。
三人は空いているテーブルに着くと、備え付けのボードに手を伸ばした。
「これは?」
「えっ? 知らない? 深央都の料理店では普通の設備だよ」
「この学園にあるのは、少し特殊だけどね」
スィールは、ボードに付いているセンサーに指先を触れさせた。
センサーが素養を感知し、個人を特定するらしい。
メニューを選ぶと個人の登録情報と結びつき、料金が課金される仕組みだ。
その過程で厨房にオーダーが通る。
この学園では入学金に食堂の利用料が含まれており、国からの補助によって、個別のオーダーには料金がかからない仕組みになっていた。
「ふーん」
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