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悪意の継承者
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しおりを挟む「イスミ……? 誰だ、それ?」
「《継承者》にいたか?」
「いや、一般隊員で見かけたような……」
「もしかしてヤタマルさんが目にかけてるっていう……」
「あ、箱庭の七不思議?」
聞き慣れぬ名前に会議室に騒めきが戻る。
キジトはヤタマルが落とした爆弾に怒りを募らせ、その胸倉を掴み上げた。
「ヤタマル!」
「あー……もしかして……」
キジトの動揺に気付いたサジルがシシーに視線を向けているのが視界の端に映る。
シシーは面白そうに頷いてサジルと何故か握手を交わしていた。
サトハルが近寄ってきて、もしかしてイスミを知っているのか? と尋ねている。
こいつもイスミの信者か、とキジトは舌打ちをした。
そして怒りの矛先は当然ヤタマルである。
「ふざっけんな! こんなところで気軽に名前出すな! 減るだろ!」
「減る? むしろイスミの価値が上がるだろ?」
「勝手に上げんなって言ってんだよ!」
イスミの価値が《継承者》に知れ渡れば、指名倍率が格段に上がる。
それ即ち、自分とイスミとがチームアップする確率が今以上に減ることである。
理解出来ていないヤタマルの頭の悪さに辟易した。
これも他人からの感情を受け付けないが故の弊害か。
いくら怒ったところで、キジトの怒りはヤタマルには伝わらない。
「そこまでですよ、ヤタマルさん、キジトさん」
「?!」
会議室中の視線がイーディルの背後の扉に注がれる。
凛とした立ち姿。
一般の隊服を身につけた、見慣れた顔立ち。
けして存在感は強くないのに、目が離せないのは何故なのか。
イーディルでさえ止めようとしなかった口論を止めたのは。
「イスミ・アドレアルです」
ここにいるはずのない、イスミ、だった。
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