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変わる日常
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しおりを挟むヤタマルは興奮冷めやらず箱庭への道を歩いていた。
目指す先は決まっている。キジトだ。
「キジト~!」
唐突に現れた侵入者に、キジトは嫌そうな顔をしてベンチから起き上がった。
ヤタマルの感情が突き刺さってうざったい。そんな顔だ。
ヤタマルはキジトのそんな思いなど理解することもなく、意気揚々とその前に躍りでた。
「イスミ! すげえな!」
「は?」
キジトが面を食らっている様子など我関せず、ヤタマルはその言葉の続きをただ吐き出した。
「いやあいつすげーわ! なんつーかずりーよ!」
「まて、さっぱりわかんねぇ」
自分の中の感情が先行して説明になっていないのはヤタマルも理解していた。
それでも止められない。
この胸の高鳴りは、一体。
「あいつ、超つえーよ! 俺を負かしやがった!」
「は? お前を? ……戦ったのか?!」
キジトがついに立ち上がってヤタマルの胸ぐらを掴む。
誤解を与えたであろう言い回しに気が付いて、ヤタマルは鼻息荒くキジトの思考を上書きした。
「集団戦だよ! あいつ司令塔の才能すげーんだって!」
「……司令塔? なんか聞いたことあるな、一般隊員ですげーのがいるって《継承者》の一部で噂になってたの……あれ、イスミか?!」
くわっと目を見開いたキジトに、ヤタマルは歓喜から思わず抱き着いた。すぐに突き放されたが。
「次の見回りのとき絶対に指名する! アレに指揮されたら堪んねーだろうな……」
うっとりと夢想するヤタマルに、キジトはぐわっとその身から威圧を出した。
制御装置はすでに外されている。
故にヤタマルはキジトのそれを受け流した。
キジトの感情の揺らぎすら理解できないヤタマルは、きょとんとキジトを見るのみだ。
キジトはぐっと眉間に皺を寄せていた。
「てめぇ……イスミは俺の方が先に指名すんだからな」
「ん? 次の見回り被んなかったらな!」
「クソが!」
見回りで一般隊員の指名が被ることは稀である。
万が一被った場合においては、一般隊員の意思が尊重されていた。
「そもそも俺たちは単独が多いし、そこは運だろ」
飄々とヤタマルはキジトに事実を述べた。
単独での見回りが殆どを占める二人は、イスミを指名できる機会が初めから少ない。
「でもまあ、イスミが指揮して、俺とお前がチーム組んだら、最強だろうな」
ヤタマルは愉快そうに笑顔を浮かべて、あり得ない組み合わせに心を躍らせた。
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