神々のストーリーテラー

みん

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恐惶の政治

(幕間)

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(幕間)


 イスミは日の陰る長い廊下を、目的の場所に向かって歩いていた。
 歩き慣れた道である。

 かつて何度となく通った無機質な回廊。
 ストーリーテラーに入って、イスミが最初に配属された部署が、この先にある。


 イスミは管理室の並ぶ扉の前を通り、迷うことなくその扉を叩いた。

「……入りなさい」

 中からの返事を待って扉を開ける。

 入室したイスミを迎えたのは、神経質に身なりを整えた、壮年の男性だった。

 C区域担当管理官、マル・セイマン。
 白髪混じりの黒髪をオールバックに撫でつけた男は、定位置に座して、手元の書類を見ていた。

「イスミ・アドレアルです。始末書を提出に来ました」

 こちらに目を向けることのない男に、入り口で要件を告げる。
 この部屋のルールだ。

 マルはゆっくりと顔を上げて、訝しげにイスミを見た。

「……何故君が?」

 もっともである。
 イスミは足を進めてマルの前に出ると、その手の中の書類を差し出した。

「……成り行きで」

 手に持っていた書類をテーブルに置いて、マルはその書類を受け取った。
 ざっと内容に目を通したマルは、小さくため息をついた。
 その中身は、先日のヤタマルとキジトに課せられた報告書だ。

「……わかっていると思うが」

 ぱし、と書類の端を指で弾いて、マルはイスミを下から舐め上げた。
 その目に光るのは、警告だ。

「……わかっています。本来なら《継承者》とは距離を置くべきです。失礼しました」

 イスミが頭を下げると、マルはその様子を見つめて、書類をテーブルに離した。

「わかっているならいい。下がりたまえ」

 これ以上の会話は不要だろう。


 イスミは手首に嵌められたブレスレットに一度手を当てて、再び頭を下げて退出した。

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