神々のストーリーテラー

厚顔無恥の末路

厚顔無恥の末路

　その男は、全てを持っていた。

　王たる器も、地位も。
　欲しいものはなんでも望めば手に入った。

　煌びやかな財宝も。
　古今東西の女も、男も。
　皆が羨やむような生活も。全て。

　王は神として崇められた。

　自国の民も、他国の王も。
　自分に傅き、首を垂れる。
　全ての忠誠をも手にした王の元には、この世の全てが集う。

　だから、更に、求めた。
　全てのものを、手中に収めることが、自分の権力の象徴のように思えたから。

　臣下から献上されたものを、何の躊躇いもなく受け取り。
　自分が持っていない、それだけの理由で、得ることを求めた。

　ある日、王は一人の子供に出会った。

　子供は言った。

「そんなに物にあふれても、王様は何にも持ってないね」

　王は子供に尋ねた。

「お前は私の持ち得ないものを持っているか？」

「もちろん」

　子供は答えた。

　王はその子供が持つという、自分にはないとおうものが、どうしても欲しかった。

　王は子供に自分の持てる全てを与えた。
　手に入れた財宝も、臣下も、地位さえも。
　それでも、子供が持つという、王にないものへ手に入らない。


　そして気が付いた時、王の手元には何も残っていなかった。

　目の前にいるのは、新しく王となった子供ただ一人。

　王は、立ち尽くして、そして。



　物語は、継承される。