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隻翼の月
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しおりを挟む「それはそうと」
ユイセルが次に口火を切ったのは、ミナリアが羞恥から復帰して間もないタイミングだった。
膝に頭を預けたまま伺うと、ユイセルは実に複雑な顔でミナリアを見下ろしていた。
「今回の武術大会だけど……創立十周年を記念して両国王が揃うらしいよ」
「……は?」
ミナリアは言葉を失って一瞬我を忘れた。
両国王が揃う?
真魔国王は当然のことカラザールである。
そして現人国王はムザルの息子であるシャザム。
ミナリアが学園にいると知ってムザルが出てこないわけがない。
つまり。
「リアを見に来るってことだよね?」
「職権濫用にも程があるだろうあの馬鹿共!!」
ミナリアは思わず頭を抱えた。
「……また面倒を増やして……」
「でもそれだけリアが大好きなんだよ」
「……それはそれだが」
複雑な感情を胸にミナリアは深いため息を吐いた。
カラザールは恐らく執務をシャトマーニに預けて単独で観戦に来るだろう。
単独での行動が許される程にカラザールは強い。
問題はムザルとシャザムだ。
新旧の人国王が揃って観戦などどれだけの兵を連れてくるつもりなのだろう。
会場の警備もしかり。
ふと、ミナリアは脳裏に嫌な光景を想像した。
ミナリアに向けられていた悪意。
このタイミングで開催される武術大会。
そして両国王の観戦。
杞憂であれば良いが。
しかしミナリアの予感は、悪い意味で的中することとなった。
武術大会当日。
雲一つない快晴の中、不穏な気配が訓練場を囲っていた。
「俺が……王になるんだ……」
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