隻翼の月に吠える。

みん

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気高き翼

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「ひあっ……?!」

 ミナリアは信じられない思いで自分の声を聞いた。
 明らかに艶の混じった嬌声。
 内側から直接与えられた刺激に反射で全身が脈打つ。
 下半身に重く響く熱。
 瞬く間に駆け上がったそれは、下腹部から背中を通り脳天まで届いた。

 ぶわり。
 背中に残った小さな右翼が、羽先まで膨らんで広がる。
 羽先はそっとユイセルの頬を撫でて、ぴん、と存在を主張した。

「こっちの羽、治ったんだね」

 ユイセルが落とした言葉が皮膚の上からミナリアの心に落ちる。
 背中から伸びる骨格を指先で辿っていたユイセルは、遂にはその羽に顔を埋めた。

「……きれい」

 思わず背後を振り返る。
 絡んだ視線の先。
 細められた眼差しの優しさに、言葉を失った。

「綺麗だよ、リア」

 羽先に口付けを落としたユイセルが、ミナリアに最大の賛辞を送る。

「……っ」

 息を呑むことしか出来ない。
 ミナリアがずっと欲しかった言葉。
 あの日失って、もう二度と貰えないと思っていた言葉だった。
 それを他でもないユイセルが、こんなにも簡単にミナリアに渡してくれる。

「……当たり前だっ」

 目尻から溢れる涙は、歓喜。

「母から貰った、翼だぞ……っ」

 自分の根源を肯定されて、ミナリアは心の中から微笑んだ。




「ん、んん……っ」
「リア、リア」

 次にミナリアを苛んだのは、精神的な事象よりも物理的な刺激だった。

 体内を拡げるように動くユイセルの指が、脳をゆっくりと溶かしていく。
 意図せず喉を震わせる声が、簡単に自分の理性を奪っていった。
 ぬくぬくと二本の指が突き入れられて、ミナリアの腸を内側から暴いていく。

 はじめての感覚に戸惑いながらも体は正直に反応を返した。
 後孔を解す指は、殊更丁寧にミナリアの弱いところを探っていく。
 ミナリアは吐息混じりの喘ぎを溢して、その刺激に耐えた。

「はーっ…….っあっ、はぁー……っん、」

 突き入れられた指を意図せずに締め付ける。
 洗浄丸はまだ溶け切らずにその形を残していた。
 ユイセルの指が出入りする度に塊が予期せぬ挙動で内壁を抉る。
 ぬめりを伴ってかき混ぜられ、ミナリアはびくりと全身を震わせた。


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