45 / 58
その鎧を外すのは
6
しおりを挟むカラザールの養子となって暫く。
ミナリアはシャトマーニを教育係に様々なことを学んだ。
言語、歴史。それは真国に留まらず人国にも及んだ。
しかし、強さを志すミナリアにどうしてと立ちはだかったのは、身体の欠陥だった。
失われた翼と、右脚。折れた翼。
それらはミナリアの体のバランスを崩し、どうしても戦闘の足を引っ張る。
何であんなやつが王の養子に。
足手まとい。
軽口は悪意となり常にミナリアの周りにあったが、一番堪えたのはカラザールまでをも含んだ陰口だった。
仮初の王は、人を見る目もない。
自分の存在が、恩人であるカラザールにまで及ぶことが、ミナリアの矜持を傷付けていた。
知ってか知らずか、カラザールもシャトマーニも何もミナリアには言わない。
ミナリアは焦っていた。
だからその日、ミナリアは単騎で魔物の討伐へ向かった。
結果として辛勝して帰城したミナリアは、シャトマーニにまず頬を殴られた。
「貴方は……っなんていう無茶を……っ」
抱きしめられた体が、軋んだ。
自分より少しだけ背の高いシャトマーニが、ミナリアの肩に額を付いて項垂れている。
無茶をした体に、その震えが伝わって、ミナリアは混乱して動くことが出来なかった。
「心配したんですよ……っ」
心臓が痛い。
母に抱きしめられた日のことを思い出して、ミナリアは目の前がゆっくりと歪むのを感じた。
頬を伝うこれは、涙か。
「ごめん、なさい」
ミナリアは誓ったのだ。
もう家族にこんな心配をさせないと。
強く、なるのだと。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説


ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる