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その鎧を外すのは
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しおりを挟む「俺は……」
ガタムは一度間を置くと、頬をかきながら歯切れ悪く言葉を紡いだ。
「お前が強いことは知ってるけどな、お前が怪我したとか聞いたら、調子悪いのかとか、何かあったんじゃねーかとか、まあ……心配、するわな」
「そうだね! ちょっとの怪我なんてミナリアにとってはどうでもいいかもしれないけど、仲間だしやっぱり心配するよね!」
二人の口から出た言葉に、僅かながらに瞠目する。
心配。
その二文字に懐かしさを覚える。
盛り上がる二人を横目に、ミナリアは真国に流れた時のことを思い出していた。
ミナリアがあの牢獄を命懸けで抜け出してから、どのくらいの日にちが経過したのか。
暗闇の森の中を彷徨い歩いて、日が登っては身を顰め、なくなった片足の痛みと戦いながらも、いつ辿り着くともわからぬ真国へと歩を進める。
一番辛かったのは飢えだった。
あの檻の中では必要のなかった食べるという行為を思い出すのにすら時間がかかる有様だ。
森の中の落ちた木の実や、緑の草を必死で食むことで飢えを凌ぐ。
そうして辿り着いた城壁の前。
ミナリアはその堅牢な壁を見つめて二日ほど余分に過ごした。
人国の都市であれば死。
見つかれば死。
ムザルに生かされたこの身を無駄に出来ないという一心で研ぎ澄ました感性。
あの緊張感は未だに忘れることはない。
二日目。
何度目かの真族の出入りを確認したミナリアは、ついにその門兵の前に姿を現した。
ぎょっとした兵が槍を構える。
折れた翼と、失った足。
辛うじて身に付けているだけの簡素な衣服と。
艶を失った髪。
張り詰めて鋭さを増した相貌。
ミナリアの姿はぼろぼろで、そこらの物乞いよりも酷かったことだろう。
《取次を、願う》
ミナリアが辛うじて意識を保っていたのはそこまでだった。
不審者と違われて処される考えは、残された気力の前に塵と消えていた。
そして、ミナリアが次に目を覚ましたのは、城壁の中。
ぐったりと身を沈めるミナリアを迎えたのは、宰相のシャトマーニだった。
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