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その鎧を外すのは
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しおりを挟む「ミナリア! 大丈夫?!」
ユイセルの元を立ち去って傷だらけのミナリアを迎えたのはイツァージュだった。
手や頬を触られて癒術を施される。
傷は瞬く間に治ったが、ミナリアの心の靄は晴れなかった。
「はあ……」
チームメイトに賛辞と労いの言葉をひとしきり受けたミナリアは、今はただぐったりと部屋の布団に伸びていた。
突然の魔物の襲撃に、学園側が対応に追われ、授業が全て休講となったためだ。
一人でいると余計な思考に惑わされて仕方がない。
ミナリアの脳内には、ぐるぐるとユイセルの顔がちらついていた。
鍵を持っていたくない、と言ったユイセル。
そして、自分に対して、何故一人になりたがるのかと問うたあの顔。
ミナリアは自分の行動を振り返っていた。
しかし、ユイセルの言動の意味が理解できずに混乱だけが募る。
「はあ」
何度目かのため息を吐いたとき、部屋の前に見知った気配が現れた。
起き上がって扉の前へ向かう。
「うおっ」
ドアを開けると、そこにいたのはガタムとルーインだった。
「傷は大丈夫なのかよ?」
「……問題ない」
問いかけられる声に躊躇いが混じる。
ルーインは顎に手を当てて何かを思案すると、するりとミナリアの頬に手を伸ばした。
「問題ないって顔じゃないね~? 怪我以外のところで問題あり?」
的を射た指摘に言葉も紡げない。
「魔物倒した後にユイセルくんと抱擁交わしてたって言う噂と関係ある?」
押し黙ったミナリアに掛けられた言葉にどう返していいのかわからず視線を逸らす。
ルーインはガタムの手を引くと、ミナリアを促して部屋の中に入った。
簡素な間取りである。
ミナリアはルーインと共にベッドに腰掛けて、ガタムは備え付けの椅子を引いてそこに座った。
「で? ユイセルくんと何があったわけ?」
「な……っ」
「ミナリアがそんなに悩むなんて、そっちの悩みでしょ~?」
ぐうの音も出ずにミナリアは唇を噛んだ。
ガタムは静観を決め込んだのか肘を付いたまま何も言わない。
「ん?」
促すようなルーインに、ミナリアは心の中の蟠りを吐き出した。
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