16 / 58
不和との邂逅
1
しおりを挟む共立人真塔学院に在籍する学院生は大きく分けて三つに分かれていた。
貴族に名を連ねる子女。
商工業を生業とする富豪の子女。
そして、その他平民である。
魔物退治を生業とする親を持つ子女、一般家庭の子女が代表として数えられるその他であるが、実態としてそれよりも多いのは、魔物災害で家族を無くした孤児であった。
魔物を含む災害で親を失った孤児は、王城の隣に建てられた孤児院でその身柄を国に預けている。
災害の後、追うように母を亡くしたユイセルも戸籍上は孤児として扱われ、その過程で国から任務を与えられたようだった。
一方、ミナリアは学院では一般家庭出身ということになっている。
人国にも真族にも存在する貴族という制度は、有事の際に国のために働くことを定められた特権階級である。
しかし、現在においての貴族の大半は、国という傘を着たものたちを示し、貴族と民の溝は深い。
国に縛られることのない商工人は中立を保っているが、貴族の平民蔑視と多種族蔑視は学院内でもなりを潜めることはなかった。
人真友好の任に就くミナリアは、ここに来て発覚した新たな問題に頭を抱えざるを得ない。
さらに言えば、貴族の傍系に辛うじて引っかかるルーインや、両国で名高い魔物ハンターを親に持つガタム、貴族御用達の高級商店の跡取りであるイツァージュはまだしも、学院においてミナリアは貴族たちから目の敵にされていた。
平民だから、ではない。
平民のくせに目立つから、である。
「いや~でも、ミナリアダントツだったね~」
「真族、貴族振り抜いてあの数はエグいよな」
「上級生よりも、だもんね……」
何が、と言うと、先日行われた魔物討伐実習における魔物討伐数である。
討伐自体はチームで行われ、成績もチームの討伐数で順位付けがされた。
これはチームの作戦によって、バランスよく全員で討伐数を稼ぐ場合と個人に偏って討伐数を稼ぐ場合で大きく別れる。
ミナリアのチームの作戦は前者で、前衛のミナリアとガタムが主に魔物を討伐し、ルーインが撃ち漏らしを駆逐、イツァージュは回復に勤める役割だった。
ミナリアを除くチームメンバーの成績は中の上。チーム戦における通常のミナリアの討伐数もさして変わらない。
が。
ミナリアの群を抜いて高い索敵能力を持ってすれば、学院生の討伐可能領域を軽く凌駕する。
ミナリアはあっちに魔物がいる、こっちに魔物がいる、と個人戦闘を繰り広げた。
結果、目立つつもりは毛頭なかったにも関わらず、今学期最初の討伐実習で悪目立ちする羽目になってしまったのだ。
「俺よりも討伐している人間がいると思ったんだ……」
後悔しても後の祭りである。
成績表が掲示された日の午後にはもう、ミナリアは貴族の洗礼を受けていた。
平民が、と面と向かって言われるなら受け流せる。
訓練中にいちゃもんを付けられるのもまだいい。
だが、ミナリアにも看過できないこともある。
要するに、しつこいのだ。
「ミナリア=リィーン!」
この男が。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる